タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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過去の茶トラ先生

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 それからぼくらはまたてくてくと歩いて、草スキー公園の坂を上ると、そこにはいつもと変わらない茶トラ先生の家があり、ぼくはとても安心した。
 そして何と茶トラ先生は、庭でぼろぼろの白衣姿で、何かの実験をしているようだった。
 そしてその実験は、ぼくには何となく見覚えがあり、それはずっと以前、ぼくの自転車が立ち往生し、ぼうぜんとそこに立ちつくしていたときに、茶トラ先生が庭でやっていたのと同じ実験だったのだ。
 だけどそのとき、一年前の「ぼく」が、立ち往生した自転車といっしょに突っ立っていたわけではなく、だからぼくは、あのときとはちがう「時」なのだろうと思った。
 そしてぼくは、シカトされてもダメ元と思っていたから、茶トラ先生の家の庭へ勝手に入り、勝手に先生の実験の手伝いを始めたんだ。
(茶トラ先生、どうかぼくをシカトしないでと祈りながら…)
 すると茶トラ先生は、
「おやおやお前さん、気が利くな。それじゃ、そこにおる大きな方の子も、こちら側を押さえてくれんか」
「茶トラ先生! ぼくのことわかる?」
「お前さん、わしの名前を知っておるのか?」
「もちろんだよ。ねえ茶トラ先生、ぼくたちが見えるの?」
「わしは歳は取ってはおるが、目の前にいるやつが見えないわけがない」
「そうだよね。見えるんだよね。だったら先生お願い、ぼくたちを助けて!」
「お前さんたちを助ける?」
 それからぼくらはこれまでの事情を全部説明した。
 タイムエイジマシンで、1年後の未来からやって来て、同級生たちにシカトされて、ここまでてくてくと歩いて来て…
 だけどさすがは茶トラ先生だ。
 ぼくらがそういう空想みたいな話をしても、落ち着いて聞いてくれて、そして、
「そうか。お前さんたちは、わしが作った機械で未来からやってきたというのか」
「そうだよ!」
「で、お前さんたちのことが、ここにおる子供たちには、いやいや、おそらくほとんどの人たちからは見えないというのか」
「多分そうなんだ」
「だがわしだけは、お前さんたちが見えるのか?」
「そうみたい!」
「うーんそれは…、それはおそらく、うーん、それには大きな意味があるのだろう」
「大きな意味?」
「おそらく過去と未来の…、あ~、因果関係だ」
「因果関係?」
「なあ、インガカンケイって何だ?」
「それは過去がああなって、未来がこうなってという感じの関係だよ」
「ほう。小さいほうの子は分かっておるな。だいたいそういうことだ。まあともあれわしは、そんな大それた機械を作るのか? それはまたぶったまげたな」
「自分で作ったくせに! それに、ええと、これがその設計図だよ」
 それからぼくは、ここへ来る前の時代、つまり未来に茶トラ先生から受け取った、その簡単設計図の封筒をポケットから取り出し、先生に手渡した。
 すると茶トラ先生は、しばらくそれを食い入るように見てから、
「これは…、これはまちがいなくわしの字だ。しかもこれは、これは何と、タイムマシンの設計図だ! いやいや、タイムマシンだけではないぞ。つまりその、年齢が…」
「だからこれ、タイムエイジマシンっていうんだよ。茶トラ先生が作ったんだよ」
「タイムエイジマシン?」
「これは証明写真の機械をベースに作ったんだ。そしてその、おあつらえ向きの証明写真の使い古しが、近くの廃棄物処理場に転がっているんだ!」
 それからぼくらは茶トラ先生のボロ自動車で、その廃棄物処理場へと向かった。
 そして雑然と置いてある、いろんな冷蔵庫やテレビや自動販売機や、そんなガラクタの中から、ぼくらが未来からやってきた証明写真の機械、つまりタイムエイジマシンを見つけると、それを茶トラ先生に教えてあげた。
 茶トラ先生はしばらくそれをしげしげとながめ、しばらく考え込んで、そして、「こんなものがタイムマシンになるのか」と言った。
 それでぼくは「タイムマシンではないよ。タイムエイジマシンだよ」と言ってやったら、茶トラ先生は、「ともかくこれを引き取ろう」と言いだした。
 それからぼくらは、その廃棄物処理場の一角にある、事務所らしい小さなプレハブを見付けると、そこにいた人に茶トラ先生が、その証明写真の機械を引き取りたいと言った。
 するとその人はけげんな顔をしながら、「いくら払いますか?」と言ったので、運送費込みでウン万円と茶トラ先生が言ったら、それなら喜んでと言って、それでその証明写真機をクレーン付きのトラックに積んで茶トラ先生の家まで届けてくれ、それからみんなで実験室までよいしょよいしょと運んだ。
「とにかくお前さんたちが未来へ帰るために、お前さんからもらったこの設計図をたよりに、そのタイムエイジマシンとやらを作らんといかん」
「何かの映画みたいだね」
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