『心霊カンパニア』 ~神狢祇~

シルヴァ・レイシオン

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・霊嗅感能力者 『クレア・サリエンス』

シャーマン

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「初めて食べた日本のみかんやリンゴ。ショコラやプリン、モンブラン。刺身、ワサビ、醤油の風味。バジルやアンチョビ、トマトやチーズ。初めてで食べるものは全てがBuonoボーノ!」

 食べ物かい!
 と、ツッコミそうになったがそこは我慢した。
 SNSで見たんだけど色覚障害がある子供が特殊なメガネを掛けられて、みんなと同じ世界を垣間見た瞬間、感動で涙している動画を見てボクはもらい泣きをしたことがあるのを思い出した。きっとそれと同じような感動だったんだろうと瞬時に自分を戒めた。

<だからここで料理とかしてるんだね。美味しかったよ本当に!またあのオムライス食べたい!毎朝でもいいよ♪>

「ははっ、ありがとう!」

 今のシャルルの明るさや屈託のない笑顔、鋭気からは想像ができない程の過去の話だなと、まるで別の人の話を今シャルルから聞いているような感じがする。

「欧米などの文化や習慣がどうこうって話ではないし、どっちがどうなんて僕にも分からない。エクソシストの世界でも『解放の祈り』という浄霊に近い儀式を行うこともある。どうしても『天使』『悪魔』や『神』という構図での『敵対』、『光と影』、云わば‟”という思考は、はっきりとした立場や明確な態度を示すことが必要になってしまい、見極めを誤ると『』ことが起きてしまうんだって」

 ちょっと、またボクには分からない世界な話のような気がしてきた・・・・・・

「例えば、実際に悪魔祓いの現場では『憑依した‟人物自身”が司祭や神父の言葉により』ことがあるらしい・・・一種の洗脳や、あ、日本の言葉で言うと『空気を読む』っていうんだっけ?それが拗れて本当の悪魔へと変貌してしまう」

 あ、KYね。少しだけなんとなく分かるかな。

「ここからは僕の考えなんだけど、そういった洗脳や勘違いってのは何もんじゃないかな」

 冷や汗がじんわりと全身を濡らした気がした。

「千鶴ちゃんは聞いたことがあるかどうか分からないけど、まぁ映画でもよく聞くことがあると思う。悪魔祓いエクソシストの殆どは悪魔を『』するよね。あ、当然、悪魔っていう程なんだから否定しなきゃいけない程に悪い存在なんだけどね。霊という存在や感覚ってのは日本やインディアンほど今の西洋文化圏内では馴染が浅いというか、昔から精霊や霊体の信仰や文化とは『』扱いだったんだ。『』ってのは聞いたことがあるだろう?徹底的な魔女狩りや異端審問によりそういった文化やシャーマンを根絶やしにしてきたってのもあり、アフリカのブードゥーや日本の仏教、アメリカの先住民たちのように精霊やスピリチュアルと言った系統の捉え方が難しかったのもあるんじゃないかな」

 なんとなく分かるような気がするけど、そうなのかと頷くことしかできなかった。

「まぁ、あくまでも‟”って範囲だけど、悪魔っていう大袈裟な存在じゃなかったとしてさ、ただの・・・っていう言い方が適切かどうかすら分からないけど『』だったとか、ただの霊や寂しかっただけの霊とかが『全否定』されたり『ぁ!』と言われ続けられたとしたら、しかもそれなりの『力』をもった人にね、言われたら『あぁ、俺ってそうなのかなぁ』ってならない?っつー話だね」

 あながち、そんなことは無い・・・とは言い切れないかもしれない。冤罪で捕まった人たちがつい、やっても無い犯罪行為を長時間も「やっただろ」「お前が犯人だ」と言われ続けられたとしたら、そうなのかなぁ・・・と思ってしまうような話が実際にあるのと同じことが、意識ある精神体であるならばボクらとそう変わりがない・・・のかもしれない。

「まぁ、真意の方はわからないけどね。少なくとも、そしてあくまでもそうだったってことさ。僕はこの屋敷を出たとたんに、何体もの祖先が処刑し、そして半端な除霊師が怒らせて『悪魔』と化した霊に憑りつかれて、速攻で僕自身に『』を図りにかかってくるんだ。『お前もこっちに来い』・・・ってな感じでね」

 そう言って首筋と手首のキズをボクに見せてくれた。傷ましくも痛々しいものだった。

「まぁ、そんなこんなで僕は8才のときに最終的には拘束具に包まれ血の臭いに溺れながらここへやってきた・・・って話さ」

 目の奥には悲しみの海がマリアナ海溝のように深く、藍銅鉱アズライトブルー色のように視え、しかしシャルルの表情は裏腹にまたボクにことを安心させるかのようにとかわいい笑顔で微笑みかけてくれる。




 シャルルの壮絶な過去の話を聞き終わる頃には、ボクはもう完全に自意識を取り戻せていた。これも後で聞いた話なんだけど、シャルルの『霊嗅』は生者の悪い所も嗅ぎ分けることができるらしい。
 長年、飼っていた犬が主人の病気、がんを感知し早期発見できたという『探知犬』のドキュメンタリー番組を見たことがある。きっとそれに近いことなんだと思う。今までいつもシャルルがキッチンに立ってきたのも、みんなの体調と‟調”を嗅ぎ分けて必要な栄養素や対策、魂の調整師、薬剤師のような役割も担っているんだと。きっとさっきの料理にも、ボクに必要な要素を料理に込めて作ってくれたんだと思う。


 ボクは自分だけがなぜこんな目にあうのだろうか。自分だけが世界中の不幸を背負って生まれてきた『忌み嫌われた子』だったんだと、ずっとそう思ってきた。しかし、シャルルの話を聞き、ボクだけでなくここにいるみんなが同じ境遇の仲間なんだということを強く想い、仲間意識だけではなく『同志』のような感覚にまで感じていた。全然違う経緯だけど、同じ痛みを共有する『兄弟』のような気もして、精神、いや、『魂』って言った方がいいんだろうな。魂の治療、まで受けたんだと思う。

 古杣さんはそういったことを解ったうえで、ボクとシャルルをこうやって示し合わせたんじゃないかと、今ではそう思っている。


 そして最後に、シャルはこう綴った。
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