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デビルとの決戦へ
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そしていよいよ決戦の日の昼前になった。
ぼくはまじめにイチ、ニ、イチ、ニと、受けの練習ばかりをしていたのだけど、一つだけとても不可解なことがあった。
それは、どうせ茶トラ先生が教えてくれるのだったら、どうしてぼくはヒマラヤ旅行中の、あのひげぼーぼーで超風変わりな空手の先生のところへ入門する必要があったのかだ。
そもそも八月末から練習が始まるのだから、デビルとの決戦にはぜんぜん間に合わない。
これじゃぜんせん意味がない!
そんなことを考えながら、ぼくはケイタイ風無線機で「行くよ」と連絡してから、自転車で茶トラ先生の家へと向かった。
先生は実験でもしているのかと思ったら、実験室のテーブルなんかをわきによせ、そこにはちょっとしたスペースが出来ていて、そして先生は古めかしい空手着なんかを着込んで、準備運動のストレッチなんかをやっていた。
「いよいよ決戦だな!」
茶トラ先生は妙にとても嬉しそうに言った。
でもぼくは妙にとても気が重かった。
それにとても不可解だった。
それでぼくは、そのとても不可解なことを茶トラ先生にきいてみた。
「ねえ、ぼくはこれからデビルと決戦だよ」
「そうだな」
「だったらどうしてぼくはゲシュタルト先生の所に入門する必要があったの? 練習は八月末からなのに。これじゃぜん…っぜん間に合わないじゃん!」
「よくそこに気づいたな」
「あったりまえだよ!」
「よいかよく聞け。今からゲシュタルト先生のところで数年間空手の修業をすると誓え。いいか、心から、神に誓うんだぞ!」
「でもどうして?」
「いいからいいから」
「またいいからいいから?」
「とにかく誓うんだ!」
「…わ、わかったよ。誓うよ、誓う。で、誓うと、どうなるの?」
「誓ったら早速タイムエイジマシンに入れ」
「また入るの?」
「いいからいいから」
「またいいからいいから?」
「つべこべ言わん!」
「はいはいはい。で、今度はぼくを何歳にするつもり?」
「そうだなあ、十四歳くらいがよかろう」
「十四って、中学二年生?」
「そのくらいだな」
「でもどうして?」
「いいからいいから」
「またいいからいいから!」
それでぼくはつべこべ言いながら、操られるように、またまたタイムエイジマシンに入り、ちなみに今度は十四歳の姿にされるみたいだった。
また機械がブーンとうなり、赤いランプが光り、ぼくは暖かくなり、そしてマシンが止まり…
と、ぼくは自分の体の変化にぶったまげた。
すごいマッチョになったんだ。
着ていたTシャツの下から分厚い胸板と、ぶっとい腕が見えた。
そしてTシャツはぼくの体にはかなり小さくなってしまい、ビチビチだった。
それと少々背が伸びた。
それからぼくはタイムエイジマシンから出た。
「どうなっちゃったのぼくの…、それにぼくの声!」
「一四歳なら声変わりもしとるだろう」
「声変わり? で、ぼくの体は?」
「お前さんが空手の練習を数年間やると誓ったからだ。誓うことでお前さんの未来が変わったのだ」
「変わった? へぇー、そうなんだ」
「つまり未来が書き換えられ、お前さんはゲシュタルト先生のところで、何年も空手の修業を続けたという想定になっておる」
「想定? へぇー、何だかよく分かんないけど、何か…、すごい!」
「よし、それでは早速実践的な練習だ!」
そういうと茶トラ先生は、実験室のどこからか、古くて少々カビ臭そうな剣道の防具を持ってきて身に着けた。
とにかく茶トラ先生の実験室には何でもある!(ほとんどガラクタだけど)
「茶トラ先生は剣道もしていたの?」
「少しばかりな。それより実践的な練習で、お前さんにのされると困るのでな」
「ぼくにのされる?」
「そうだ。だからこれからは防具を付けさせてもらうぞ」
「ねえ、ぼくってそんなに強いの?」
それからぼくは茶トラ先生と空手の組手をやった。
何故だか分からないけれど、不思議なくらいに体が動いた。
茶トラ先生の突きやけりに、不思議なくらいに体が反応したんだ。
時にはぼくが知らないような技も自然に出て、何だかぼくは空手の達人にでもなったような気分にだった。
それで、夢中で練習していると午後三時が近づいた。
茶トラ先生は防具を取り、汗を拭いた。
「さすがゲシュタルト先生は寸止めをきちんと教えておられる。わしは防具を付ける必要などなかったわい。おお暑い暑い」
そしていよいよ決戦に出かける時間になった。
決戦と言っても、デビルはぼくがおとなしく金を払うという想定だろうけど。
ぼくから金をまきあげて、子分を引き連れて、ゲームセンターへでも行くつもりだろう。
だけど、そうはさせないぞ!
