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物凄い機械
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「おいイチロウ。すごい機械を発明したからただちに見に来ないか?」
それからしばらく過ぎた、夏休み前日の七月十九日のことだった。
茶トラ先生からこんな「緊急連絡」が来た。
実は茶トラ先生はケイタイとかメールとかが大嫌いな人種で、連絡してくるのはいつも無線機だ。
これは茶トラ先生の発明のうちでも数少ない実用品で、形はケイタイそっくりだ。
というか、ケイタイを無線機に魔改造してあるらしいんだ。
それで、ぼくの部屋の机の上にある、このケイタイ風無線機が「ブ~」とダザい音を鳴らしたら茶トラ先生からの連絡ということになっていて、その日も、いつものように興奮した声でそんな連絡をしてきた。
ちなみに茶トラ先生は、ぼくのことを普通は「お前さん」とか呼ぶけれど、とくに名前を呼ぶときは「イチロウ」と呼ぶ。
言葉だから本当は漢字かカタカナか分からないはずだけど、ぼくには分かる。
間違いなく茶トラ先生はぼくをカタカナで呼んでいる。
まあぼくも茶虎先生を「茶トラ」と呼んでいるから、これはいわば、おあいこだ。
ところで、ずっと言い忘れていたけれど、ぼくの名前は鈴木一郎という。
よろしく!
それで、前にも言ったように茶トラ先生の「すごい機械を発明したからただちに見に来ないか?」は、お約束の決り文句だった。
だからぼくは、どうせまたいつもの思い切りしょうもない機械だろうと思ったけれど、次の日から夏休みで、思い切りひまだったし、それで性懲りもなくぼくは、早速それを見に行くことにした。
それから自転車で茶トラ先生の家へ着き、さっそく実験室に入ると、そこにはどういうわけか駅なんかに置いてある証明写真の機械がドカンと置いてあった。
そしてその隣に、喜色満面の茶トラ先生が、よれよれの白衣姿で立っていて、そしてこう言った。
「これはタイムエイジマシンというんだ!」
「タイムなんとかマシンって、これ、ええと…、証明写真ボックスとか、スピード写真とかいう感じの機械だろう? お父さんがパスポートを作るとか言って写真撮ってたやつだよ。ヤバイよ! 一体どこからかっぱらってきたんだよ?」
「人聞きの悪いことを言うな。スクラップ寸前の機械を処理業者から払い下げてもらったんだ。だが中身はぜんぜん違う!」
「また魔改造したの?」
「魔改造? まあいい。早速中へ入ってみろ」
「中へ? うん。いいよ」
それでぼくは機械の入り口のカーテンを開け、中を見た。
「なんだ、やっぱりただの証明写真じゃん。ぼく見たことあるもんね」
そう言うとぼくは中へ入り、鏡の前にある、くるくる回るイスにちょこんと座った。
「つまり写真が撮れるだけだろ」
「まあ見とれ。今にぶったまげる」
「あれ、だけど鏡の両側に赤いランプと青いランプがあるんだよね」
「よくそこに気付いたな。ところでお前さん、歳はいくつだ?」
「ぼくの歳? 十二だよ。小学校の六年生だもん」
「それじゃゼロから十一までのうちで、なるべく小さな数字を言え!」
「何だよいきなり?」
「いいからいいから」
「いいからいいから? それじゃぁ、十!」
「あ~、十じゃ物足りない! もう一声」
「もう一声って…、じゃ八!」
「どうしてお前さんはいつもそうちまちましているんだ。もっと大胆に!」
「大胆にったって…、じゃ六!」
「ええいまどろっこしい! よし決めた! 三だ! 三にしよう!」
「だったら最初から自分で決めればよかったじゃん!」
「つべこべぬかすな。いいか、いまにぶったまげる。とにかく鏡を良~く見ていろ!」
茶トラ先生はそう言うと、外でいろいろと機械の操作をやっているようだった。
「ええと、数字は三。よしよしこれでよし。いいか、よく鏡を見ていろよ。いまにぶったまげるからな」
「はいはいはい。ぶったまげるんだね。ここからハトでも出てくるの?」
それから茶トラ先生は外で機械のボタンをパチンと押し、すると機械がブーンという音を立てて動き始めた。
そして鏡の両側にあるランプのうち、赤い方が光り出した。
と、突然、ぼくの体が生暖かくなり、体中がもぞもぞと勝手に動き出し、くすぐったいような痛いような気持ちいいような、不思議な感覚が起こった。
そしてその直後、なんとぼくの体が小さくなり始めたんだ!
