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事故当日
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それから約一ヵ月後。
その航空機事故の日時はタイムメールで正確に分かっていて、そしてその日はみんな、ぼくの家で待機していた。
ぼくとお父さんと(お父さんはうまいこと言って仕事を休んだ)、ヤス子ちゃんと、そしてデビル。
そしていよいよ、例のケイタイ無線機がブーと鳴り、それでみんなは茶トラ先生のガレージに集合した。
そこにはスワンボートと、それから2台のソラデンが置いてあった。
「知ってのとおり、イチロウ君の親父さんの助言で、ソラデンはもう一機製作してある。そしてこれら2機のソラデンにはヤス子ちゃんとイチロウ君が乗る」
「え~、茶トラ先生、ソラデン、イチロウじゃなくておれが乗りてえよ!」
「田中君がソラデン?」
「ああ、田中君だってソラデン乗るの上手だよ。ぼくと一緒に練習したし」
実は茶トラ先生は、お父さんの助言に基づいて、とか言って、ソラデンをもう一機作っていたんだ。
未来の茶トラ先生が予備のイオンエンジンの材料を二機分持ってきていたらしいので、もう一機のソラデンにそれを使ったらしいのだ。
また使い古しのエアロバイクをどこかから手に入れて、得意の魔改造をしたみたい。
それで、ぼくがそれに乗れるよう練習しに来いと、例のケイタイ無線機がぶーと鳴り、茶トラ先生のところへ向かっていたら、途中でデビルと出会い、それで二人で茶トラ先生のところへ行き、そして二人でかわるがわるソラデンの練習をしたんだ。
だからデビルもソラデンはばっちり乗れたので何の問題もなかった。
なんてったってあいつは、新しい自転車なんかには、すぐに乗りたがる奴だから…
それから茶トラ先生は話を続けた。
「それじゃ、もう一機のソラデンは、田中君に担当してもらう。あ~、ヤス子ちゃんは一号機、そして田中君が二号機だ」
「へへへ。やったぜ!」
たしかに二機のソラデンには、大きく1、2という数字が書いたステッカーが貼ってあった。
一号機、二号機というと、ぼくが替え玉で見事に墜落させたラジコンたちを一瞬思い出したけれど、それはどうでもいい。
茶トラ先生は、さらに話を続けた。
「それからもちろんわしはスワンボートに乗り、パイロットである親父さんもスワンボートに、そして貴重な動力源として、それじゃ、イチロウ君がスワンボートに乗ってもらうことにする」
それからぼくらは三機で出発した。
もちろんそれまでには茶トラ先生は旅客機救助のための準備を完璧に、そしていつものように手際よくやっているらしかった。
そしてスワンボートには、機長席に茶トラ先生、副操縦士席にお父さん、そして後ろの席にぼくが乗っていた。
もちろんぴゃーちゃんを50年後へ送ったときに取り外されていた後ろの座席とペダルは、また元通りに取り付けられていた。
それから、後ろの座席のぼくのとなりには、旅客機救助のためのアイテムが積んであった。
それは、茶トラ先生が実験なんかに使う真空ポンプだ。
なんのためかはさておいて…
それで、スワンボートはぼく一人がこいでも人工衛星速度が出せるし、そしてソラデンも同様の速度が出せたから、ぼくらが旅客機の事故現場付近へたどり着くのには5分ほどしか掛からなかった。
もちろん茶トラ先生は、未来の茶トラ先生からのタイムメールの情報を生かし、そしてスワンボートに積まれたナビゲーションも使い、旅客機の飛行しているルートへと近づいたんだ。
そしてその間、お父さんはパイロットの経験を生かし、地形なんかを見ながら茶トラ先生にいろいろアドバイスをして、そうしてぼくらは後ろから旅客機へ近づくことが出来た。
そしてそのとき、旅客機はトラブル発生前で、だから順調に飛行を続けていた。
だけど突然、旅客機はとても不安定な飛行を始めた。
それからお父さんは持っていた航空無線機のスイッチを入れ、周波数を合わせた。
すると、管制との緊迫した交信が聞こえてきた。
〈…メイデイ メイデイ メイデイ。トラブル発生。直ちに空港へ帰る事を要求する〉
〈了解、要求どおり承認する〉
とにかく旅客機は全くコントロールできない様子で、上下右左に揺れながら飛行を続けた。
そんな状況の中、パイロットは必死に飛行機を立て直そうとしていたが、
〈だめだ! 状況はどんどん悪くなっている…〉
「あれはあいつの声だ…」
それからお父さんはそうつぶやいた。
実はお父さんは、その事故機の機長と、パイロットの学校で同期だった。
そして茶トラ先生は言った。
