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Phase Ⅳ
Subjugation
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ウェルバーは他に何が起きようが、例え矢が頬を掠めても槍が腿を傷つけても、隣で死人が出ようがチーターが女を襲おうが、どさくさ中の民家でプローバーが子供を食おうが、真っすぐに男爵だけを見据えてひた走る。
あと一歩の所で参謀と思われる男に捕まり、その怒涛は食い止められた。
「貴様ぁ!どこに向かう!?」
ウェルバーは掴まれた腕そのまま後ろへと転がり、足をみぞおちに当て巴投げであっさりとそれを配った。
他に男爵の側近は妾のような女性ばかりで、みんな突然の出来事で委縮しているだけで無抵抗な者しか居ない。ウェルバーは直ぐさま好色男爵の顔面目掛けて剣を振り降ろし、眉間まで食い込んだその刃は有無も言わさずに命を奪う。
「あ・・・がっ・・・な・・・・・・」
バロンの左目はその剣圧で飛び出し、禿た頭から血が滴りピクピクとひくつく舌を飛び出し下衆な肉塊へと変わり果てた。
周囲の者達、第2の者だと思われる民たちは唖然とし、何が起きたのか把握する間が生まれ戦闘の嵐の中心は台風の目のようにそこだけ静寂に包まれる。
その空間を破ったのは、その沈黙の目を作り出したウェルバー本人だった。
「おい!この争いを止めさせろ!!みんな騙されている!陰謀なんだ!!」
先ほど投げ飛ばした参謀に視線を向けて、神輿の上から演説する。
「俺は第6のウェルバーという者!みんな聞けぇ!これは全て『過激派』の罠だ!この騒動の後、お前たちが勝とうが負けようが、また反対組織へのヘイトが溜まる!そうなると同じ反乱が生まれる!それが奴らの狙いだ!第6でも同じ構図で俺は命を狙われた!今、無駄に力や命を使ってはならぬ!疲弊した処を‟漁夫の利”を狙われるだけだぁ!!」
「・・・おい、ウソを付くな」
参謀の男が一気に不安顔を見せる。その分かり見の速さはどうやらウェルバーが言っている言葉に、身に覚えがある様子である。
「本当だ!俺はそのことを伝えにわざわざ命がけでここまで来た!やめろ!これ以上、利用されちゃダメだぁ!!」
ザワつくこの静寂の目の群衆のどこからか、一人の女性が現れる。
「この男の言っている事は本当だ!」
颯爽とレイアがウェルバーの隣、神輿に上がって隣へと降り立った。
「おい・・・・・・」
ウェルバーはレイアを制そうとするがそれすら無言で頷き、そして笑顔を見せて制してきた。
「いいか!みんな聞いてくれ!この男は、私の婚約者だ!!」
「おい!!」
ウェルバーは驚きと焦りで戸惑った。
「もう、いいんだ・・・・・・」
レイアは悟ったかのように、また笑顔でウェルバーを見つめる。
「私たちは決して、お前たちを縛ったりはしない!ただ守りたいだけなんだ!男性を見下したり、嫌煙したりもしない!むしろ尊敬している!私はこの男と出会い、男とはどんな生き物なのか、そしてその素晴らしさを知った。中にはゲス野郎も確かにいる。たった今、死んだこの男のようにな!!しかし、女の中にも同罪な人間もいるんだ。見ろ!隣にいる奴を!血にまみれ、中には子供を喰い散らかし蹂躙している。その姿は私たちを襲ったチーターとどう違う?!同じではないか!!弱者を集めても更にその中から強者は生まれ、強者の中にもその中での弱者は存在してしまう・・・みんなでこの矛盾した世界を変えよう!男が偉いわけでも女が上な訳でも無い、みんな同じ人間なんだ!」
「女帝よ。主の今の言葉・・・こんな公共の場で・・・もう否定はできんぞ。分かっているのか?」
第2の参謀が詰め寄る。
「ああ。当然だ」
そういってレイアはみんなの前でウェルバーに熱い口づけを披露し、どよめきと騒めきが周囲を支配した。
「・・・よかろう。第2の民よ!みんな引けぇ!!」
後続に防衛線として張っていた過半数の男たちがぞろぞろと去ってゆく。どこかも分からずに参戦していた第3の民も、まるで燃料が切れた焔の如く消えていく。
