投げる/あり得ない理由で甲子園初登板を果たした僕、そしてその後の野球人生

山田みぃ太郎

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第25話

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 高校時代の監督がメモ魔を発揮して作った、例の秘伝の投手育成プログラムを監督から一冊送ってもらって、どんなものかを詳しく説明して、そして、「これ、内緒ですからね」と念を押してから、コントロールに悩んでいた先輩に進呈したんだ。
 そしたら先輩は「ありがとう。参考にさせてもらうよ。これはノーコンと思われてた君が、あそこまで投げられるようになった記録なんだね」と言って、とても嬉しそうにそれを受け取ってくれた。
 それからあの先輩は誰かさんみたいに「上半身は水だ」とか、「上半身の勝手なんだ」とか言いながら、キャッチボールで調整したり、フリーバッティングなんかで外野で球拾いなんかして、そして捕ったり拾ったりしたボールを勢いよく、そしてのびのびと、球を集めるところへ投げ投げ返したりしているようだった。
 見事にワンバンで「バックホーム」してみたり、はては「レーザービーム」を披露したりもしていたし、もちろん遠投もずいぶんやっているみたいだった。何だか僕が高校で、野に放たれた直後みたいな行動だと思った。
 そして、めちゃくちゃなノーコンに苦しんでいた先輩だからこそ、僕のたどった道を通れば、またコントロールが復活するんじゃないのかな?って、思ったりもしたんだ。
 僕よりもずっと短い期間でね。
 そして先輩の投げている姿がだんだんと自然に、つまり無駄な力の入らない、彼本来のフォームに戻ってきているような気がしたし。
 気がしたというのは、彼本来のフォームを僕はよく知らなかったから。だけど見るからに自然ないいフォームになっているなと、僕は感じていたんだ。
 あの先輩は元々かなり完成した投手だろうし、自分のフォームさえ取り戻せば、ばりばりやっていけるだろうなとも思っていた。
 きっと復活すると信じていた。

 だけど僕はというと、ドラフト全球団最下位入団という非常に厳しい現状に置かれた現時点では、プロの投手以前の状態。投手の卵と考えたほうがいい。だからこれから長い長い道のりがあるはずだ。
 それで、プロに入ってからはトレーナーの指導の元で、いろんな場所の柔軟性を上げるトレーニングなんかから始めた。肩とか肩甲骨とか股関節とか。これで肩とか脚の動きがずいぶんスムーズになった気がした。
 それともちろん、インナーマッスル強化のためのチューブトレーニングは、高校時代からずっとやっていたし、それもせっせと続けた。
 それからあの理学療法士の人から習った、手首を柔軟にするトレーニングも続けていたし、手首を曲げたり伸ばしたりする筋肉の強化は、痛みの再発防止にもいいと言われていたから、鉄アレイなんかを使ってせっせとやっていた。
 ところで手首の柔軟性と筋肉の強化って、リリースする時にスナップが利いて、ボールに強いスピンを与えるのにはいいのかな♪なんて思ったりもした。もしかして、球も少しくらいは速くなるのかな? いやいや、球の速い遅いは気にしないんだったっけ。
 それで、球速を上げるための豪快な筋トレについては、球団のトレーナーの人は、
「お前はまだまだ育っている最中やけん、希望せんなら十分に育ってからでもよかぞ」とか言って、トレーナーは当面僕に、豪快な筋トレは免除してくれた。
 トレーナーの話では、豪快に筋トレをして、150キロ以上の球を投げる投手が、その後故障して、数年後にトミージョン手術を受けたとかいう恐ろしい話もあるそうで、だからトレーナーは、
「そういうわけで、今はまだ根性で豪快な筋トレは、やらんならやらんでもよか。これはわしだけの考えかも知れんばってんが、選手にはキャパシティーってもんがあって、それを越える球を投げようとするけん故障するとたい。だからお前さんにはそれくらいの球速が合うとるとかもしれんし、それで故障知らずで長持ちするのなら、良か話たい。無事こそこれ名馬って言うけんな。わっはっは。それにだいたいお前さんには、それ以外にもやるべきことがいっぱいあるとやなかか? わっはっは…」
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