「よし! 旅客機救援作戦を開始するぞ!」
そしていよいよ救助作戦へつづく
その航空機事故の日時はタイムメールで正確に分かっていて、そしてその日はみんな、ぼくの家で待機していた。
ぼくとお父さんと(お父さんはうまいこと言って仕事を休んだ)、ヤス子ちゃんと、そしてデビル。
そしていよいよ、例のケイタイ無線機がブーと鳴り、それでみんなは茶トラ先生のガレージに集合した。
そこにはスワンボートと、それから2台のソラデンが置いてあった。
「知ってのとおり、イチロウ君の親父さんの助言で、ソラデンはもう一機製作してある。そしてこれら2機のソラデンにはヤス子ちゃんとイチロウ君が乗る」
「え~、茶トラ先生、ソラデン、イチロウじゃなくておれが乗りてえよ!」
「田中君がソラデン?」
「ああ、田中君だってソラデン乗るの上手だよ。ぼくと一緒に練習したし」
実は茶トラ先生は、お父さんの助言に基づいて、とか言って、ソラデンをもう一機作っていたんだ。
未来の茶トラ先生が予備のイオンエンジンの材料を二機分持ってきていたらしいので、もう一機のソラデンにそれを使ったらしいのだ。
また使い古しのエアロバイクをどこかから手に入れて、得意の魔改造をしたみたい。
それで、ぼくがそれに乗れるよう練習しに来いと、例のケイタイ無線機がぶーと鳴り、茶トラ先生のところへ向かっていたら、途中でデビルと出会い、それで二人で茶トラ先生のところへ行き、そして二人でかわるがわるソラデンの練習をしたんだ。
だからデビルもソラデンはばっちり乗れたので何の問題もなかった。
なんてったってあいつは、新しい自転車なんかには、すぐに乗りたがる奴だから…
それから茶トラ先生は話を続けた。
「それじゃ、もう一機のソラデンは、田中君に担当してもらう。あ~、ヤス子ちゃんは一号機、そして田中君が二号機だ」
「へへへ。やったぜ!」
たしかに二機のソラデンには、大きく1、2という数字が書いたステッカーが貼ってあった。
一号機、二号機というと、ぼくが替え玉で見事に墜落させたラジコンたちを一瞬思い出したけれど、それはどうでもいい。
茶トラ先生は、さらに話を続けた。
「それからもちろんわしはスワンボートに乗り、パイロットである親父さんもスワンボートに、そして貴重な動力源として、それじゃ、イチロウ君がスワンボートに乗ってもらうことにする」
それからぼくらは三機で出発した。
もちろんそれまでには茶トラ先生は旅客機救助のための準備を完璧に、そしていつものように手際よくやっているらしかった。
そしてスワンボートには、機長席に茶トラ先生、副操縦士席にお父さん、そして後ろの席にぼくが乗っていた。
もちろんぴゃーちゃんを50年後へ送ったときに取り外されていた後ろの座席とペダルは、また元通りに取り付けられていた。
それから、後ろの座席のぼくのとなりには、旅客機救助のためのアイテムが積んであった。
それは、茶トラ先生が実験なんかに使う真空ポンプだ。
なんのためかはさておいて…
それで、スワンボートはぼく一人がこいでも人工衛星速度が出せるし、そしてソラデンも同様の速度が出せたから、ぼくらが旅客機の事故現場付近へたどり着くのには5分ほどしか掛からなかった。
もちろん茶トラ先生は、未来の茶トラ先生からのタイムメールの情報を生かし、そしてスワンボートに積まれたナビゲーションも使い、旅客機の飛行しているルートへと近づいたんだ。
そしてその間、お父さんはパイロットの経験を生かし、地形なんかを見ながら茶トラ先生にいろいろアドバイスをして、そうしてぼくらは後ろから旅客機へ近づくことが出来た。
そしてそのとき、旅客機はトラブル発生前で、だから順調に飛行を続けていた。
だけど突然、旅客機はとても不安定な飛行を始めた。
それからお父さんは持っていた航空無線機のスイッチを入れ、周波数を合わせた。
すると、管制との緊迫した交信が聞こえてきた。
〈…メイデイ メイデイ メイデイ。トラブル発生。直ちに空港へ帰る事を要求する〉
〈了解、要求どおり承認する〉
とにかく旅客機は全くコントロールできない様子で、上下右左に揺れながら飛行を続けた。
そんな状況の中、パイロットは必死に飛行機を立て直そうとしていたが、
〈だめだ! 状況はどんどん悪くなっている…〉
「あれはあいつの声だ…」
それからお父さんはそうつぶやいた。
実はお父さんは、その事故機の機長と、パイロットの学校で同期だった。
そして茶トラ先生は言った。
「よし! 旅客機救援作戦を開始するぞ!」
そしていよいよ救助作戦へつづく
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