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『Colonia Biographies』 Phase Ⅰ
Colony Ⅵ
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ライトは恒例である食料の配給を受け取りにやってきた。
前列は既に約30人ほどが並んでいて、だいぶ朝も早く来た方なのにとライトは少し肩を落とす。
行列の先はこの第6コロニー、村の最北端に聳そびえている、まるでこの壮大なColonia全体を支える背骨のように建ち、上階の支柱としての役割とその階層、他の各コロニーへの通過点としても重要なものである。
ライトはその塔を見上げながら、じりじりと進む行列をひたすら地道に進んでいた。
このコロニアの世界では、この塔(Central Staircase Tower)通称『CSタワー』と呼ばれる塔を物理的な意味だけでなく精神的にも実質的にも中心として動いている。殆どの人たちがこのCSタワーを崇拝する『セントラル教』に殉じていて、ライトも一応にそう振舞ってはいた。
「よう、ライト。あれ?ウェルバーはどうしたんだ?」
配給待ちの行列、最後尾を見張っているオーヴィルがライトに声をかけてきた。
「ウェルバー兄さんは多分、またあの人の所へ・・・『第3コロニー』に行ったと思うよ」
「へぇ、そりゃまたお盛んで羨ましいねぇ。大分と気に入られたんだなぁ。ウェルバーに言っといてくれ。親友が嫉妬してるってな」
「ああ」
お互いに手の平を見せ合い、オーヴィルはまたライトの背後へとどんどん並んでいく「表層階の民」達の配給列の更に最後尾へと向かう。が、すぐさま思い立ったかのように振りかえり
「あ、そうそう。じゃあ配給の担当者がいつもと違っていたら俺んとこに来いよ。最近、また配給を余分に貰おうとする輩が多いからさ。お前も一人で来たなら一人分しか貰えないかもしれん。その時は俺がおまえらの証人になってやるからな」
「サンキュー。いつも、ありがとう」
今度はお互いにハンズアップのサインを交わし、逞しく頼りになる男は警棒を片手に去っていった。
ライトはオーヴィルや兄のウェルバーに比べると小柄で、いつも何かと助けられている。その分、悪く言えば面倒くさい雑用や小間使いはライトの仕事でもあった。手先が器用で様々な物作りや修理、料理や裁縫なんかはそこらの雑な女子よりも上手く、日常的にはいつも頼られていて三人は持ちつ持たれつ仲が良かった。
オーヴィルは主に警備隊員。ライトは修理屋と土や木などで作った食器や小物を作ったりし、兄のウェルバーはコロニア周辺に生い茂っている森へと木材を伐採しては加工する、木こりと大工の両方を生業としている。
仕事といってもここでは毎日二回の配給があり、食事に困ることはない。
しかし何かをしていないと悪魔に憑りつかれて『廃人』となり、もはや人ではなくなってしまうために各々が工夫し何かと理由を作っては作業をする。それが現代の生き方の一つとして教会でも教えられる。
教会では『生気塾(vitality cram school)』という教室があり、ほとんどの子供はそこで色々とここの基本を学ぶ。
ウェルバーとオーヴィルはそこで同じクラスとして出会い、幼馴染としてもう十年以上の付き合いで正真正銘の親友同士。ライトはその三歳年下で、小さい時からずっと二人の後を子犬のように付いて行っては遊び相手になってくれていた。ライトが他のコロニーの子などにイジメられてはどちらかが助けてくれて、ライトにとってはオーヴィルも兄のように慕い憧れの男でもあった。
最近、実兄のウェルバーは表層階、第3コロニーの‟女帝”に気に入られ作業場である森と、巷では‟Amazonis”と揶揄されている女だけが住む第3コロニーの行き来しかしなくなっており、ライトは少し寂しい思いをしていた。
オーヴィルにその不満話をすると当たり前にようにバカにする。
「もうお前も十八才でいい大人なんだから、そろそと恋人でも作れよ」
オーヴィルに何人か紹介をしてもらいデートもするのだが、いまいち発展しないのでライト自身はもう恋愛は諦めかけていた。自分にはそういった色恋沙汰は向いていない。そう思いつつも、ライトはそれとは別にすごく恋をし興味があるものがあった。
今日も遥か彼方上空を優雅に飛んでくる大きな鳥。
一日に二回、朝、夕、とこのコロニアの最上階、誰も踏み入れたことがないと言われている『三階フロア』に飛んでやってくる、大きな大きな「鳥」。
親代わりである二階の上層階から落りてきたという一人の医者『チェバラ』氏が言うには、二階フロアではその鳥を崇拝する『The Big H Gate』という宗派を崇拝しているそうで、ライトも内心で言えばそちら側の人間だと自覚はしているが、誰にも公言はしないし出来なかった。
