出来損ないの誘拐

サッキー(メガネ)

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告発

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-木崎邸

一之瀬は木崎邸に来ていた。

あの身代金焼失以降、犯人から連絡はない。

それどころか、動画の配信が終了している。

しかし、犯人から連絡が来ないとも限らない。

一之瀬たち警察はいつも以上に気を張っていた。


その時、

プルルルル…。

木崎邸の電話が鳴った。

一之瀬たちはすぐに逆探知の準備に入った。

「……。」

一之瀬は受話器を取った。

「もしもし、木崎智哉です。」

「!!」

一之瀬は驚いた。

それはそうだ。

まさか誘拐された本人から連絡が来るとは思っていなかったのだから。

「刑事さん、この放送ってライブ中継されてるんですよね。」

一之瀬は確認した。

確かにライブ中継が再開されている。

「…ええ。」

「良かった。刑事さんに聞きたいんですけど、俺ののことってどのくらい調べてますか。」

「…学校で君が木崎家の次男だと知っている人間はいませんでした。知っていたのは友人の霧島幸一君、本田桜さん、そしてご近所に住んでいる巽敬助さんだけでした。」

「…そうですか。」

少しの沈黙のあと、一之瀬は続けた。

「あと、後輩の神崎さなえさんが心配していらっしゃいました。泣きながら『助けてあげてください』と言われました。」

「!!……そうですか。」

智哉は息をはいたあと、ゆっくりと口を開いた。

「俺の戸籍については調べてますか。」

「ええ、特に不審な点はありませんでしたが。」

「…その戸籍、間違ってますよ。」

「!!」

場は騒然とした。

「…どういうことでしょうか。」

「俺は木崎昭蔵と、彼が不倫していた女性との間に生まれた子供です。母の幸枝は本当の母親ではありません。」



一之瀬は驚愕した。

「僕の本当の母親は、水商売の仕事をしてました。その時に父に出会い、すぐに恋に落ちたんです。母は仕事を辞めて家で主婦としてやっていくつもりでした。」

「おい、止めろ!」

突然昭蔵が大声をあげた。

「今すぐに電話を切れ!中継も止めさせろ!」

捜査員数名で昭蔵を宥めた。

「…話を続けてもいいですか。」

「ええ、続けてください。」

「母は僕を身籠り、そして産みました。けど産んですぐに引き離されました。木崎昭蔵は母と付き合ってすぐに幸枝とも付き合い始めてたんです。なんとかなるさと軽い考えだったんでしょう。しかし、母が出産し「子供と一緒に暮らそう」と言い出した。さらに、母との関係が祖父にバレてしまった。そこで考えたんです。残酷な方法を。」

一瞬の間を開けて智哉は口を開いた。

「…水商売の女と会社の社長の娘。秤にかけるまでもなく、父は母を見限りました。さらに、体裁を保つために、子供を取り上げ、幸枝が生んだことにしたんです。戸籍も移してね。母には口止め料として1000万円を渡しました。しかし、母はそれを使わなかった。その後母は病気になり、静かに息を引き取ったそうです。」

その時、兄の誠治が慌てた様子で声を出した。

「ち、ちょっと待て!じゃあ、俺と智哉は…。」

「うん、本当の兄弟じゃない。」

「そんな…。」

誠治は愕然としていた。



「あなたはいつその事を知ったんですか?」

一之瀬は智哉に尋ねた。

「中学のときの健康診断で知ったんです。僕はずっとO型だって聞かされてました。けど結果はA型だった。小学生の頃は不思議に思ってたけど気にはしてなかった。その時中学校で血液型診断が流行ってたんですよ。診断の結果が違ってたんでずっと気になってたんです。それで知り合いの父親に頼んで民間の科捜研にDNA鑑定を頼んだんです。」

「あなたの本当の母親のことはどうやって知ったんですか?」

「今の母から聞いたんです。」

一之瀬は幸枝を見た。

幸枝は怯えたような表情をしている。

「母には黙っていてくれとお願いしました。父にバレたら家を追い出されかねなかったですし、せめて俺が家を出るときまではと。」

智哉はずっと胸に隠していたのだ。

家族を壊しかねない重大な秘密を。

「智哉!貴様どういうつもりだ!今まで貴様を養ってやったのは誰だと思ってるんだ!」

受話器を取り上げ昭蔵は怒鳴った。

「今まで育ててくれたことには感謝してます。ただそれは実の母のことを知らなかったからです。母のことを知った今は、あなたの今までの行動は僕を利用していたに過ぎない。それに、兄さんが会社の跡を継いだら僕を追い出すつもりだったんでしょう。なら今さら隠す必要はないでしょう。」

「…!」

「刑事さん。」

一之瀬は昭蔵から受話器を取った。

「なんでしょう。」

「僕の話は以上です。何か他に聞きたいことはありますか。」

「…いえ、特に。」

「それでは、僕はこれで。」

そう言って電話は切れた。

部屋は少しの不安と静寂に包まれていた。



-ライブ会場

俺は携帯を工藤に返した。

「言いたいことは終わったか。」

「はい。」

「けどまさか養子だったとはね。驚いたよ。」

鈴木は言った。

「…養子と言っていいのかどうかは微妙ですけどね。それよりもすいません。せっかくの計画を台無しにしてしまって。」

「…どういう意味だ。」

「あんな中継を見て、今まで会社に投資していた人たちや解雇された人たちが黙っているわけないですよね。下手したら訴える人だって出てきます。そうなったら警察の介入だって十分にあり得る。そうなれば今まであの人がやって来た悪事が白日のもとに晒され逮捕されます。つまり、あなたたちは手を出すことはできない。」

「!…。お前、最初からそれが目的であんな暴露を。」

鷹岡は智哉の胸ぐらをつかんだ。

「貴様、ふざけたマネしやがって!」

「…すいません。父を殺させるわけにはいかなかったんですよ。捨てられたとは言っても母が愛した人ですから。母を捨てたことを死ぬまで後悔してほしかった。それが僕なりの復讐です。」

「止めろ鷹岡。」

工藤は鷹岡を制した。

「工藤…。」

「鈴木、彼の携帯の電源を入れてくれ。」

「!…。で、でもそんなことしたら警察が来るんじゃ。」

「元々計画が成功したら自首する手はずだったんだ。計画が実行できないなら続ける意味はない。彼には怪我をさせないように言われてるしな。「計画を実行するのは私がやる。君たちは一切手を汚してはいけない。」それが先生が一番願っていることだ。」

…先生?誰のことだ。そいつが今回の黒幕なのか。

「でも本当に良いの?」

相田は工藤に尋ねた。

「ああ、これ以上長引かせても意味ないからな。」

工藤は智哉を見た。

「正直驚いたよ。お前は誘拐したときからずっと冷静だった。普通は怯えたりするもんだ。けどお前は終始強気だった。いや違うな。自分は死んでも構わないと思っていたと言った方が正しいか。それがあんな暴挙に出るとはな。」

工藤は微笑んだ。

智哉は気まずそうに目をそらした。

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