7 / 8
意外な助っ人登場
しおりを挟む
7
そういう訳でプレー再開。
ところがその四球目。
恵が三振を狙いシンカーを投げ、ショートバウンドとなった。
狙い通り。
バッターは空振り。
だがそのとき、悲劇は起った。
そのショートバウンドのボールが不手際の股間を襲ったのだ。
チン!
不手際はエビのように丸まって横たわり、痛みに打ち震えていた。
すかさず歩み寄った恵は、顔を真っ赤にし、不手際に声をかけた。
「あの…、大丈夫ですかぁ」
「♀→⤵⤴♂玉玉☆★!!!」
不手際は身をよじって苦しみながら、意味不明のことを念仏のようにつぶやいていた。
ちなみにバッターランナーは「振り逃げ」となり、一塁へ。
で、それから少しして、少しだけ我に返った様子の不手際に恵は、
「あの…、もうシンカーは、投げない方がいいですよねぇ…」
そこへ青木が、これまた痛い足腰を引きずりながら、ぴょこたんぴょこたんと歩み寄り、言った。
「バカ言っちゃぁいけねぇよ。シンカー投げなきゃ、恵ちゃんの持ち味を出せねぇじゃねぇか! 恵ちゃん、遠慮するこたぁねぇ。ばんばんシンカー投げとくれな」
それから不手際に向かって、
「やいやいおめぇも男だろ。『玉』の一つや二つどうってこたぁねぇ。いいかい、この腰抜け、気合を入れて玉…、じゃねぇ、球捕るんだ!」
で、再びプレー再開。
ところが股間の強烈な痛みに、もう豪快に恐怖心を植え付けられた不手際は、恵が次の玉、じゃない、次の球を投げるや、「わああああぁぁぁ!」と言って逃げ出してしまったのだ。
ボールはそのまま、どすんと審判のプロテクターに当たってポトリと落ちた。
振り逃げ出塁の一塁ランナーは二塁へ。
ところが審判は言った。
「ランナーは一塁へ戻りなさい!」
思い出していただきたい。野低人にはこのような「特典」があった。
ジャン!
3 野低人が捕手として出場した場合、ランナーは盗塁してはならず、パスボールでも進塁してはならない。
(この場合、パスボールというより、キャッチャーが逃げ出しただけであるが…)
ともあれそういうわけで、ランナー一塁でプレー再開。
で、恵は次の球を投げた。
だけど再び「わああああぁぁぁ」、どすん、ポトリ。
次の球を投げてもまた「わああああぁぁぁ」、どすん、ポトリ。
ところで考えていただきたい。
そもそもこのような「特典」を持つ野低人のキャッチャーの存在意義って?
いち早くそのことに気付いた審判は、不手際にこう言った。
「君はみぃ太郎君の後ろ辺りで守っていなさい。あの人は必ず後ろへ逸らすし、たとえ逸らさなかったとしても、今度は暴投するし」
そういうと審判は、そそくさとワイルドセブンベンチへ歩き、元気そうな若い衆にこう言った。
「あ~、悪いけど、ミット…、貸してくんないかな?」
「え?ミット?ああ…、いいっすよ。そこの予備のやつでいいっすか?」
ともあれそういう会話の後、審判はなぜか嬉しそうな顔をして、左手にミットをはめ、つかつかと歩いて来てホームベースの後ろに座り、右手を挙げ、そしてこう言った。
いや、こう叫んだ。
「プレイ!」
この日、審判の「リード」は冴えわたった。ちなみに不手際は審判の言いつけを守り、みぃ太郎の後ろで守った。何のことはない。すばる360は審判を含め10人で野球をやっていたのだ。
しかもその審判は高校野球でキャッチャーをやっていたような男だったものだから、一塁を離れ、ぽかぁ~んとしているランナーを目ざとく見つけるや、矢のような送球でランナーを刺し、「アウト!」と宣告。ファウルフライが上がれば見事なダイビングキャッチを披露し、「アウト!」