しかもみるみる顔が幼くなり、もちろんそれにつれてぼくの背もどんどん低くなっていった。
それからしばらく過ぎた、夏休み前日の七月十九日のことだった。
茶トラ先生からこんな「緊急連絡」が来た。
実は茶トラ先生はケイタイとかメールとかが大嫌いな人種で、連絡してくるのはいつも無線機だ。
これは茶トラ先生の発明のうちでも数少ない実用品で、形はケイタイそっくりだ。
というか、ケイタイを無線機に魔改造してあるらしいんだ。
それで、ぼくの部屋の机の上にある、このケイタイ風無線機が「ブ~」とダザい音を鳴らしたら茶トラ先生からの連絡ということになっていて、その日も、いつものように興奮した声でそんな連絡をしてきた。
ちなみに茶トラ先生は、ぼくのことを普通は「お前さん」とか呼ぶけれど、とくに名前を呼ぶときは「イチロウ」と呼ぶ。
言葉だから本当は漢字かカタカナか分からないはずだけど、ぼくには分かる。
間違いなく茶トラ先生はぼくをカタカナで呼んでいる。
まあぼくも茶虎先生を「茶トラ」と呼んでいるから、これはいわば、おあいこだ。
ところで、ずっと言い忘れていたけれど、ぼくの名前は鈴木一郎という。
よろしく!
それで、前にも言ったように茶トラ先生の「すごい機械を発明したからただちに見に来ないか?」は、お約束の決り文句だった。
だからぼくは、どうせまたいつもの思い切りしょうもない機械だろうと思ったけれど、次の日から夏休みで、思い切りひまだったし、それで性懲りもなくぼくは、早速それを見に行くことにした。
それから自転車で茶トラ先生の家へ着き、さっそく実験室に入ると、そこにはどういうわけか駅なんかに置いてある証明写真の機械がドカンと置いてあった。
そしてその隣に、喜色満面の茶トラ先生が、よれよれの白衣姿で立っていて、そしてこう言った。
「これはタイムエイジマシンというんだ!」
「タイムなんとかマシンって、これ、ええと…、証明写真ボックスとか、スピード写真とかいう感じの機械だろう? お父さんがパスポートを作るとか言って写真撮ってたやつだよ。ヤバイよ! 一体どこからかっぱらってきたんだよ?」
「人聞きの悪いことを言うな。スクラップ寸前の機械を処理業者から払い下げてもらったんだ。だが中身はぜんぜん違う!」
「また魔改造したの?」
「魔改造? まあいい。早速中へ入ってみろ」
「中へ? うん。いいよ」
それでぼくは機械の入り口のカーテンを開け、中を見た。
「なんだ、やっぱりただの証明写真じゃん。ぼく見たことあるもんね」
そう言うとぼくは中へ入り、鏡の前にある、くるくる回るイスにちょこんと座った。
「つまり写真が撮れるだけだろ」
「まあ見とれ。今にぶったまげる」
「あれ、だけど鏡の両側に赤いランプと青いランプがあるんだよね」
「よくそこに気付いたな。ところでお前さん、歳はいくつだ?」
「ぼくの歳? 十二だよ。小学校の六年生だもん」
「それじゃゼロから十一までのうちで、なるべく小さな数字を言え!」
「何だよいきなり?」
「いいからいいから」
「いいからいいから? それじゃぁ、十!」
「あ~、十じゃ物足りない! もう一声」
「もう一声って…、じゃ八!」
「どうしてお前さんはいつもそうちまちましているんだ。もっと大胆に!」
「大胆にったって…、じゃ六!」
「ええいまどろっこしい! よし決めた! 三だ! 三にしよう!」
「だったら最初から自分で決めればよかったじゃん!」
「つべこべぬかすな。いいか、いまにぶったまげる。とにかく鏡を良~く見ていろ!」
茶トラ先生はそう言うと、外でいろいろと機械の操作をやっているようだった。
「ええと、数字は三。よしよしこれでよし。いいか、よく鏡を見ていろよ。いまにぶったまげるからな」
「はいはいはい。ぶったまげるんだね。ここからハトでも出てくるの?」
それから茶トラ先生は外で機械のボタンをパチンと押し、すると機械がブーンという音を立てて動き始めた。
そして鏡の両側にあるランプのうち、赤い方が光り出した。
と、突然、ぼくの体が生暖かくなり、体中がもぞもぞと勝手に動き出し、くすぐったいような痛いような気持ちいいような、不思議な感覚が起こった。
そしてその直後、なんとぼくの体が小さくなり始めたんだ!
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