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『Colonia Biographies』 Phase Ⅰ
Folklore
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コロニアの歴史としては当初『Fátima Gate正教』の教えが今ではほぼ「伝記」となり、聖書にすら乗らなくなってから現在では『The Big H Gate』と変わり、上層界ですら元のファティマは更に一部の人間しか伝えられなくなった。その選ばれた者も守秘義務が課され、外部の者へ情報が漏れた場合、メンバーは全員、自害をすることになっている。
ライトは、チェバラ氏の行方が不明になる直前にチェバラからこの『ファティマ』について聞いていた。
「ライトよ。お前が『The Big H Gate』に興味を持ち、空への憧れを抱いていることはもう止めはしない。しかし、必ずこのことは誰にも、お前の兄ウェルバーにすら言ってはならない。必ずここでは『Center』として振る舞い、セントラル教会にも通いなさい。そうすれば、ある秘密を教えてあげよう」
「分かりました。先生が僕のゲート教入信を認めてもらえるのなら、僕の口は石のように固く閉ざします」
「もしお前が上層階へと行き、そこに住めるようになった時があるならば、必ず入信させよう。そして、私が成し遂げられなかった世界を見てきてくれ」
「先生は、その世界を見ることを成されないのですか?是非、ご一緒にその夢を叶えましょう!」
「・・・恐らく、それは叶わぬ」
「何故です?」
「・・・よいか、ライトよ。この下層階はCSタワーを中心に全てが成り立っている。各コロニーは物資や食料などの全てがあのタワーから配給され、命を繋いでいるからね。それがセンター教の基本でありCSタワーを大事にすることを目的としている。昔、一部の人たちがタワーを破壊しようと目論む者たちが現れ、配給が止まり多くの餓死者を出したからだ」
「はい。そのように教会でも教えられています」
「そして、ゲート教とは上層階の更に上、最上階に設置されているGateを崇めること、そしてそこに降り立つ『霊鳥・ガルーダ』を神としている。ゲート教にとってCSタワーは神への‟通過点”、その道であり神そのものではない。そのことを表層階の民のセントラル教徒はあまり良くは思っていないのだ。だからここではセンターとして振舞う必要がある」
「はい。それも重々承知しております」
「では・・・表層階では各コロニーへの移動は比較的に安易だが、上へは行けなくなっているのは何故かな?」
「フロア抗争が勃発し、上層民と表層民の各コロニー代表が結託し制御と統制を行うことになったからです」
「そうだ。みなが記憶にあるフロア抗争。それは実は一回目ではない」
「え?!過去にも争いがあったのですか?!」
「ああ。記述では3回目。『第三次フロア戦争』だった」
「そうだったのですか・・・・・・」
「上層階では二度とそのような争いが起きぬよう、下層との交流を必要最低限とし、配給の分配も徹底的に行いようになり、今がある」
「僕たちの聞いている話、つまり、その『第三次フロア戦争』の原因として第1と第8の代表が上層階の代表と密約を交わしたとありますが、それは事実なのですか?」
「まぁ、概ねはそうだが・・・その意図は別にありそうだな」
「と、言いますと?」
「第一次フロア戦争の原因は上層階でも定かではない。もはや触れてはいけない禁句となっている。第二次フロア戦争の原因は・・・『上層界の怠慢』だ」
「怠慢・・・・・・」
「下層への配給を行う者がいなくなったのだ。そうして下層では暴動が起き、当時の上層界の民は・・・粛清された」
「粛清?!」
「ああ。現在の上層階の民とは、元々は表層階の人々だったのだ」
「そ・・・そんなことが・・・誰がどのようにしてそれを選んだのでしょう」
「・・・記述、伝記では『選ばれし者』と書かれてはいるが、私はそうは思ってはいない。‟偶然にその時に上っただけの者”たちだろう」
「たまたま・・・奮起した人たちってだけですか」
「恐らくな。私はその後、上層階で生まれ育った。つまり私も元々はここの民だったんだよ。そしてファティマ伝記を読み聞いたことを搔い摘んだ。この地に降りて来てからも医者として、多くの高齢者や有識者の昔話を聞いた。各家庭に密かに囁かれ伝承されている話を聞いて集めてな。具体的な記述や証拠は何も無い。しかし、祖母やそのまた祖父などに当時を見てきた者たちの、伝承のように聞いてきたその『噂話』を集めて共通点を抜粋すると、そういうことになってゆくのだ」
「で、では他には・・・その、神とはなんです?!あの、大きな鳥の正体は?!」
「ファティマ伝記にはこう記されている」
【天から舞い降りし光り輝く、羽の生えた天使が産み落とし者】
【始まりのアダムとイヴはコロニアを統べる祖】
【神は我々を見守って下さる 天使の使者はその確固たる証明である】
【雷鳴と暴風に乗って天使は訪れ、下界の草木が枯れる頃に贄を求む】
【贄の選定は選ばれし者が厳選せすべし】
・・・・・・
