タイムエイジマシン

山田みぃ太郎

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作戦開始!

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 それから茶トラ先生は、ワックスをかけているペテン師の背後から、へびのように近づいた。
 ええと、その前にハンカチにクロロ何とかを…
 そして茶トラ先生は得意技でがばっと…
 それから気合が抜けたペテン師を怪力でえっさほいさと運び、庭に駐機してあるスワンボートに乗せ、ぼくも乗り、速攻で実験室へ戻り、まだ気合の抜けているペテン師をささえながら、一緒に三人でタイムエイジマシンに入り、三十分ほど時間をさかのぼり、それからスワンボートで、速攻でデビル家の豪邸へと戻った。
 ややこしいけど。
 それまでの間ペテン師は、ときどき復活しようとして薄目を開けたが、そのたびに茶トラ先生がクロロ何とかハンカチをがばっと顔にかぶせ、またねんねさせているようだった。
 それから茶トラ先生は、またまたえっさほいさとペテン師を引きずり、豪邸の庭にこんもりと茂っている木の陰に隠した。
「わしはこの木の根元にひそみ、様子をうかがう。で、もうすぐペテン師がピンポーンとやってくるから…」
「え? ペテン師って、ここじゃん」
「もう一人おるのだ。三十分の時間差を持ったペテン師だ」
「へぇー、そうなんだ。よくわかんないけど」
「そのためにさっきタイムエイジマシンで三十分時間をさかのぼっただろうが」
「あれれ、ええと…」
「いいからいいから。ともあれ、あ~、お前さんはデビル君の家の中で、彼らといっしょに待機しろ」
 それでぼくらが待機していたら、(ややこしいけれど、そこにはぼくから見たら三十分未来のぼくも茶トラ先生いたけれど…、ああ! もうややこしい!)で、茶トラ先生の予言通り、ピンポーンとペテン師がやってきた。
 それでデビルのお父さんが玄関に出た。
 するとそのペテン師は早速、庭に置いてある外車を褒め始めた。
 まるで動画を再生するように…
「さすが田中さんはお目が高い。あれはポルシェの歴史的な名車ですね。あのお車を選ばれる方は、このあたりに住んでおられるセレブの方々でも、そうそうはおられませんよ。しかしあれを庭に置いておくのはもったいない。実は私は、高級車専用の特別なワックスを持っているのです。ええと、今、車から取ってきますので、何なら今から、私がワックスを…」   
 それからそのペテン師は自分の車へ戻り、そのワックスを持ってきて、早速デビルのお父さんのポルシェの方へと歩き始めた。
 その間、ぼくらはこっそりとそのペテン師のあとをつけていたけれど、ペテン師がポルシェに近づくと、何とすでに、もう一人のペテン師がポルシェにワックスをかけていた。
 このペテン師は30分の未来にいるペテン師だ!
 茶トラ先生がクロロ何とかでねんねさせて、スワンボートで運んで、タイムエイジマシンで…
 もちろんその直前に、庭のこんもりした木から引きずり出し、(多分)気付け薬できれいに復活させ、(多分)茶トラ先生が人を操るような言い方で、
「おまえさんはこれからあのポルシェにワックスをかけるのじゃ!」
なんて言っていたに違いない。
 それはいいけれど、とにかくデビルのお父さんのポルシェへと近づいたペテン師は、すでにポルシェにワックスをかけている「自分」を見てぶったまげてその場に凍り付き、そしてワックスをかけていた方のペテン師はというと、何となく気配を感じたのか、思わず振り返り、それで「二人の」ペテン師は互いに見つめ合い、それから二人とも「ぎゃ~~~~!」と悲鳴を上げ、そして豪快に気を失った。
 それから茶トラ先生は、ワックスをかけていた方の(三十分未来の)ペテン師をずりずりと引きずり、デビル家で飼っている大型犬の犬小屋へ放り込んだ。
 犬と同居させたのだ。
 そして迷惑そうな犬を横目に、ばっちりカギをかけて閉じ込めた。
 とりあえずここへ留置しておくらしい。
 それから何と突然、どういうわけか、物凄いおじいさん風の茶トラ先生がどこからともなく歩いてきた。
 仙人のような格好をしていて、もじゃもじゃのひげまで生やしていた。
「こちらにおわすわしは、タイムエイジマシンで別の時代から来られたわしだ」
「い、いったいいくつのわし?」
「115歳だ」
「ひえ~、で、こちらのわしは、いったい何をなさいに?」
「ちょっとばかりすることがあるのだ。で、そちらにおわすそのわしは、実はわしが手配したのだ」
 発狂しそうなくらいややこしかったけれど、とにかく茶トラ先生がそういうと、それから先生が「手配」した115歳の仙人のような茶トラ先生は、もう一人のペテン師に近寄り、その男を揺り起こすと、迫力のある声で何やら話し始めた。
「もしやお前さんは、たった今、まさにこのポルシェにワックスをかけておるところの、お前さん自身を見たのではないのか?」
 するとペテン師は怯えながら言った。
「そそそ…、そうです!」
 すると115歳の茶トラ先生は、
「しかして、その奇妙な現象とは、ドッペルゲンガー現象と申すのじゃ!」
「どどど、どっぺる…」
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