『Dystopia 25』 ~楽園~

シルヴァ・レイシオン

文字の大きさ
116 / 149
Phase XIII

Abnormality

しおりを挟む
 二人は無言のまま、とにかくさっきのグロテスクな「絵」を忘れるのに頭の中は必死だった。
 もう胃の中の物は全て吐き出し、鼻の奥に残るさっきの臭いと気分の悪さに頭痛すらしてくる。

 朦朧としつつある状態で監房エリアへと向かっていると、第8監獄エリアへの階段側からの道へと気が付けば進んでいた。
 ふと、その事に気が付いたライトは
「・・・え・・・・・・」

 気が付くと同時に、またあの「喘ぎ声」が聞こえて耳に入って来くる。
 淫欲な雰囲気のBGMの中、ライトの目には一番右奥だった牢屋内部が目から脳裏の入り込み、天井、壁、床はもちろん、広い大部屋な監房の至るところが真っ赤で血に染まり肉片だらけの光景が映し出された。
 死体の合計人数は不明。腕や足が無数に散らばり、天井や壁には腸らしき内臓などがへばり付き電灯には引っ掛かり、ぶら下がっている。

 その地獄絵図の真ん中には正に化け物が鎮座し、数多の肉片をずっと食っていた。
 引き千切られたような誰かの腕を鷲掴み、小指から順番に丁寧に食っては爪と指の骨をプッっと吐き出して満足そうにしているその者は、常軌を異しているという言葉そのである。

 突然、咽返ったと思いきや口に自分の指、手をねじ込み、何かを指先で掴む。そして喉奥から引きずり出してきたのは人間の毛髪が長く長く伸びて来て、血の固まりと共に吐き出されてきた。

「・・・う・・・あ、あ・・・・・・」

「・・・?どうした?なんで立ち止まってんだ??」

 ライトの背後に屈んで隠れているサルヒコが心配そうに声をかけてきた。

 その声に気が付いたのか、血と臓物の海である監房の中に鎮座していた異形の男が立ち上がり、ライトを見つめる。その立ち上がった身の丈は優に二メートルは越え、ウェルバーなんかですら子供に思える程の体格にライトは圧倒される。

 二人はただ立ち竦み合うだけだった。

 ライトは怯え震え、巨人の男バケモノは全裸でただ血だらけの、そしてさっきまで食っていた誰かの腕を掴んだまま無表情に佇んでいる。

 サルヒコが業を煮やし、白装束から出てきてライトに怪訝な顔をして啖呵を切ろうとしたその時、ライトの怯えた顔とその眼差しの先、そして鮮明に聞こえてきた‟喘ぎ声”に気が付いた。

 ゆっくりとライトが見つめている先を振り返る。

 反応、リアクションはライトと同じだった。

 唖然とした二人に、巨人の男バケモノは持っている千切れた腕を勢いよく投げつけてきた。


 ガッシャーーーン・・・ベチャ・・・・・・


 投げられた腕は鉄格子に当たり、そして血だまりの中に落ちていった。
 二人は顔や身体中に血飛沫を浴びて、それで気を戻したかのように急いで反対側へと走って逃げて行った。

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...