最後は残党のように暴走したままのチーターとプローバーが数人、状況の把握が出来ないまま正規軍に捕まりその場で処刑され、一晩限りの「表層戦争」は幕を閉じた。
あと一歩の所で参謀と思われる男に捕まり、その怒涛は食い止められた。
「貴様ぁ!どこに向かう!?」
ウェルバーは掴まれた腕そのまま後ろへと転がり、足をみぞおちに当て巴投げであっさりとそれを配った。
他に男爵の側近は妾のような女性ばかりで、みんな突然の出来事で委縮しているだけで無抵抗な者しか居ない。ウェルバーは直ぐさま好色男爵の顔面目掛けて剣を振り降ろし、眉間まで食い込んだその刃は有無も言わさずに命を奪う。
「あ・・・がっ・・・な・・・・・・」
バロンの左目はその剣圧で飛び出し、禿た頭から血が滴りピクピクとひくつく舌を飛び出し下衆な肉塊へと変わり果てた。
周囲の者達、第2の者だと思われる民たちは唖然とし、何が起きたのか把握する間が生まれ戦闘の嵐の中心は台風の目のようにそこだけ静寂に包まれる。
その空間を破ったのは、その沈黙の目を作り出したウェルバー本人だった。
「おい!この争いを止めさせろ!!みんな騙されている!陰謀なんだ!!」
先ほど投げ飛ばした参謀に視線を向けて、神輿の上から演説する。
「俺は第6のウェルバーという者!みんな聞けぇ!これは全て『過激派』の罠だ!この騒動の後、お前たちが勝とうが負けようが、また反対組織へのヘイトが溜まる!そうなると同じ反乱が生まれる!それが奴らの狙いだ!第6でも同じ構図で俺は命を狙われた!今、無駄に力や命を使ってはならぬ!疲弊した処を‟漁夫の利”を狙われるだけだぁ!!」
「・・・おい、ウソを付くな」
参謀の男が一気に不安顔を見せる。その分かり見の速さはどうやらウェルバーが言っている言葉に、身に覚えがある様子である。
「本当だ!俺はそのことを伝えにわざわざ命がけでここまで来た!やめろ!これ以上、利用されちゃダメだぁ!!」
ザワつくこの静寂の目の群衆のどこからか、一人の女性が現れる。
「この男の言っている事は本当だ!」
颯爽とレイアがウェルバーの隣、神輿に上がって隣へと降り立った。
「おい・・・・・・」
ウェルバーはレイアを制そうとするがそれすら無言で頷き、そして笑顔を見せて制してきた。
「いいか!みんな聞いてくれ!この男は、私の婚約者だ!!」
「おい!!」
ウェルバーは驚きと焦りで戸惑った。
「もう、いいんだ・・・・・・」
レイアは悟ったかのように、また笑顔でウェルバーを見つめる。
「私たちは決して、お前たちを縛ったりはしない!ただ守りたいだけなんだ!男性を見下したり、嫌煙したりもしない!むしろ尊敬している!私はこの男と出会い、男とはどんな生き物なのか、そしてその素晴らしさを知った。中にはゲス野郎も確かにいる。たった今、死んだこの男のようにな!!しかし、女の中にも同罪な人間もいるんだ。見ろ!隣にいる奴を!血にまみれ、中には子供を喰い散らかし蹂躙している。その姿は私たちを襲ったチーターとどう違う?!同じではないか!!弱者を集めても更にその中から強者は生まれ、強者の中にもその中での弱者は存在してしまう・・・みんなでこの矛盾した世界を変えよう!男が偉いわけでも女が上な訳でも無い、みんな同じ人間なんだ!」
「女帝よ。主の今の言葉・・・こんな公共の場で・・・もう否定はできんぞ。分かっているのか?」
第2の参謀が詰め寄る。
「ああ。当然だ」
そういってレイアはみんなの前でウェルバーに熱い口づけを披露し、どよめきと騒めきが周囲を支配した。
「・・・よかろう。第2の民よ!みんな引けぇ!!」
後続に防衛線として張っていた過半数の男たちがぞろぞろと去ってゆく。どこかも分からずに参戦していた第3の民も、まるで燃料が切れた焔の如く消えていく。
最後は残党のように暴走したままのチーターとプローバーが数人、状況の把握が出来ないまま正規軍に捕まりその場で処刑され、一晩限りの「表層戦争」は幕を閉じた。
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