挙句にはすばる360の攻撃時は、
「まぁまぁまぁまぁ、いいじゃないですか」とか言いながらちゃっかり打席に立ち、もちろんストライクボールの判定もしながら、それでも巧妙に打者有利な判定をしつつ、ちゃっかりとヒットを打ったりしたのだ。
だけどこの日、活躍したのは審判だけではなかった。
くしゃみだ。
それは6回の攻撃の時だ。相手投手の抜けたスローカーブがくしゃみの鼻に当たったのだ。
で、くしゃみは一塁へ。
しかもそこからがくしゃみの本領発揮だ。
前にも述べたけど、くしゃみは結構足が速いのだ。だからくしゃみは盗塁する気満々で、大きめにリード。と同時に、鼻にデッドボールを受けていた関係上、きわめてくしゃみが出やすい状態だった。
で、右投手だったし、肩越しにくしゃみのリードをうかがい、牽制しよっかなぁ(^^♪とか思っていた矢先、セットポジションのその投手の背後から、くしゃみはくしゃみの爆音と爆風を浴びせかけたのだ。
そのときのくしゃみの爆音…
それは河川敷の対岸にいた釣り人の耳にまで達したそうな…
で、そのとき、
「ボーク!」
威厳のある審判の声だった。
そもそもセットポジションの時、投手は1秒以上静止していなければならないにも拘らず、そのくしゃみの爆音に、思わず「およよ」と、よろけてしまったのである。
それでくしゃみは二塁への進塁を許された。そして再び、
「まぁまぁまぁまぁ、いいじゃないですか」と言いながら打席に入った審判が、センター前クリーンヒット。それでくしゃみは俊足を飛ばし、見事ホームに帰ってきた。
そしてその1点がものを言い、すばる360は8対7でワイルドセブンに勝利した。
それは5月31日の朝のことであった。
最終回「恵ちゃぁぁ~~~ん(´・ω・`)」へ続く
そういう訳でプレー再開。
ところがその四球目。
恵が三振を狙いシンカーを投げ、ショートバウンドとなった。
狙い通り。
バッターは空振り。
だがそのとき、悲劇は起った。
そのショートバウンドのボールが不手際の股間を襲ったのだ。
チン!
不手際はエビのように丸まって横たわり、痛みに打ち震えていた。
すかさず歩み寄った恵は、顔を真っ赤にし、不手際に声をかけた。
「あの…、大丈夫ですかぁ」
「♀→⤵⤴♂玉玉☆★!!!」
不手際は身をよじって苦しみながら、意味不明のことを念仏のようにつぶやいていた。
ちなみにバッターランナーは「振り逃げ」となり、一塁へ。
で、それから少しして、少しだけ我に返った様子の不手際に恵は、
「あの…、もうシンカーは、投げない方がいいですよねぇ…」
そこへ青木が、これまた痛い足腰を引きずりながら、ぴょこたんぴょこたんと歩み寄り、言った。
「バカ言っちゃぁいけねぇよ。シンカー投げなきゃ、恵ちゃんの持ち味を出せねぇじゃねぇか! 恵ちゃん、遠慮するこたぁねぇ。ばんばんシンカー投げとくれな」
それから不手際に向かって、
「やいやいおめぇも男だろ。『玉』の一つや二つどうってこたぁねぇ。いいかい、この腰抜け、気合を入れて玉…、じゃねぇ、球捕るんだ!」
で、再びプレー再開。
ところが股間の強烈な痛みに、もう豪快に恐怖心を植え付けられた不手際は、恵が次の玉、じゃない、次の球を投げるや、「わああああぁぁぁ!」と言って逃げ出してしまったのだ。
ボールはそのまま、どすんと審判のプロテクターに当たってポトリと落ちた。
振り逃げ出塁の一塁ランナーは二塁へ。
ところが審判は言った。
「ランナーは一塁へ戻りなさい!」
思い出していただきたい。野低人にはこのような「特典」があった。
ジャン!
