投げる/あり得ない理由で甲子園初登板を果たした僕、そしてその後の野球人生

山田みぃ太郎

文字の大きさ
19 / 43

第19話

しおりを挟む
19
 突然僕を呼び出すなんて一体何の話だろうと思っていたら、監督は突然、とあるとても地味な球団のスカウトの人の話を始めた。
 同じ高校だったとか、今はプロのどこのチームでスカウトをやってるとか、とてもいい人だからとか、いろいろと、だらだらと、延々と。
 だけどどうして監督は、突然僕を呼び出してまで、もったいぶったようにそんなスカウトの人の話をするのかなぁとか、僕は無邪気に思っていた。
 そしたら何でも僕が最初の甲子園で、みんなが緊張してストライクが入らなかったとき、僕が途中から出てきて飄々と投げ、結局無失点で強豪校打線を抑えてしまったあの試合を見て、「何という強靭なマインドを持った子だ!」と感心したらしい。
 そのスカウトの人は、そのとき僕が登板した本当の、あのでたらめな理由も全く知らず、勝手に僕のことを誤解して買いかぶりまくり、注目し、それからたまに監督にも会いに来ていたらしいんだ。
 それから監督はそのスカウトの人に、僕を「放牧」したことやら、そして僕がとても頭のいい子だなんて嘘言って、だから今の僕のピッチングスタイルは、すべて僕自身が考え出したものであるんだとか、とにかくスカウトの人にはずいぶん尾ひれを付けて、僕を宣伝してくれていたらしい。
 もちろんその間も、そのスカウトの人は時々僕を見るために、試合に足を運んでいたらしいし、僕の成長を見守ってくれていたらしいんだ。
 その人はプロでは打者出身で、いぶし銀のような打撃をしていたそうなんだけど、僕得意の「一見大した球じゃなさそうなのに、実際は見かけ以上に速く、しかも手元で伸びる」という僕の投球の特性を一発で見抜き、そして自分が一番対戦したくないタイプの投手だとも思っていたそうだ。
 やっぱりプロのスカウトの人は、そういうところをきちんと見ているんだなって、僕は感心した。そして知らない間に、僕がスカウトの人に注目されていたことに、僕は驚いた。
 それから僕が、名実ともに怪我の功名で例のカーブ投げ始めた頃、あることを決意していたらしい。そしてその日、スカウトの人はその決意を監督に連絡してきたらしいんだ。
 つまり僕を、下位だけどドラフトで指名するということを!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...