実は本当にあった‟かも”しれない、残酷で非情な物語 ~歴史・童話編~

シルヴァ・レイシオン

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ひいな遊び

二揃い 「空間」

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 最下段に飾る「仕丁」は表情が豊かで
「怒り上戸」、「笑い上戸」、「泣き上戸」の三体は揃って「三人上戸」とも言われていて、御所の雑用を司る者たち。

 私が見て、感じたお内裏様の顔はその内の怒り上戸のような表情でもなく、悲しみの奥に湧き上がる怒り…のような、何と言っていいのか分からないのですが、そんな気がしたのです。
 敢えて例えるのなら、能面の、鬼になる前の段階のような感じですかね。

 背筋に悪寒を感じながらもその時は当然、気のせいだと思い気にもせずに作業を進めていきました。しかしなんとなく、私はここ実家へ片づけに来たのにも関わらず、雛人形は散らかしたままで……



 私には娘が一人います。


 雛人形・ひな祭りとは女の子の健やかな成長と幸せな結婚を願う意味が込められている…のは有名ですが、元々は無病息災、厄除けとして人形が我が子の身代わりとなる厄災の祈願、中国からは「上巳の節句」が「桃の節句」として現代にまで伝わっている。
 時代や地域、場所によるのかもしれないけど雛人形は娘へと引き継がれていく花嫁道具として、又は逆に‟引き継いではいけない”、とも言われている地域もあります。詳細は様々なようですが、少なくとも「貰ったり拾ってはいけない」は共通なようです。その理由も、人形の意味とは「厄災」な訳なので前所有者の厄が込められているために、持ち帰るとその人の厄を背負うことになるという話だ。

 そこで気になるのが…何故、私の両親はこの雛人形を‟私に引き継がせる”ことも無く、かといって『供養』、処分をしなかったのか。

 毎年、三月三日にはこの雛人形をずっと眺めては私もこの一員になったつもりで想いに耽ったり、‟お飯事ままごと”をしたものです。
 そんなメルヘンチックな空想も、全てを用意されたレールの上を走ることでしか遊べない現代の遊び方では足らないかもとも思い、我が子への教育の一つとしてこの雛人形もいいかもしれない。そう考えて、無くなったお雛様のかしらを探しつつも掃除をしていきました。娘が気に入ってくれれば引き継がせるか、状態も良く高価そうな人形群ではあるので、出すところに出せば良い値段になるかもしれない。
 そんな浅はかな気持ちだったのです。


その夜。

「ももちゃ~ん、元気ぃ??」

《ママー!うん、げんきー》

 お義母さんのスマホから、ビデオ通話をしてみました。子供がというよりも私自身が娘と離れて夜を過ごすことが初めてだったのもあり、寂しかったのです。

 因みに、旦那は東京に出張中。

「お義母さんすいません、ご面倒をおかけしますぅ」

「いやいや、しっかり整理したってぇ、こっちは大丈夫やしぃ」

 何か料理をしている最中の様で、鍋に火を掛けているのかお義母さんはそれだけ言ってそそくさと台所へと向かった。

「…え?!ももちゃん、それどうやるの?かわいい~」
 娘の顔に猫の鼻や耳が突然着いていて、より愛らしくなった。

「えっとねぇ~、左下のん。他にも色々あるよ~」

 娘がそう言うと、どんどんエフェクトがウサギ、犬、お姫様のようなティアラが頭に着いたりと、かわいい模様が切り替わって行った。

「えー、ママもしよ~」

 ハゲヅラや魔女、ゾンビメイク等とコメディタッチなエフェクトも多数あり、私は猫が大好きなので猫のエフェクトに最後は落ち着く。

 そんな、一時の朗らかな時間が流れた。

「…あれ??」
 私が違和感と異変に気が付いたその少し後に、娘も同じリアクションを取り出した。

 私の背後、隣への部屋の襖が開いて閉め忘れていた。その空間に、自分の顔とは別に猫のエフェクトが付いたのです。

「ママのうしろ~、透明のネコちゃんがいる~」

「ほんとだね~、変だね~」

 娘の前で、と、スマホ画面で言うのも変だけどここで怖がったり気持ち悪がらずに、何とか平静を装いながら笑顔でその場を制した。

「…できたよ~」
 娘の後ろの方からお義母さんの声が遠く、小さく聞こえる。

「は~い」

「…じゃ、また明日ね、ももちゃん」

「うん、ばいば~い」

 「バイバイ」

 お互いに顔の横で手を見えるように振って、画面を閉じる。

 私はトイレへと行きたくなったので立ち上がり、空間に猫のエフェクトが付いた方を見る。
 そこの部屋の奥、そして足元には私が片付けずに置いたままの雛人形が、無造作に並んでいた……

 とりあえず私は悪寒を感じながら、空間を遮るかのように直ぐ襖を閉じました。
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