『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

文字の大きさ
113 / 149
Phase XIII

One man

しおりを挟む
 何故か気まずい雰囲気の中、二人は反対側の牢屋へと進むことにした。

 このエリア突入一つ目の牢屋、ライトへ液体を飛ばしてきたやつの監獄部屋の前を通り過ぎる必要があり、その際にはまた二人を牢屋内の端から端まで追いかけてくる。二人はそれをひたすら無視して、小走りで過ぎ去り更に左へと向かう。

 右の奥にはもう一つ部屋があったが、ライト達は後回しにした。
 先ずは左へ。二人ともがどちらかと指示したわけでも無く、そう同時に考えて左へと足が向いたのだ。

 液体飛ばし男がいる直ぐ左隣の監房には何故か一人だけが収容されていて、そいつが話しかけてきた。

「よぉ。お前らまだ子供か?なら右奥へは行かない方がいいぜ」

 話しかけてきた男は瘦せていて、この上階の者では無い可能性が高い。ただなんとなく、ライトはこの男の声を聞いたことがあるような気がしていた。

「もう見たよ。なんなんだ?あれは」

 サルヒコが一応、この一見した立場上として答える。

「長くこうやって集団で収容されていたら、みんななんだよ。それに、一番奥のはもう、『人間では無い』者たち専用さ」

 ライトはさっきの、自身が疑問に思ったことの答えが直ぐそこにあるのかと思い若干、好奇心に見舞われた。

 男は二人を「子供」だと感じたのにも関わらず応答をしてくれているのも不自然だったが、ライトとサルヒコのスタイルを‟囚人ごっこ”でもやっていると考えてくれているのだろうかとそんな見解もあり、そのまま会話を続けることにした。

「こんなところに入っているのに、なんで別の部屋のことが分かるのさ」

「ここにずっと俺が一人だったとでも、思うかい?」

「いや・・・・・・」

 別の囚人に聞いた、とでも言いたげな回りくどい表現だった。

「なぁ、とりあえず、俺をここから出してくれないか?礼は何でもする。頼むよ」

「・・・あんたは、なんでここに捕まってんだよ。殺人鬼、だなんて助けたくはないぜ」

「見ればわかるだろ?俺はここ、上層階の住人じゃあないんだ。無理やりここへセンター教の、もっと上の『セントラル教』に連れられて、そして逃げただけだ。そしたらまた捕まって、この様さ」

「・・・下で、あんたは何をしたんだ?」

「下でも、何もしてねぇよ。ただのだった」

 農民、と聞いて第7コロニーの者かとライトは推測できた。

「ただの農民が、なんで攫われるようなことに?」

「知らねぇって。マジ助けてくれ。このままだと第コロニー行きになっちまう・・・・・・」

「第8?第7じゃなくて?」

 つい囚人役のライトが答えてしまったが、男は気にせずに続ける。

「ああ。こうやって収容されてしまった者は否応なしに『第8送り』にさせられるんだ・・・特に、この奥の奴らはな」

 男はそう言うと、まだ微かに聞こえてくる‟喘ぎ声”の方向を顔で示す。

 ライトとサルヒコは一番奥に収監されている‟モノ”の正体が気になって来てしまった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...