タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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ことのはじめ

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 ぼくの友達に、茶トラ先生という物凄い人物がいる。「茶トラ」といっても、茶トラの猫のことではない。本当は「茶彪」とかいう、とても立派で難しい漢字の苗字があるのだけど、「彪」という字がぼくにはとても難しいので、ぼくはいつも「茶トラ先生」と、彪の部分を「トラ」と、カタカナで呼んでいる。
 だけど「呼ぶ」といったって、声に出して呼んでいるのだから、どちらでもいいはずなのだけど、それはまあいい。
 さて、実は茶トラ先生はすごい科学者だ!
 昔はどこかのとても有名な、多分京都の旧帝国大学の、たしか、物理の大先生だったらしい。
 だからけっこうな年寄りだ。
 だけど先生は大学では、「超変わった人」として、悪い意味でとても有名だったみたいだ。
 それで他の教授たちからは全くよく思われず、とうとう大学を追われたそうだ。
 といっても茶トラ先生が大学を追われたくわしいいきさつを、ぼくはぜんぜん知らない。それはぼくにとっては全くどうでもいい話だし。
 それで、大学を追われて以来、先生は実家に一人で住んでいる。
 もともと家がよほどお金持ちだったみたいで、大学を追われても、生活に困ることはないようだった。
 それどころか、かえって自由に研究が出来るとか言って、むしろ喜んでいるようにさえ、ぼくには思えた。
 だけどなぜ先生が一人で住んでいたのかも、ぼくにはぜんぜん分からなかったし、奥さんや子供がいたのかなんてことは、今でも全く分からない。
 とにかく茶トラ先生はミステリーでいっぱいだ!
 だけどそんなことなんかどうでもいい。
 ぼくは茶トラ先生が大好きだ!
 
 最初に茶トラ先生と出会ったとき、ぼくは小学六年だった。
 それはぼくの自転車が、茶トラ先生の家の前の坂道でカンペキに動かなくなり、そこでぼくが立ち往生しているときだった。
 どうしてそんなバカなことになったのかというと、もちろん少しばかりわけがある。
 それは同級生のデビルという奴のせいだ!
 デビルといったって妖怪なんかじゃなく、れっきとした人類で、ちゃんとした人間の名前だって一人前に持っている。
 だけど、あいつの本当の名前なんて、そのときのぼくにとっては、ぜんぜんどうでも良かった。
 それで、茶トラ先生と出会ったいきさつの始まりは、ある梅雨の日の晴れ間のこと。

 その日、ぼくは新品の自転車を買ってもらっていた。
 ばりばりの内装三段変速! 
 それで試運転とばかり、ぼくはそれを自慢げに乗り回していたら、家の近くのうさぎの公園の前でばったりと、しかもよりによって、そのデビルに出くわしたんだ。
 これはとてもやばいと思ったけれど、あいつは大きな体であっという間にぼくの行く手をふさぎ、ぼくは緊急停止させられた。
 そしてデビルはぼくの自転車にちらり目をやると、案の定「ちょっと乗せろ!」とか言い出し、「いいからいいから」とか言いながら、無理やりぼくを自転車から引きずり降ろすと、勝手にまたがり、勝手にどこかへと走って行ってしまった。
 つまり、とても不幸なことに、ぼくは自慢の三段変速のバリ物の自転車をハイジャックされてしまったんだ。
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