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病院にて
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それから茶トラ先生はアポを取るために病院に電話をしたが、幸い主治医の先生はその日の夕方に会ってくれるということだったので、さっそくぼくらは約束の時間の少し前に病院へ行き、待合室で待つことにした。
そしてしばらくすると、主治医の先生が出てきてぼくらはあいさつし、それから病院の応接室のようなところに案内された。
デビルは三十八歳の姿で、グレーのスーツを着ていたので、主治医の先生は彼のことを自分の患者さん、つまりデビルのお母さんの夫だと思っているようだった。
そして、茶トラ先生は親戚の人で、お医者さん。ぼくは何となくついてきた、デビルの甥っ子か何か、なんていう「設定」で、平和的な話し合いが始まった。
ただし茶トラ先生はよりによって「茶トラスーツ」なんかを着ていたので、主治医の先生は、うさんくさそうに茶トラ先生を見てはいた。
さて、それからぼくらは応接室で、主治医の先生から一通りの説明を受けた。
茶トラ先生はCTやMRIという体の内部が見える検査の画像や、切除標本(手術の時、デビルのお母さんから切り取ったがんの標本)の写真などをしげしげと見てから、得意の根掘り葉掘りの質問を始めた。
そして、茶トラ先生と主治医の先生との受け答えから、ぼくにも病状はおぼろげながら、想像が出来た。
やはりデビルのお母さんは、末期の膵臓がん、つまりとても重い膵臓がんだったんだ。
もう手の施しようもなく、あと一、二ヵ月の命だろうとも言われた。
それから、
「てめえ医者なんだろ。何とか母ちゃんを助けろよ。でないとてめえ絞め殺すぞ!」
なんてデビルが主治医の先生につめ寄る場面もあったが、
「まあまあまあまあ、ご主人おちついて」などと言いながら、茶トラ先生の意外な怪力が役に立ったりした。
いずれにしても話し合いはおおむね友好的な雰囲気の中で進んでいったんだ。
それから茶トラ先生が、
「あ~、もしよろしければ、CTとMRIの画像のディスクとか、カルテのコピーとか、それからその切除標本の実物なんかも、あ~、とにかく、あらいざらいの情報や資料などを、お渡しいただくわけにはいかないでしょうか」と言った。
すると主治医の先生は、
「さすがに、切除標本まで洗いざらいは無理です。一応、病院で保管しなければいけませんので…」
と言ったので、今度はデビルが、
「てめえ医者なんだろう。せつ、せつ、ええと何だっけ」
「ご主人、切除標本です。手術のときに取り出したものですよ」
(茶トラ先生の助け舟)
「だから、ととととにかくそれまで洗いざらい出せ! でないとてめえしめ殺すぞ」
と言ったら、主治医の先生が、
「やはりダメです!(キリッ!)」
と言い返した。
すると茶トラ先生が、
「あ~、渡していただかないとわれわれも困るのです。さあ、この際あらいざらい出してもらいましょうか!」
と、かなりこわい感じで言った。
すると主治医の先生もかなりおこった表情で、
「あなた、いい、いったい何の権限でそんなことを言うのですか!」
と言ったので、茶トラ先生は、今度はなぜかとてもおだやかな言い方で、
「それでは仕方がありませんね。あまりこういう手荒なまねはやりたくなかったのですけどね…」
とか言って、ポケットからいきなり鉄砲を取り出し、主治医の先生に向けた。
「なななな…、何ですか!いいいい一体どういうおつもりですか?」
「ご覧のとおりです。いひひひひ」
「わわわわわわ、分かりました。切除標本でも何でも…、ありゃりゃ、それ水鉄砲じゃないですか」
「たしかに水鉄砲です。だが、中に入っている液体を何だとお思いで?」
「あ、その色は!」
「お察しの通り、私のオシッコです。先ほど病院のトイレで採取したばかりの」
「もう分かりました。洗いざらいお渡しいたしますから、どどどどど、どうかオシッコをかけるのだけはごかんべんを。白衣にオシッコをかけられたら、黄色いシミになって、私がおしっこをちびったと皆から笑われます!」
「分かりました。おしっこはかけません。その代り洗いざらい…」
「はいはいはいはい。ただし、資料の個人情報は消させていただきますよ。もし外部に漏れると大変です。私の責任問題になります」
「それはご自由に」
それから、ぼくらはたくさんの資料を持ち、茶トラ先生のポンポロポンのボロ車で病院を後にした。
ちなみに、その切除標本は主治医の先生が「医局花見用」と書いてあるアイスボックスに入れてくれたので、それを受け取った。
「それにしても茶トラ先生、どうやっておしっこを水鉄砲に入れたの? 器用だね」
「これは、病院の待合室で買った『濃い茶お~い、お茶』だ。体脂肪を減らすんだ」
「そうなんだ」
「だいたい小便とお茶の見分けも付かねえなんて、とんでもねえやぶ医者だぜ」
「いやいや田中君、あの人はやぶ医者じゃないぞ。きちんと診断し、治療もやっておられるようだった」
それからぼくらは茶トラ先生の家に着いた。
「ねえ、こんなにたくさんの資料を持って帰って、これから一体どうするの?」
「これらの資料や標本を元に、今から治療法を開発する」
「だけど茶トラ先生、さっきの医者は、現代のどんな治療法でも母ちゃんを助けることは不可能だと言っていたぜ」
「現代の治療法ではね」
「そうだよ。だけど、ぼくらにはタイムエイジマシンがあるんだよ」
「とにかくこれからわしらは、田中君のおふくろさんの治療法を考えるから、君は帰っておふくろさんの看病をしっかり頼むよ」
