『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

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Phase Ⅶ

Purge

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 第1は明かりとしての松明や篝火は殆ど消えていた。各コロニーでは常備灯がタワーから外門まで続く大きな中央通りがあり、その脇には必ず篝火がまるで道標かのように等間隔で炊かれている。その火を絶やさないように管理する者を一つ一つ任命して仕事にしている程で、その灯に近い家を宛がわれる。それが殆ど消えていたのだ。
 しかし、タワー下の中央は遠くからでも少し明るく見えた。やはり中央へと、タワーへと逃げた第1の民が一定数いる様子が伺える。

 今宵は月も薄く闇夜が不安を掻き立てる。しかし、視認が難しいのはプローバー達も同じ。ウェルバーは森の更に漆黒の闇で慣れている分、自分の方が優位に動けると自信があった。

 普通に歩いていると、出会い頭にばったりとプローバーに出くわしてしまうことは避けれないと考え、急な戦闘になった時のためにウェルバーとライトは腰に紐で繋ぎ、両手が空く状態で且つ離ればなれにならないようにした。そしてそれぞれの手には斧や手投げナイフなどの武器を持ち、まるでネズミのように障害物や壁に沿って中央へと進んでいく。

 外では最悪、逃げの一手が使えるが屋内、室内で出合わせれば危険ので物資を調達するために突入する家屋は厳選する必要がある。
 各コロニーは真ん中にメイン道路がタワーを始め外壁の扉まで一本続いてそこから三つにサブストリートが分岐し、更にそこからまるで毛細血管のように小道が分かれている。そのメイン道路に配給された各物資が屋台のように並べられ、食料、家具、衣類などと分けられて民へ分配しているのが定例だ。なのでメイン沿いの家がそれらのストックを管理している建物の可能性が高い。開けた道なので敵に見つかる危険性が増すが、必ず死闘となり得る密集地域よりかはマシだと考えた。


「・・・ここに入ってみよう」

 ウェルバーが足元に医療品らしき物が散らばっている場所の建物を差した。

「そうだね。先に薬とかを手に入れよう」

「ライトはここで外を警戒してくれ」

 ウェルバーは腰の紐を解く。

「兄さん、薬がどれかとか分かるの?」

「適当に持ってくるよ。違っていてもいずれ必要になってくることもあるだろうし。配給される錠剤や粉末とかの判別はできないが、薬草や漢方などの草は見れば分かる」

「チェバラ先生の手伝いをよくしていたから、僕は基本的な薬物なら分るよ」

「そうか・・・じゃあ一緒に来てくれ」


 幸い、医療ストック小屋内には誰も居なかった。


 充実した医療物資を調達し終えた二人は、次に食料を獲得するべくもう少し中央へと向かう。


「・・・待て」

 ウェルバーの前方に、プローバーが数人メインストリートを横切っている。

「・・・ねぇ、なんで奴らはプローバー同士で戦ったり襲ったりしないのかな」

 ライトがまた素朴な質問をこんな状況でもしだす。

「俺に分かるわけないだろう。ただ、そうだな・・・俺の感想だけど、完全に理性を失っている訳でも無く、動物的な異種を見分ける程度の野生みたいなものは残っているんじゃないかな。そんな印象だ」


 ガシュ!・・・ドサッ!


 隠れて観察しながら話していると、突然一人のプローバーが倒れた。


 カシュ!・・・ガシュ!ドサッ!ゴンッ!


 今度は連続して二名が倒れた。よく見てみると、頭に矢が貫通し即死している。ウェルバーは矢が刺さっている方向から発射角度を推測し、建物が並ぶ屋根へと振り返った。灯りが右から左へ、上から下へと移動している。ウェルバーはライトを奥へと更に引っ込めて、完全に闇に身を深めて状況を見守る。


 また、いくつかの灯りがウロチョロとしていると、二、三個の灯りが残ったプローバー二体を襲い、倒れた相手にマウントを取ってしつこく打撃を繰り返し、何とも言えない奇声を上げている。

「オロロロロー!」「ひひゃはははー!」「うらっ!おらっ!そりゃ!」

 もうプローバーの一群は全滅し、十分なはずの状況でも彼らは死体を潰し遊んでいた。

「・・・ライト。どうやら奴らも一枚岩ではないようだな」

「今度の奴らはなんなんだ?まるで狩り、いや、殺しを楽しんでいるようだ」

 ライトの目には怒りが込み上げている。

「第3の女性プローバーに近いな。ただ対象が女、子供だけではないだけだ」

「狂ってる・・・こんなの、おかしいよ」
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