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~海異~ 【全十一話】
第三話 絶景
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翌朝。
時刻は朝五時頃。晴斗はまだ寝ています。
スマホは圏外で、今どきにこの旅館にはWiFiも無い。その辺がここの客足を遠ざける要因なんだろうなと思いながら、わが子を起こさないように、そおっ・・・と、朝のコーヒーを持ってお気に入りの小テラスへと出ていきます。
ちょうど朝日が水平線上にあり、海面の反射があなたの瞼をさらに追い打ち射抜いてきます。感動を覚え、心の高揚と朝の日差しの両方で一気に目が覚めました。
《なんてキレイな景色なんだろう・・・・・・》
昨年も見ているはずなのに、まるで初めて見るような感動を受け、あなたはもう少しこの雰囲気を味わいたくなりもっと向こう側へ、眼下に見える崖の方から海を眺めたくなりました。
晴斗を起こさないように、自分は猫だと頭で言い聞かせながら、浴衣姿のまま部屋の外へと向かいます。心とは裏腹に、足取りと表情は軽快に。
やはり古い建物だと言わんばかりに廊下の床は
ギシッ・・・メリ・・・ギシ・・・・・・
と、足音が古風で不気味な雰囲気を更に演出しているかのように軋み鳴る。遠くであろう厨房で朝食の準備でもしているような微かな気配以外は静かなもので、床の軋み音が尚更際立ちます。
外に出て見ると、空は絵に描いたようないい天気です。日差しが強いですが、潮風が暑さを相殺してくれていて気持ちいいぐらい。蝉もまだ寝ているのでしょうか。風が颯爽と通り過ぎていく音と少し遠くの潮声だけが聞こえてきました。
旅館の入口から少し進み、雑草が生い茂る向こう側には細い獣道が出来ていました。そこから崖の方へと行けるようになっているみたいです。
・・・すると、フェンスとはまた大袈裟な表現だと思えるような、角材が地面に等間隔で突き刺さり、細い麻ロープで結い渡しているだけの、ほんの気持ち程度の柵が見えてきました。
《これは本当に危ないなぁ・・・・・・》
あなたは心底、危険に感じました。絶対に晴斗を、特に小さな子供なんかはここには連れて着たくはありません。
そう誓いながらも、少し見上げるとそこから見える海はまた最高でした。俯瞰で見ると、きっとあなたの表情は少し微笑みを浮かべながら、目前には視界一杯の水と太陽の宝石を我が子が船上で見ていたように、輝いた目をしながら見ている自分がいることでしょう。
あなたの中の時間が数秒間と止まっていたかのような、視覚だけで海に呑まれ、たった今、息継ぎをしに海面へと浮上し、そして同時にフッと意識を取り戻したかのように我に返りました。
《晴斗が起きていたらいけない、戻らないと》
あなたは旅館へと帰路につきます。
その道中、茂みのすぐ手前に一足だけの汚いスポーツシューズが落ちていました。その瞬間
《え?》
と、胸騒ぎを覚えましたが、
《まさかね・・・・・・》
すぐに縁起でもないことを考えるのを止めました。あなたの胸は先ほどの景色に見惚れ、心躍っている最中で忙しいのですから。
時刻は朝五時頃。晴斗はまだ寝ています。
スマホは圏外で、今どきにこの旅館にはWiFiも無い。その辺がここの客足を遠ざける要因なんだろうなと思いながら、わが子を起こさないように、そおっ・・・と、朝のコーヒーを持ってお気に入りの小テラスへと出ていきます。
ちょうど朝日が水平線上にあり、海面の反射があなたの瞼をさらに追い打ち射抜いてきます。感動を覚え、心の高揚と朝の日差しの両方で一気に目が覚めました。
《なんてキレイな景色なんだろう・・・・・・》
昨年も見ているはずなのに、まるで初めて見るような感動を受け、あなたはもう少しこの雰囲気を味わいたくなりもっと向こう側へ、眼下に見える崖の方から海を眺めたくなりました。
晴斗を起こさないように、自分は猫だと頭で言い聞かせながら、浴衣姿のまま部屋の外へと向かいます。心とは裏腹に、足取りと表情は軽快に。
やはり古い建物だと言わんばかりに廊下の床は
ギシッ・・・メリ・・・ギシ・・・・・・
と、足音が古風で不気味な雰囲気を更に演出しているかのように軋み鳴る。遠くであろう厨房で朝食の準備でもしているような微かな気配以外は静かなもので、床の軋み音が尚更際立ちます。
外に出て見ると、空は絵に描いたようないい天気です。日差しが強いですが、潮風が暑さを相殺してくれていて気持ちいいぐらい。蝉もまだ寝ているのでしょうか。風が颯爽と通り過ぎていく音と少し遠くの潮声だけが聞こえてきました。
旅館の入口から少し進み、雑草が生い茂る向こう側には細い獣道が出来ていました。そこから崖の方へと行けるようになっているみたいです。
・・・すると、フェンスとはまた大袈裟な表現だと思えるような、角材が地面に等間隔で突き刺さり、細い麻ロープで結い渡しているだけの、ほんの気持ち程度の柵が見えてきました。
《これは本当に危ないなぁ・・・・・・》
あなたは心底、危険に感じました。絶対に晴斗を、特に小さな子供なんかはここには連れて着たくはありません。
そう誓いながらも、少し見上げるとそこから見える海はまた最高でした。俯瞰で見ると、きっとあなたの表情は少し微笑みを浮かべながら、目前には視界一杯の水と太陽の宝石を我が子が船上で見ていたように、輝いた目をしながら見ている自分がいることでしょう。
あなたの中の時間が数秒間と止まっていたかのような、視覚だけで海に呑まれ、たった今、息継ぎをしに海面へと浮上し、そして同時にフッと意識を取り戻したかのように我に返りました。
《晴斗が起きていたらいけない、戻らないと》
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