タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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タイムエイジマシンの話題と船の話題

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 いつものように茶トラ先生の実験室で、先生とぼくとデビルの三バカトリオ(ぼくが勝手に付けた名前)でバカ話をしているはずだったが、たまにはまともな物理的な話もした。
「実はわしは最近、大発見をしたんだ」
「え~、どんな大発見?」
「知ってのとおり、タイムエイジマシンは、わしが骨になった、あの忌まわしい出来事以来…」
「あ! またその話題、自分から出してやんの!」
「自分で出す分には構わんと、わしはこの間、お前さんに明確に言ったぞ!」
「ああ、そうだったの」
「で、あ~、そのとき以来タイムマシンとエイジマシンが連動してしまい、場合によっては重宝だったりもしたが…」
「茶トラ先生が健診を受けたときだね!」
「まあそれもあるが、あ~、それで、不便なことも多々あった」
「それって、ええと、例えばヤス子ちゃんの猫のぴゃーちゃんを50年後の未来へ送るときに、厚さ30センチもの鋼鉄で、ええと、重さ6トンもの鋼鉄製の遮蔽が必要だったとかだね」
「そうだ。しかしそのような大掛かりな装置が必要ではあったものの、一応タイムマシンを作動させるに際し、エイジマシンの作用を止めることは可能となった」
「だけどそれって猫限定だよね。ハムスターとかドブネズミでもOKだろうけど」
「あ~、残念ながら確かにそうだ。遮蔽装置の厚さの関係で、猫くらいのサイズの生き物しか、エイジマシンの作用を止めることは、現状では出来ない」
「だけど『全く出来ない』から『猫限定』だったら、すごい進歩だよね」
「あ~、お前さんがそう言ってくれると、わしはありがたい。そしてだ!」
「で? 何かそれ以外にすごいこと発見したの?」
「あ~、実はエイジマシン同様、タイムマシンの作用を遮蔽できる、ある特殊な装置が、こともあろうに、すでに存在しておるということに、わしはつい最近気付いたのだ」
「え~、それって何?」
「あ~、実は、例の直下型大地震の際、タイムエイジマシンの電磁波で時を制御して、時の流れを遅くしたのであるが、わしらはそれから逃れるために、ある特殊な防護服を着た」
「ああ、あれね。目出し帽の付いてるやつね」
「で、実はあの防護服は、時の制御を行う電磁波を遮蔽するわけだが、実はタイムマシンの作用からも逃れられるということを、つい最近わしは発見したんだ」
「ええ、そうだったんだ」
「まあ考えてみると、タイムマシンも、時の制御の一つの形態であるから、理論的に考えると当前といえば当然だった。こういうのを灯台下暗しというのだ」
「そういうことって、以前あったじゃん。ええと、『タイムエイジマシンヒューズ事件』だよ。茶トラ先生は、『タイムエイジマシンは完全に壊れてしまったんだ!』なんて絶望的にいっちゃってさぁ、本当はヒューズが切れてただけなのに」
「思い起こせば、そういうこともあったな」

 そういうわけで、これで「タイムマシンのみ作動」と「エイジマシンのみ作動」ということが、一応可能になったんだ。ただし、「タイムマシンのみ」は猫限定だけど。
 だけどこれは、結構画期的なことだった。
 とにかくそんな話が一件落着して、そしてそして、これは考えられないことだけど、何とデビルがその後突然、茶トラ先生と結構ちゃんとした物理的な話を始めたんだ。
「…だから船の安定性に、バラスト水ってとても大切なんだよな」
 何とデビルは、ぼくが思いもしなかった、とても高等な物理的な話を…
「おれの父ちゃん船乗りだから、よくそんな話するんだ。ええとそれで、船の底に大量の海水をためておくんだ。それがバラスト水っていって、で、そうするとそれで船の重心が下がって、で、船がひっくり返らねえようになるんだぜ」
 するとデビルのそんな話に、茶トラ先生は待ってましたとばかりに反応した。
「あ~、一般に、船が旋回するときには、遠心力の作用で船はカーブの外側へ引っ張られる。そしてその力で船は外側へ傾くことになる。したがって下手をすれば船は転覆することになるのだ。だからそうならないために、すなわちそれを復元するために、船底に大量の水を積んでおくのだ。これは船舶関係者の間では、つとに有名な話だ」
「へぇー、ぼく知らなかったよ。で、田中君のお父さんって船乗りだったんだ」
「客船に乗ってて、時々しか家に帰らねえんだ」
「それはさびしいね」
「でも父ちゃんが帰ったとき、いろんな船の話してくれるんだ」
「そうなんだ」
「おれ、船、大好きなんだ。図鑑なんかでもいろいろ見てて、おれ、船のこと、結構詳しいんだぞ!」
「そうだったんだ。それは田中君の意外な趣味だったんだね。それってすごいじゃん」
「そうだ! おれ、いまから海へ行って船、豪快に見たくなったね。ねえ茶トラ先生、ちょっとソラデン、貸してくんない?」
「どこへ行くんだ?」
「おれ、発作的に船が見たくなったから、海へ行く」
「お父さんのこと思い出したのか?」
「まあね」
「べつにそれは構わんが。ただし、あまりおそくなるなよ」
「分かってるって。じゃ、イチロウは茶トラ先生と、高級なブツリの話でもやってなよ」
 そういうとデビルはさっさとガレージへ行き、半ば自分用と決めている、ソラデンの二号機で颯爽と出かけて行った。
 それからぼくはお菓子なんか食べながら、茶トラ先生とブツリ的な世間話をやった。
 で、食べながら飲みながら、しゃべりながら待っていたけど、それから何時間か過ぎても、デビルは帰ってこなかった。
 それで茶トラ先生は、デビルが迷子になったのではと心配を始めた。
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