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シカトって?
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買い物から帰り、茶トラ先生の実験室で、ぼくらがあちこちでシカトされたり、されなかったりという話をしていたら、茶トラ先生が「シカト」という言葉について、意味深い話をしてくれた。
「シカトというのは、もともと花札の十月の絵柄で、それは鹿の十月、つまり「シカのトウ」呼んでおったのだが、じつはその鹿がそっぽを向いておるんだ。そしてそれが転じて、『シカトウ』という言葉が出来て、それがそっぽを向くとか、無視するという意味になっていったんだ。そしてそれは賭博をやる者の間で広がり、やがて不良少年の間で広がり、そしてそれは『シカト』という言葉になり、それから現在では、一般の人も使うようになったんだ」
「へぇ~、茶トラ先生ってすご~く学があるんだね。で、賭博も名人なの?」
「わしはギャンブルには一切興味ない。興味があるのは科学だけだ」
「そうだよね」
「ところでさぁ、じゃ、おれって不良少年か?」
「ちがうよ。田中君はぼくの親友だよ」
「親友? そういってもらうとうれしいぜ! じゃ静香ちゃんもおれの親友になってくれるのかな?」
「さっき静香ちゃん、シカトしなかったしね。微妙だったけどさ」
「あ~、その静香ちゃんとやらが微妙なのはさておいて、しかし、わしとホームセンターのレジの人以外の誰もが、お前さんたちをシカト…、つまり無視するという現象は、大変興味深いものだ」
「大変興味深いの? ぼくら大変深刻なんだけど」
「そうだな。大変深刻だな。わしはお前さんたちに軽率な言い方をした」
「大丈夫だよ。気にしないで。で?」
「で、あ~、つまり未来からやってきたお前さんたちは、一部を除いて、このわしがいる、つまりお前さんたちから見た過去の世界に、いかなる影響も与えることが出来ないようになっておるのだろう」
「イカ天の店員がシカトしたから、おれら、中華どんぶり食えなかったしな」
「たしかに中華どんぶりを食べるという行動も、たとえ小さな行動ではあったとしても、過去に何らかの影響を与える可能性がある」
「本当は食べる予定だった人が食べられないとか?」
「おおまかにはそういうことだ。つまりこれらの現象は、過去は変更できないという証拠なのだ」
「ええと、その、過去が変更できないって話、タイムエイジマシンを作ったあとの茶トラ先生も言っているよ。茶トラ先生ったら、三日前に戻ってバットで自分を殴り殺したんだ!」
「なんだって?」
「いやいや、冗談さ。で、やろうとしてもうまくいかなかったんだとさ」
「そうか、つまりそれは、自然が過去を『書込み禁止』にしているのだな」
「その話も茶トラ先生、言ってるよ」
「わかったわかった。お前さんはわしの未来を知っておるのだ。お前さんにはかなわん」
「だけど不思議なのは、茶トラ先生とホームセンターの人だけ、いやいや、静香ちゃんもだけど、それらがおれたちをシカトしねえってことだよな。それってどうしてなんだ?」
「そうだ。そこが重要なんだ…」
それからそのことについて、しばらく三人で話し合った。
きちんと結論は出なかったけど、少なくとも「タイムエイジマシンを作る」という、この世界から見た「決まった未来」と関係のある人だけはシカトしない。
それは理屈に合うのかもしれない。
つまり「タイムエイジマシン」が出来るという、決まった未来に向けて、ぼくらが茶トラ先生に働きかけている。だから茶トラ先生はぼくらをシカトしない。
そしてホームセンターで買ったカーテンやランプだって、タイムエイジマシンに必要なものだ。
だからレジの人はぼくらをシカトしない。
そう考えるとつじつまが合う…、のかもしれない。
だけど静香ちゃんについては見当もつかなかった。
とにかく静香ちゃんは、深い謎に包まれていたんだ。
「シカトというのは、もともと花札の十月の絵柄で、それは鹿の十月、つまり「シカのトウ」呼んでおったのだが、じつはその鹿がそっぽを向いておるんだ。そしてそれが転じて、『シカトウ』という言葉が出来て、それがそっぽを向くとか、無視するという意味になっていったんだ。そしてそれは賭博をやる者の間で広がり、やがて不良少年の間で広がり、そしてそれは『シカト』という言葉になり、それから現在では、一般の人も使うようになったんだ」
「へぇ~、茶トラ先生ってすご~く学があるんだね。で、賭博も名人なの?」
「わしはギャンブルには一切興味ない。興味があるのは科学だけだ」
「そうだよね」
「ところでさぁ、じゃ、おれって不良少年か?」
「ちがうよ。田中君はぼくの親友だよ」
「親友? そういってもらうとうれしいぜ! じゃ静香ちゃんもおれの親友になってくれるのかな?」
「さっき静香ちゃん、シカトしなかったしね。微妙だったけどさ」
「あ~、その静香ちゃんとやらが微妙なのはさておいて、しかし、わしとホームセンターのレジの人以外の誰もが、お前さんたちをシカト…、つまり無視するという現象は、大変興味深いものだ」
「大変興味深いの? ぼくら大変深刻なんだけど」
「そうだな。大変深刻だな。わしはお前さんたちに軽率な言い方をした」
「大丈夫だよ。気にしないで。で?」
「で、あ~、つまり未来からやってきたお前さんたちは、一部を除いて、このわしがいる、つまりお前さんたちから見た過去の世界に、いかなる影響も与えることが出来ないようになっておるのだろう」
「イカ天の店員がシカトしたから、おれら、中華どんぶり食えなかったしな」
「たしかに中華どんぶりを食べるという行動も、たとえ小さな行動ではあったとしても、過去に何らかの影響を与える可能性がある」
「本当は食べる予定だった人が食べられないとか?」
「おおまかにはそういうことだ。つまりこれらの現象は、過去は変更できないという証拠なのだ」
「ええと、その、過去が変更できないって話、タイムエイジマシンを作ったあとの茶トラ先生も言っているよ。茶トラ先生ったら、三日前に戻ってバットで自分を殴り殺したんだ!」
「なんだって?」
「いやいや、冗談さ。で、やろうとしてもうまくいかなかったんだとさ」
「そうか、つまりそれは、自然が過去を『書込み禁止』にしているのだな」
「その話も茶トラ先生、言ってるよ」
「わかったわかった。お前さんはわしの未来を知っておるのだ。お前さんにはかなわん」
「だけど不思議なのは、茶トラ先生とホームセンターの人だけ、いやいや、静香ちゃんもだけど、それらがおれたちをシカトしねえってことだよな。それってどうしてなんだ?」
「そうだ。そこが重要なんだ…」
それからそのことについて、しばらく三人で話し合った。
きちんと結論は出なかったけど、少なくとも「タイムエイジマシンを作る」という、この世界から見た「決まった未来」と関係のある人だけはシカトしない。
それは理屈に合うのかもしれない。
つまり「タイムエイジマシン」が出来るという、決まった未来に向けて、ぼくらが茶トラ先生に働きかけている。だから茶トラ先生はぼくらをシカトしない。
そしてホームセンターで買ったカーテンやランプだって、タイムエイジマシンに必要なものだ。
だからレジの人はぼくらをシカトしない。
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