「・・・では、あの鳥は神ではなく、使者であると?!」
「ああ。そうみたいだ。ファティマ・ゲート正教での神とは、またその先に存在している者だった。しかし、その教えが今では変わり『The Big H Gate』となっている。何故そうなったのか。それも私が解明したいことの一つでもあるのだ」
ライトは、チェバラ氏の行方が不明になる直前にチェバラからこの『ファティマ』について聞いていた。
「ライトよ。お前が『The Big H Gate』に興味を持ち、空への憧れを抱いていることはもう止めはしない。しかし、必ずこのことは誰にも、お前の兄ウェルバーにすら言ってはならない。必ずここでは『Center』として振る舞い、セントラル教会にも通いなさい。そうすれば、ある秘密を教えてあげよう」
「分かりました。先生が僕のゲート教入信を認めてもらえるのなら、僕の口は石のように固く閉ざします」
「もしお前が上層階へと行き、そこに住めるようになった時があるならば、必ず入信させよう。そして、私が成し遂げられなかった世界を見てきてくれ」
「先生は、その世界を見ることを成されないのですか?是非、ご一緒にその夢を叶えましょう!」
「・・・恐らく、それは叶わぬ」
「何故です?」
「・・・よいか、ライトよ。この下層階はCSタワーを中心に全てが成り立っている。各コロニーは物資や食料などの全てがあのタワーから配給され、命を繋いでいるからね。それがセンター教の基本でありCSタワーを大事にすることを目的としている。昔、一部の人たちがタワーを破壊しようと目論む者たちが現れ、配給が止まり多くの餓死者を出したからだ」
「はい。そのように教会でも教えられています」
「そして、ゲート教とは上層階の更に上、最上階に設置されているGateを崇めること、そしてそこに降り立つ『霊鳥・ガルーダ』を神としている。ゲート教にとってCSタワーは神への‟通過点”、その道であり神そのものではない。そのことを表層階の民のセントラル教徒はあまり良くは思っていないのだ。だからここではセンターとして振舞う必要がある」
「はい。それも重々承知しております」
「では・・・表層階では各コロニーへの移動は比較的に安易だが、上へは行けなくなっているのは何故かな?」
「フロア抗争が勃発し、上層民と表層民の各コロニー代表が結託し制御と統制を行うことになったからです」
「そうだ。みなが記憶にあるフロア抗争。それは実は一回目ではない」
「え?!過去にも争いがあったのですか?!」
「ああ。記述では3回目。『第三次フロア戦争』だった」
「そうだったのですか・・・・・・」
「上層階では二度とそのような争いが起きぬよう、下層との交流を必要最低限とし、配給の分配も徹底的に行いようになり、今がある」
「僕たちの聞いている話、つまり、その『第三次フロア戦争』の原因として第1と第8の代表が上層階の代表と密約を交わしたとありますが、それは事実なのですか?」
「まぁ、概ねはそうだが・・・その意図は別にありそうだな」
「と、言いますと?」
「第一次フロア戦争の原因は上層階でも定かではない。もはや触れてはいけない禁句となっている。第二次フロア戦争の原因は・・・『上層界の怠慢』だ」
「怠慢・・・・・・」
「下層への配給を行う者がいなくなったのだ。そうして下層では暴動が起き、当時の上層界の民は・・・粛清された」
「粛清?!」
「ああ。現在の上層階の民とは、元々は表層階の人々だったのだ」
「そ・・・そんなことが・・・誰がどのようにしてそれを選んだのでしょう」
「・・・記述、伝記では『選ばれし者』と書かれてはいるが、私はそうは思ってはいない。‟偶然にその時に上っただけの者”たちだろう」
「たまたま・・・奮起した人たちってだけですか」
「恐らくな。私はその後、上層階で生まれ育った。つまり私も元々はここの民だったんだよ。そしてファティマ伝記を読み聞いたことを搔い摘んだ。この地に降りて来てからも医者として、多くの高齢者や有識者の昔話を聞いた。各家庭に密かに囁かれ伝承されている話を聞いて集めてな。具体的な記述や証拠は何も無い。しかし、祖母やそのまた祖父などに当時を見てきた者たちの、伝承のように聞いてきたその『噂話』を集めて共通点を抜粋すると、そういうことになってゆくのだ」
「で、では他には・・・その、神とはなんです?!あの、大きな鳥の正体は?!」
「ファティマ伝記にはこう記されている」
【天から舞い降りし光り輝く、羽の生えた天使が産み落とし者】
【始まりのアダムとイヴはコロニアを統べる祖】
【神は我々を見守って下さる 天使の使者はその確固たる証明である】
【雷鳴と暴風に乗って天使は訪れ、下界の草木が枯れる頃に贄を求む】
【贄の選定は選ばれし者が厳選せすべし】
・・・・・・
「・・・では、あの鳥は神ではなく、使者であると?!」
「ああ。そうみたいだ。ファティマ・ゲート正教での神とは、またその先に存在している者だった。しかし、その教えが今では変わり『The Big H Gate』となっている。何故そうなったのか。それも私が解明したいことの一つでもあるのだ」
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