『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

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Phase Ⅱ

Chamber

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 二手に分かれて捜索しまたもや自然と逞しい者がもう一つのリーダーとなったその2名が、凡そ反対側で合流し情報を共有する。


「どうだった?」

「ああ、途中で下に降りる階段を二か所、見つけた。一つ目で5名を降ろし他はここの捜索を継続。二つ目を見つけてそっちは4名を降ろした」

「こっちも、似たようなものだ。では、合計で下に降る階段は四つか・・・この下にここの住人が居住する部屋があるってことかな」
 堅い大きな石を切ったように整った、CSタワーの壁と同じ材質で作られた地面を少し蹴りながら一人が言った。

「そうだろうな。道中はずっとこの風景が続いているだけだった。当然のように人の気配はない。どうする?」

「・・・二名をここに残し、俺らはここからまた中央にいってみよう。このフロアのタワーから、更にあの三階フロアへと続く階段がどこかにあるはずだろう」

「確かに、そうだな。もしかしてここの民、全員が上へ逃げたのかもしれんしな」

「行こう」

「お前と・・・お前はここに残り下に降りた捜索者たちを待っててくれ。後の者はもう一度、中央のタワーへとここから向かおう」

 残った二名は喜びながら、近くに置いてある物資の箱を漁り食べ物を探すことに必死になった。三日ぶりの食料なので仕方がなく、それを咎める者は居ない。



 当分、先ほどと同じ光景が続く。様々な物資とそれらを運ぶツール、そして食べ物の腐敗臭。開けた屋上のようなこの広場だからこそまだこの異臭は我慢ができている。
 時折、風が異臭を運んできては、爽やかな風が新鮮な空気をも巡回してくれる。

 中心部に食料が集中しているようで、徐々に異臭を強く感じてくるサイクルが増し不快感を覚えてきた。


「・・・ぉぉぉぉぉぃ」
 遠くで誰かが呼んでいる声が聞こえ、全員周囲を見渡しながら後ろを振り返った。

「・・・ぉぉぉおおおい!!」

 待機させてきた一名が走ってこっちへとやってくる。

「どうしたぁ?!なにかあったのかぁ?!」

「・・・見つけたってよぉ!!ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・」

「誰かいたのか?!」

「ハァ、ハァ・・・ああ、下に行った奴らの一人がやってきて、人を見つけたって」

 リーダーの二名が目線を合わせてから、同時に頷いた。

「みんな、行こう!」
 

 分岐点にはまた二名だけを残し、後は全員で人が居た場所へと向う。

 そこはここへやってきて二つ目に見つけた中へと降りる階段で、下は大、中、小の部屋が入り組みまるで迷路のよう入り組んでいると言う。


「では、ここの階段上部にまた一名残ってくれ。そして階段の下にもう一名。何かあったら別動隊と合流をして伝達役を頼む」

 そう言って、その他の者は吸い込まれるかのように次々と階段を降りて行く。



「こっちです!」
 先にここへ来た者に案内をされながら、既に上とは比べ物にならない程のもの凄い悪臭が部屋と廊下を満たし進む足を遅らせる。まるで侵入を拒むかのように見えない壁が立ちふさがる。

「ここは・・・外の比ではない臭いだな」

「この先で、人がんです」

「なにぃ?!人とは死体のことか」

「それを見つけて、直ぐに俺はみんなを呼ぶように言われて・・・・・・」

 間もなく、その死体を調べている先に来た二名と合流した。

「どうだ、何があったか分かるか?」

「・・・分かりません。外傷は全く見られない。この表情から見て、毒か、窒息か、心臓病などの病死っぽいですね」

「ううん・・・換気はあまり良いとは言えないが、俺たちが呼吸出来ているってことは空調に問題は無いだろうな。・・・もう少し先に進んでみよう。他にも死体があるかもしれん」

 それぞれに緊張が走り、異臭は気にならなくなった。各々が手に持つ木こり用の斧や草刈り用の鎌、三又の鍬などを持つ手に汗を滲ませる。


 通過していく部屋の扉を順番に開けていくが、人は疎か死体すら無かった。


 ガチャ・・・ガチャガチャ・・・・・・
 大部屋らしい部屋の扉が空かない。全員が固唾を飲んだ。

「おい」

 リーダーは手斧を持つ者三名に顎で壊すようにと指示し、振り上げ下ろされた斧で木片が床に散らばっていく。
 ガン!ゴスッ!バキバキ!!
「・・・ぐわぁぁぁ!なんだ!この・・・おえぇぇぇぇ!!」

 扉の中央に隙間ができるや否や、今までに嗅いだことのない悪臭が廊下全体に広がり、次々とその場で吐きだし床は胃液の吐しゃ物で塗れた。
 リーダーは怯むこともなく、逆に勇むかのように素手で隙間に手を入れ腕力で扉の木を引き剥がしていく。するとその開いた隙間から人の腕がボロン、とまるで死んだ牛の舌かのように扉に隙間から出てきた。
 その腕に血色は無く、明らかに死体の腕だった。

「これは・・・・・・」

 足元で吐き続けている者の斧を拾い、更に扉を壊していくと部屋の中から
 ミシミシ・・・バキ、ミシ、ミシミシ・・・・・・
 
 何らかの圧力がかかり、今にも扉が完全に破損する雰囲気を出してきた。

「・・・おい、みんな・・・少し下がれ」

 悪臭で過半数の者は出口へと逃げて行ったが、数名は残っていた。
 リーダーは元々下層では家畜である猪や野生の鹿などを捌く仕事をしているので、こういった臭いには強かった。他数名、少し鼻が慣れてきた者が残り行く末を見守る。


 ・・・バキバキ!!・・・ドサドサ!ドサッ!!


 耐久度の限界点を超えた扉は全壊すると、中から上層民らしき死体が何体も流れ出てきた。臭いに慣れてきた者達は視覚からの追撃を受け、また嗚咽を繰りかえすことになった。しかし、ずっとろくな食事が出来ていないのもあり、胃液と唾液しか滴ってはいない。

「なんだって言うんだ・・・これは」

 リーダーは左腕で鼻元を抑えながら、部屋の中を覗こうと向かう。しかし、室内は真っ暗で殆ど見えない。仲間の一人がもつ松明を借りて中を照らすと、部屋の中は死体で埋め尽くされていた。
 自分達の目線の高さにまで死体が積み上がり、足元まで残っていた扉も死体の重みで壊れると同時に、圧力で押しつぶされて出てきたであろう腐った内臓のような肉片と濃く変色した血が流れ出て、全員その場から逃げるように立ち去った。

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