「分かったよ先生。イチロウも、しっかり開発するんだぞ。頼んだからな」
それからデビルはタイムエイジマシンで小学生に戻り、自分の服を着て帰っていった。
そしてしばらくすると、主治医の先生が出てきてぼくらはあいさつし、それから病院の応接室のようなところに案内された。
デビルは三十八歳の姿で、グレーのスーツを着ていたので、主治医の先生は彼のことを自分の患者さん、つまりデビルのお母さんの夫だと思っているようだった。
そして、茶トラ先生は親戚の人で、お医者さん。ぼくは何となくついてきた、デビルの甥っ子か何か、なんていう「設定」で、平和的な話し合いが始まった。
ただし茶トラ先生はよりによって「茶トラスーツ」なんかを着ていたので、主治医の先生は、うさんくさそうに茶トラ先生を見てはいた。
さて、それからぼくらは応接室で、主治医の先生から一通りの説明を受けた。
茶トラ先生はCTやMRIという体の内部が見える検査の画像や、切除標本(手術の時、デビルのお母さんから切り取ったがんの標本)の写真などをしげしげと見てから、得意の根掘り葉掘りの質問を始めた。
そして、茶トラ先生と主治医の先生との受け答えから、ぼくにも病状はおぼろげながら、想像が出来た。
やはりデビルのお母さんは、末期の膵臓がん、つまりとても重い膵臓がんだったんだ。
もう手の施しようもなく、あと一、二ヵ月の命だろうとも言われた。
それから、
「てめえ医者なんだろ。何とか母ちゃんを助けろよ。でないとてめえ絞め殺すぞ!」
なんてデビルが主治医の先生につめ寄る場面もあったが、
「まあまあまあまあ、ご主人おちついて」などと言いながら、茶トラ先生の意外な怪力が役に立ったりした。
いずれにしても話し合いはおおむね友好的な雰囲気の中で進んでいったんだ。
それから茶トラ先生が、
「あ~、もしよろしければ、CTとMRIの画像のディスクとか、カルテのコピーとか、それからその切除標本の実物なんかも、あ~、とにかく、あらいざらいの情報や資料などを、お渡しいただくわけにはいかないでしょうか」と言った。
すると主治医の先生は、
「さすがに、切除標本まで洗いざらいは無理です。一応、病院で保管しなければいけませんので…」
と言ったので、今度はデビルが、
「てめえ医者なんだろう。せつ、せつ、ええと何だっけ」
「ご主人、切除標本です。手術のときに取り出したものですよ」
(茶トラ先生の助け舟)
「だから、ととととにかくそれまで洗いざらい出せ! でないとてめえしめ殺すぞ」
と言ったら、主治医の先生が、
「やはりダメです!(キリッ!)」
と言い返した。
すると茶トラ先生が、
「あ~、渡していただかないとわれわれも困るのです。さあ、この際あらいざらい出してもらいましょうか!」
と、かなりこわい感じで言った。
すると主治医の先生もかなりおこった表情で、
「あなた、いい、いったい何の権限でそんなことを言うのですか!」
と言ったので、茶トラ先生は、今度はなぜかとてもおだやかな言い方で、
「それでは仕方がありませんね。あまりこういう手荒なまねはやりたくなかったのですけどね…」
とか言って、ポケットからいきなり鉄砲を取り出し、主治医の先生に向けた。
「なななな…、何ですか!いいいい一体どういうおつもりですか?」
「ご覧のとおりです。いひひひひ」
「わわわわわわ、分かりました。切除標本でも何でも…、ありゃりゃ、それ水鉄砲じゃないですか」
「たしかに水鉄砲です。だが、中に入っている液体を何だとお思いで?」
「あ、その色は!」
「お察しの通り、私のオシッコです。先ほど病院のトイレで採取したばかりの」
「もう分かりました。洗いざらいお渡しいたしますから、どどどどど、どうかオシッコをかけるのだけはごかんべんを。白衣にオシッコをかけられたら、黄色いシミになって、私がおしっこをちびったと皆から笑われます!」
「分かりました。おしっこはかけません。その代り洗いざらい…」
「はいはいはいはい。ただし、資料の個人情報は消させていただきますよ。もし外部に漏れると大変です。私の責任問題になります」
「それはご自由に」
それから、ぼくらはたくさんの資料を持ち、茶トラ先生のポンポロポンのボロ車で病院を後にした。
ちなみに、その切除標本は主治医の先生が「医局花見用」と書いてあるアイスボックスに入れてくれたので、それを受け取った。
「それにしても茶トラ先生、どうやっておしっこを水鉄砲に入れたの? 器用だね」
「これは、病院の待合室で買った『濃い茶お~い、お茶』だ。体脂肪を減らすんだ」
「そうなんだ」
「だいたい小便とお茶の見分けも付かねえなんて、とんでもねえやぶ医者だぜ」
「いやいや田中君、あの人はやぶ医者じゃないぞ。きちんと診断し、治療もやっておられるようだった」
それからぼくらは茶トラ先生の家に着いた。
「ねえ、こんなにたくさんの資料を持って帰って、これから一体どうするの?」
「これらの資料や標本を元に、今から治療法を開発する」
「だけど茶トラ先生、さっきの医者は、現代のどんな治療法でも母ちゃんを助けることは不可能だと言っていたぜ」
「現代の治療法ではね」
「そうだよ。だけど、ぼくらにはタイムエイジマシンがあるんだよ」
「とにかくこれからわしらは、田中君のおふくろさんの治療法を考えるから、君は帰っておふくろさんの看病をしっかり頼むよ」
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それからデビルはタイムエイジマシンで小学生に戻り、自分の服を着て帰っていった。
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