「もう、デビルの奴なんかコテンパンにのしてやる!」
ぼくがそう言うと、茶トラ先生はこんなことを言った。
「のしてはだめだ。奴の攻撃を受けるだけだ。そのためにわしはお前さんに内受け下段払いの練習ばかりをさせたのだ」
「え~!」
「とにかく! のしてはだめだ。もちろん怪我をさせることなど、もってのほかだ」
「でも…」
「分かったな」
「でも…」
「わかったな!」
「…分かったよ。デビルに怪我をさせてはいけないんだね」
ぼくはまじめにイチ、ニ、イチ、ニと、受けの練習ばかりをしていたのだけど、一つだけとても不可解なことがあった。
それは、どうせ茶トラ先生が教えてくれるのだったら、どうしてぼくはヒマラヤ旅行中の、あのひげぼーぼーで超風変わりな空手の先生のところへ入門する必要があったのかだ。
そもそも八月末から練習が始まるのだから、デビルとの決戦にはぜんぜん間に合わない。
これじゃぜんせん意味がない!
そんなことを考えながら、ぼくはケイタイ風無線機で「行くよ」と連絡してから、自転車で茶トラ先生の家へと向かった。
先生は実験でもしているのかと思ったら、実験室のテーブルなんかをわきによせ、そこにはちょっとしたスペースが出来ていて、そして先生は古めかしい空手着なんかを着込んで、準備運動のストレッチなんかをやっていた。
「いよいよ決戦だな!」
茶トラ先生は妙にとても嬉しそうに言った。
でもぼくは妙にとても気が重かった。
それにとても不可解だった。
それでぼくは、そのとても不可解なことを茶トラ先生にきいてみた。
「ねえ、ぼくはこれからデビルと決戦だよ」
「そうだな」
「だったらどうしてぼくはゲシュタルト先生の所に入門する必要があったの? 練習は八月末からなのに。これじゃぜん…っぜん間に合わないじゃん!」
「よくそこに気づいたな」
「あったりまえだよ!」
「よいかよく聞け。今からゲシュタルト先生のところで数年間空手の修業をすると誓え。いいか、心から、神に誓うんだぞ!」
「でもどうして?」
「いいからいいから」
「またいいからいいから?」
「とにかく誓うんだ!」
「…わ、わかったよ。誓うよ、誓う。で、誓うと、どうなるの?」
「誓ったら早速タイムエイジマシンに入れ」
「また入るの?」
「いいからいいから」
「またいいからいいから?」
「つべこべ言わん!」
「はいはいはい。で、今度はぼくを何歳にするつもり?」
「そうだなあ、十四歳くらいがよかろう」
「十四って、中学二年生?」
「そのくらいだな」
「でもどうして?」
「いいからいいから」
「またいいからいいから!」
それでぼくはつべこべ言いながら、操られるように、またまたタイムエイジマシンに入り、ちなみに今度は十四歳の姿にされるみたいだった。
また機械がブーンとうなり、赤いランプが光り、ぼくは暖かくなり、そしてマシンが止まり…
と、ぼくは自分の体の変化にぶったまげた。
すごいマッチョになったんだ。
着ていたTシャツの下から分厚い胸板と、ぶっとい腕が見えた。
そしてTシャツはぼくの体にはかなり小さくなってしまい、ビチビチだった。
それと少々背が伸びた。
それからぼくはタイムエイジマシンから出た。
「どうなっちゃったのぼくの…、それにぼくの声!」
「一四歳なら声変わりもしとるだろう」
「声変わり? で、ぼくの体は?」
「お前さんが空手の練習を数年間やると誓ったからだ。誓うことでお前さんの未来が変わったのだ」
「変わった? へぇー、そうなんだ」
「つまり未来が書き換えられ、お前さんはゲシュタルト先生のところで、何年も空手の修業を続けたという想定になっておる」
「想定? へぇー、何だかよく分かんないけど、何か…、すごい!」
「よし、それでは早速実践的な練習だ!」
そういうと茶トラ先生は、実験室のどこからか、古くて少々カビ臭そうな剣道の防具を持ってきて身に着けた。
とにかく茶トラ先生の実験室には何でもある!(ほとんどガラクタだけど)
「茶トラ先生は剣道もしていたの?」
「少しばかりな。それより実践的な練習で、お前さんにのされると困るのでな」
「ぼくにのされる?」
「そうだ。だからこれからは防具を付けさせてもらうぞ」
「ねえ、ぼくってそんなに強いの?」
それからぼくは茶トラ先生と空手の組手をやった。
何故だか分からないけれど、不思議なくらいに体が動いた。
茶トラ先生の突きやけりに、不思議なくらいに体が反応したんだ。
時にはぼくが知らないような技も自然に出て、何だかぼくは空手の達人にでもなったような気分にだった。
それで、夢中で練習していると午後三時が近づいた。
茶トラ先生は防具を取り、汗を拭いた。
「さすがゲシュタルト先生は寸止めをきちんと教えておられる。わしは防具を付ける必要などなかったわい。おお暑い暑い」
そしていよいよ決戦に出かける時間になった。
決戦と言っても、デビルはぼくがおとなしく金を払うという想定だろうけど。
ぼくから金をまきあげて、子分を引き連れて、ゲームセンターへでも行くつもりだろう。
だけど、そうはさせないぞ!
「もう、デビルの奴なんかコテンパンにのしてやる!」
ぼくがそう言うと、茶トラ先生はこんなことを言った。
「のしてはだめだ。奴の攻撃を受けるだけだ。そのためにわしはお前さんに内受け下段払いの練習ばかりをさせたのだ」
「え~!」
「とにかく! のしてはだめだ。もちろん怪我をさせることなど、もってのほかだ」
「でも…」
「分かったな」
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「わかったな!」
「…分かったよ。デビルに怪我をさせてはいけないんだね」
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