『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

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Phase Ⅶ

a cruel corpse

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 ウェルバーは少し駆け足で、かつ出来るだけ物音を立てない様にライト達との合流を目指す。

 すると、前方の壁際に人影を見た。すかさず右手建物の影に身を隠し、少年を家の壁に背を預け座らせる。

 ウェルバー自身も同じように建物の壁を自身の背後にして、もう一度前方を確認。
 やはり一人の男がフラフラと揺れるように立ち尽くしていた。揺れの反動で前へと少しづつ進んでるように見え、頭と視線はずっと上空を見上げている。道端に放置され壊れた椅子に膝をぶつけて足を取られるが、フラフラとまた立ち上がり同じ歩行を繰りかえす。

 ウェルバーは手頃の石を拾い上げ、中央壁側へと石を目一杯投げて物音への反応を見る。

 カンッ!カカンッ・・・カン・・・・・・

 投げた石は木組みの基礎に石と土で作られた各コロニー間を隔てる壁に当たり、スラム化した静かなる町と家々に反響する。

 壁側前方に呆けながら立たずむ男は、その音に敏感に反応し今までの間抜けそうな動きからは一変し、俊敏に音のする方へと駆け走って行った。そして更に、隠れた建物の中央側前方でもう一体、ウェルバーが投げた石の音の方へと凄まじい速さで走り抜ける人影が横切る。

 ウェルバーは肝を冷やした。

 点々とだが、しかしなかなかの数のProberプローバーが彼方こちらに居ることが分かったからだ。
 このまま壁側まで行き、壁沿いに南下することは諦めて出来るだけ建物や木々に身を隠しながら、ライト達のいる場所まで急いで向かう。




「完全に倒壊しちゃってるとこや木組みだけの剥き出しになっちゃったとこらへんは、見渡しは良いけどこっちもバレバレ。休まる事がないからギリギリのラインで、自分達で家を勝手にだけどリノベーションしながらにしよう。とりあえず、本当に誰も居ないのか調べてから、だよね」

「手分けして当たってみますか?」

「いや、それはダメだよ。女の子だけにしてはおけない!」

 ウェルバーが居ないので、ここはライトは頑張って自分が守るんだ、という意気込みで答えた。

「「うふふ」頼もしいですよ、ライト様」

「???」

 三人は一緒に一軒づつ、誰も居ないかを確認していった。


「この辺・・・あ、この家がベストかな」

「本当に誰も居ませんね。みんな中心部にでも集まっているのでしょうか」

「・・・もしかして、『悪魔の森Devil's Forest』に住む悪魔・・・死神にでも襲われたとか・・・・・・」

「「・・・まさかぁ」、ちょっとなんか怖いこと言わないで」

 ライトがなんとなく選定した家の中へと入ってみると、なんだか変な臭いに三人ともが気が付く。

「・・・クサっ、なに?この臭い・・・・・・」

「何かが腐って・・・アンモニア、肥料・・・血の臭いだ。二人は家を出て、別の家の中に隠れてて」

 パメラとセーラの二人は手を握り合い、そそくさと外へと駆け出る。ライトは玄関先にあった火掻き、灰掻きに使うような火鉢棒を取って奥へと進む。

 ウェルバーと森へと狩りに行った時、狼かなにかの肉食獣に襲われただろう鹿の無残な死体を見つけたことがあった。その時の臭いに今のこの感じが似ていた。
 どこのコロニーでも野獣などの警戒態勢は引いているからか、コロニー内で野獣の被害はあまり聞いたことが無い。しかし、この時のライトは「勇気を出して女性を守る」という使命に初めて燃えていた。

 玄関先の台所、釜や囲炉裏の奥へとライトが頭だけを出して見ると、そこにはバラバラに散らかされた人の死体の肉片が壁や天井にすら付着し、様々な昆虫が群がっていた。ウジが沸き、ハエが飛び交い、チャタテ、ヒメマルカツオブシムシ、ゴキブリ、シデムシが床を這いずり回っている。

「うえぇ!おえぇぇぇぇぇ!!」

 ライトは気分が悪くなり咽返るが、胃の中にはもう何も吐く物が無く涙だけが頬を伝う。

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