現状、言えない理由とはその医師であり親変わりである『チェバラ』氏の、現在の行方である。
前列は既に約30人ほどが並んでいて、だいぶ朝も早く来た方なのにとライトは少し肩を落とす。
行列の先はこの第6コロニー、村の最北端に聳そびえている、まるでこの壮大なColonia全体を支える背骨のように建ち、上階の支柱としての役割とその階層、他の各コロニーへの通過点としても重要なものである。
ライトはその塔を見上げながら、じりじりと進む行列をひたすら地道に進んでいた。
このコロニアの世界では、この塔(Central Staircase Tower)通称『CSタワー』と呼ばれる塔を物理的な意味だけでなく精神的にも実質的にも中心として動いている。殆どの人たちがこのCSタワーを崇拝する『セントラル教』に殉じていて、ライトも一応にそう振舞ってはいた。
「よう、ライト。あれ?ウェルバーはどうしたんだ?」
配給待ちの行列、最後尾を見張っているオーヴィルがライトに声をかけてきた。
「ウェルバー兄さんは多分、またあの人の所へ・・・『第3コロニー』に行ったと思うよ」
「へぇ、そりゃまたお盛んで羨ましいねぇ。大分と気に入られたんだなぁ。ウェルバーに言っといてくれ。親友が嫉妬してるってな」
「ああ」
お互いに手の平を見せ合い、オーヴィルはまたライトの背後へとどんどん並んでいく「表層階の民」達の配給列の更に最後尾へと向かう。が、すぐさま思い立ったかのように振りかえり
「あ、そうそう。じゃあ配給の担当者がいつもと違っていたら俺んとこに来いよ。最近、また配給を余分に貰おうとする輩が多いからさ。お前も一人で来たなら一人分しか貰えないかもしれん。その時は俺がおまえらの証人になってやるからな」
「サンキュー。いつも、ありがとう」
今度はお互いにハンズアップのサインを交わし、逞しく頼りになる男は警棒を片手に去っていった。
ライトはオーヴィルや兄のウェルバーに比べると小柄で、いつも何かと助けられている。その分、悪く言えば面倒くさい雑用や小間使いはライトの仕事でもあった。手先が器用で様々な物作りや修理、料理や裁縫なんかはそこらの雑な女子よりも上手く、日常的にはいつも頼られていて三人は持ちつ持たれつ仲が良かった。
オーヴィルは主に警備隊員。ライトは修理屋と土や木などで作った食器や小物を作ったりし、兄のウェルバーはコロニア周辺に生い茂っている森へと木材を伐採しては加工する、木こりと大工の両方を生業としている。
仕事といってもここでは毎日二回の配給があり、食事に困ることはない。
しかし何かをしていないと悪魔に憑りつかれて『廃人』となり、もはや人ではなくなってしまうために各々が工夫し何かと理由を作っては作業をする。それが現代の生き方の一つとして教会でも教えられる。
教会では『生気塾(vitality cram school)』という教室があり、ほとんどの子供はそこで色々とここの基本を学ぶ。
ウェルバーとオーヴィルはそこで同じクラスとして出会い、幼馴染としてもう十年以上の付き合いで正真正銘の親友同士。ライトはその三歳年下で、小さい時からずっと二人の後を子犬のように付いて行っては遊び相手になってくれていた。ライトが他のコロニーの子などにイジメられてはどちらかが助けてくれて、ライトにとってはオーヴィルも兄のように慕い憧れの男でもあった。
最近、実兄のウェルバーは表層階、第3コロニーの‟女帝”に気に入られ作業場である森と、巷では‟Amazonis”と揶揄されている女だけが住む第3コロニーの行き来しかしなくなっており、ライトは少し寂しい思いをしていた。
オーヴィルにその不満話をすると当たり前にようにバカにする。
「もうお前も十八才でいい大人なんだから、そろそと恋人でも作れよ」
オーヴィルに何人か紹介をしてもらいデートもするのだが、いまいち発展しないのでライト自身はもう恋愛は諦めかけていた。自分にはそういった色恋沙汰は向いていない。そう思いつつも、ライトはそれとは別にすごく恋をし興味があるものがあった。
今日も遥か彼方上空を優雅に飛んでくる大きな鳥。
一日に二回、朝、夕、とこのコロニアの最上階、誰も踏み入れたことがないと言われている『三階フロア』に飛んでやってくる、大きな大きな「鳥」。
親代わりである二階の上層階から落りてきたという一人の医者『チェバラ』氏が言うには、二階フロアではその鳥を崇拝する『The Big H Gate』という宗派を崇拝しているそうで、ライトも内心で言えばそちら側の人間だと自覚はしているが、誰にも公言はしないし出来なかった。
現状、言えない理由とはその医師であり親変わりである『チェバラ』氏の、現在の行方である。
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