3 野低人が捕手として出場した場合、ランナーは盗塁してはならず、パスボールでも進塁してはならない。
(この場合、パスボールというより、キャッチャーが逃げ出しただけであるが…)
ともあれそういうわけで、ランナー一塁でプレー再開。
で、恵は次の球を投げた。
だけど再び「わああああぁぁぁ」、どすん、ポトリ。
次の球を投げてもまた「わああああぁぁぁ」、どすん、ポトリ。
ところで考えていただきたい。
そもそもこのような「特典」を持つ野低人のキャッチャーの存在意義って?
いち早くそのことに気付いた審判は、不手際にこう言った。
「君はみぃ太郎君の後ろ辺りで守っていなさい。あの人は必ず後ろへ逸らすし、たとえ逸らさなかったとしても、今度は暴投するし」
そういうと審判は、そそくさとワイルドセブンベンチへ歩き、元気そうな若い衆にこう言った。
「あ~、悪いけど、ミット…、貸してくんないかな?」
「え?ミット?ああ…、いいっすよ。そこの予備のやつでいいっすか?」
ともあれそういう会話の後、審判はなぜか嬉しそうな顔をして、左手にミットをはめ、つかつかと歩いて来てホームベースの後ろに座り、右手を挙げ、そしてこう言った。
いや、こう叫んだ。
「プレイ!」
この日、審判の「リード」は冴えわたった。ちなみに不手際は審判の言いつけを守り、みぃ太郎の後ろで守った。何のことはない。すばる360は審判を含め10人で野球をやっていたのだ。
しかもその審判は高校野球でキャッチャーをやっていたような男だったものだから、一塁を離れ、ぽかぁ~んとしているランナーを目ざとく見つけるや、矢のような送球でランナーを刺し、「アウト!」と宣告。ファウルフライが上がれば見事なダイビングキャッチを披露し、「アウト!」
挙句にはすばる360の攻撃時は、
「まぁまぁまぁまぁ、いいじゃないですか」とか言いながらちゃっかり打席に立ち、もちろんストライクボールの判定もしながら、それでも巧妙に打者有利な判定をしつつ、ちゃっかりとヒットを打ったりしたのだ。
だけどこの日、活躍したのは審判だけではなかった。
くしゃみだ。
それは6回の攻撃の時だ。相手投手の抜けたスローカーブがくしゃみの鼻に当たったのだ。
で、くしゃみは一塁へ。
しかもそこからがくしゃみの本領発揮だ。
前にも述べたけど、くしゃみは結構足が速いのだ。だからくしゃみは盗塁する気満々で、大きめにリード。と同時に、鼻にデッドボールを受けていた関係上、きわめてくしゃみが出やすい状態だった。
で、右投手だったし、肩越しにくしゃみのリードをうかがい、牽制しよっかなぁ(^^♪とか思っていた矢先、セットポジションのその投手の背後から、くしゃみはくしゃみの爆音と爆風を浴びせかけたのだ。
そのときのくしゃみの爆音…
それは河川敷の対岸にいた釣り人の耳にまで達したそうな…
で、そのとき、
「ボーク!」
威厳のある審判の声だった。
そもそもセットポジションの時、投手は1秒以上静止していなければならないにも拘らず、そのくしゃみの爆音に、思わず「およよ」と、よろけてしまったのである。
それでくしゃみは二塁への進塁を許された。そして再び、
「まぁまぁまぁまぁ、いいじゃないですか」と言いながら打席に入った審判が、センター前クリーンヒット。それでくしゃみは俊足を飛ばし、見事ホームに帰ってきた。
そしてその1点がものを言い、すばる360は8対7でワイルドセブンに勝利した。
それは5月31日の朝のことであった。
最終回「恵ちゃぁぁ~~~ん(´・ω・`)」へ続く
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる