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第29話
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僕の初登板。相手は独立リーグのチーム。
その頃までには一応、「投げる」以外の、つまりクイックやら牽制やら投内連携やらも、まあまあ最低限出来るようになっていたと自分では思っていたし。
つまりキャンプ初日に、二軍のピッチングコーチが言っていた、
(だからまずは、昨年の君のベストの投球が出来る状態にまで持って行ってもらおうと思う。もちろんプロとしての基本的なことをいろいろと覚える必要はあるだろうが、それをクリアしたらファームの試合で…」という条件は一応はクリア出来たんだと思う。試合で投げさせてもらえるんだから!
そのためにいろんな練習もしこたまやり、毎日関脇に習った四股もしっかり踏んでいたのだし。
それでその試合僕は先発で、最初のマウンドでの投球練習では、「暴投しなきゃ!」のおまじないのために、3球続けてわざとバックネットに豪快に暴投した。(あ~すっきりした♪)
もっともキャッチャーも僕のそういう「趣味」をとっくに知っていたから、にやにやしながら、わざとらしく肩をゆさゆさ動かしてみせて「リラックスリラックス」みたいにしていたけれど、しつこく4球目も続けると「いい加減にせい。俺にも捕らせろ!」と、少し怖い笑顔で言ったので、それから残りはまじめに投げて、だから投球練習の球筋もだんだんと安定した。
ちなみにそのキャッチャーは一年先輩で、それからもよく話をするようになったんだ。電気屋に勤めている高校の先輩のキャッチャーと同い年なんだなぁ、とか、感慨深かった。あの先輩どうしてるかな…
それで、僕にとって最初のプロのバッターは、僕の投球練習の「惨状」を見て、僕が本当に悲惨なノーコンだと信じていたみたい。だから少々怖そうに打席に立っていた。
そこで早速僕は、「お前、キャッチボールでもやってんのかい?」と言われそうな、思い切りゆったりとした力感のないフォームから入り、きっちり軸足で立ち、ステップし左足が接地したらいきなりぴゅっと腰をひねり、「水」の上半身はうまく連動して勝手に動き、腕がぶん!ときれいに振れ、そしてリリースの瞬間、指でピッっとボールをはじくと、(多分)130キロくらいの、いつもどおりの伸びのいいまっすぐが投げられた。
それはたしか、ストライクゾーンのアバウトな何処かへ着弾したのだけど、ボールはうまい具合に途中から加速し、(加速したように見えたはず)それで打者の反応はかなり遅れていて、そして思わずそれを見送った。
見送りワンストライク♪
僕の遅い球がそこそこ「速く」見えたんだ。一応納得。
それから2球続けて、内角の高めに豪快に抜けて打者をのけぞらせた。打者はむっとした表情を見せたけど、ごめんなさい。何分僕、まだコントロールの「責任者」じゃないし…
次は、例の怪我の功名カーブ(80キロ)を、打者のお尻を狙って投げた。もちろんボールは最初、打者の頭上を目指し、だから打者は身を縮めた。でも途中からきゅ~っと落ちながら曲がり、低めのストライクゾーンへ行き、もちろん打者はこの球も見送った。
多分僕がまた豪快に暴投をしでかしたと思っただろうね。(きっと…)
それで見送りツーストライク♪♪
そして最後は、ボールの少し右をフォーシームで握り、つまり地味にスライドする球(125キロくらい?)を投げたら、何せその前の80キロカーブとの速度差がものをいい、それで振り遅れ気味にバットを出し、うまく当てられたけれど、地味にスライドしていたから微妙にバットの先で、それは平凡なセカンドゴロになった。
やった♪♪♪ プロ最初の奪アウト!
なんたって前の遅いカーブが効いていたし、それに打者はまだ僕がノーコンだと信じ込んでいたから、基本的に腰が引けていたし。
それに木のバットはボールが芯に当たらないと、なかなかいい当たりにはならない。それも「打たせて取る」僕のピッチングには有利に働いたみたい。
だけど現実はそう甘くはなかった。
まず、僕が本当は、それほどのノーコンではないとばれたこともあるし、独立リーグとはいえ、プロのバッターはきわどい球をきっちり見送ったり、何とかタイミングを合わせようとまっすぐに的を絞り始めたり、はたまた、せっかくアバウトなコントロールでコーナーに散ってくれた球を延々とファウルで粘られたり、そしてせっかく芯を外して詰まらせても、力で持っていかれて結構飛ばされたり、はたまたポテンヒットになったりで、結構塁に出られたんだ。
やっぱり一筋縄ではいかなかった。
それからランナーが出るとバントされ、で、サルになって拾ってからえいや!って第三のフォームでファーストへ投げて、何とかなったりならなかったり。一度は一塁線寄りのバント処理で、ランナーのお尻に見事命中させてしまったし。
「えいっ!」と縦に投げたボールが偶然シュートに化け、そしてランナーがちょうどいいあんばいの場所を、大きなお尻を振りながら走っていたからだ。(あとで謝りに行ったけど)
それから思わずクイックが疎かになって、豪快にモーション盗まれて盗塁されたり、そうかと思えば先輩のキャッチャーがキャノンで豪快に刺してくれたり。(頼もしい限り!)
だけどいずれにしてもいろいろかき回され、クイックや牽制もまだまだ経験不足で、試合中一瞬自分が行方不明になったり、そしてクイックで投げたときの球速も微妙に落ちていて、それを痛打されたり、とにかくいろいろいろいろいろいろ…
だから結局3回を投げて1点ずつ、合計3点を取られた。
で、しっかり課題は見付かった。
でも結構納得するところもあった。
緩いカーブとのコンビネーションが効果的で、打者の反応を見ると、ゆったりと投げ始める僕のまっすぐは、そこそこ差し込んでいたし。
スライダー、シュートで打たせて取るピッチングもある程度出来たし。
それに連打されて大量失点とか、フォアボールで自滅とかではなかったし。
だけど投内連携はまあ「もう少しがんばろうね」だな。ランナーに当てちゃったし。
クイックや牽制もまだまだ! これ、豪快に課題。特訓だ!
それと、クイックのときの球速に関しては、関脇に教えてもらった四股をもっとがんばるしかない。
とにかく二軍のピッチングコーチが予言していたとおり、いろいろ課題は見つかったので、全体練習と個人練習と特訓で、必死こいてレベルアップするしかない。
ともかく収穫のある初登板だったね。
僕の初登板。相手は独立リーグのチーム。
その頃までには一応、「投げる」以外の、つまりクイックやら牽制やら投内連携やらも、まあまあ最低限出来るようになっていたと自分では思っていたし。
つまりキャンプ初日に、二軍のピッチングコーチが言っていた、
(だからまずは、昨年の君のベストの投球が出来る状態にまで持って行ってもらおうと思う。もちろんプロとしての基本的なことをいろいろと覚える必要はあるだろうが、それをクリアしたらファームの試合で…」という条件は一応はクリア出来たんだと思う。試合で投げさせてもらえるんだから!
そのためにいろんな練習もしこたまやり、毎日関脇に習った四股もしっかり踏んでいたのだし。
それでその試合僕は先発で、最初のマウンドでの投球練習では、「暴投しなきゃ!」のおまじないのために、3球続けてわざとバックネットに豪快に暴投した。(あ~すっきりした♪)
もっともキャッチャーも僕のそういう「趣味」をとっくに知っていたから、にやにやしながら、わざとらしく肩をゆさゆさ動かしてみせて「リラックスリラックス」みたいにしていたけれど、しつこく4球目も続けると「いい加減にせい。俺にも捕らせろ!」と、少し怖い笑顔で言ったので、それから残りはまじめに投げて、だから投球練習の球筋もだんだんと安定した。
ちなみにそのキャッチャーは一年先輩で、それからもよく話をするようになったんだ。電気屋に勤めている高校の先輩のキャッチャーと同い年なんだなぁ、とか、感慨深かった。あの先輩どうしてるかな…
それで、僕にとって最初のプロのバッターは、僕の投球練習の「惨状」を見て、僕が本当に悲惨なノーコンだと信じていたみたい。だから少々怖そうに打席に立っていた。
そこで早速僕は、「お前、キャッチボールでもやってんのかい?」と言われそうな、思い切りゆったりとした力感のないフォームから入り、きっちり軸足で立ち、ステップし左足が接地したらいきなりぴゅっと腰をひねり、「水」の上半身はうまく連動して勝手に動き、腕がぶん!ときれいに振れ、そしてリリースの瞬間、指でピッっとボールをはじくと、(多分)130キロくらいの、いつもどおりの伸びのいいまっすぐが投げられた。
それはたしか、ストライクゾーンのアバウトな何処かへ着弾したのだけど、ボールはうまい具合に途中から加速し、(加速したように見えたはず)それで打者の反応はかなり遅れていて、そして思わずそれを見送った。
見送りワンストライク♪
僕の遅い球がそこそこ「速く」見えたんだ。一応納得。
それから2球続けて、内角の高めに豪快に抜けて打者をのけぞらせた。打者はむっとした表情を見せたけど、ごめんなさい。何分僕、まだコントロールの「責任者」じゃないし…
次は、例の怪我の功名カーブ(80キロ)を、打者のお尻を狙って投げた。もちろんボールは最初、打者の頭上を目指し、だから打者は身を縮めた。でも途中からきゅ~っと落ちながら曲がり、低めのストライクゾーンへ行き、もちろん打者はこの球も見送った。
多分僕がまた豪快に暴投をしでかしたと思っただろうね。(きっと…)
それで見送りツーストライク♪♪
そして最後は、ボールの少し右をフォーシームで握り、つまり地味にスライドする球(125キロくらい?)を投げたら、何せその前の80キロカーブとの速度差がものをいい、それで振り遅れ気味にバットを出し、うまく当てられたけれど、地味にスライドしていたから微妙にバットの先で、それは平凡なセカンドゴロになった。
やった♪♪♪ プロ最初の奪アウト!
なんたって前の遅いカーブが効いていたし、それに打者はまだ僕がノーコンだと信じ込んでいたから、基本的に腰が引けていたし。
それに木のバットはボールが芯に当たらないと、なかなかいい当たりにはならない。それも「打たせて取る」僕のピッチングには有利に働いたみたい。
だけど現実はそう甘くはなかった。
まず、僕が本当は、それほどのノーコンではないとばれたこともあるし、独立リーグとはいえ、プロのバッターはきわどい球をきっちり見送ったり、何とかタイミングを合わせようとまっすぐに的を絞り始めたり、はたまた、せっかくアバウトなコントロールでコーナーに散ってくれた球を延々とファウルで粘られたり、そしてせっかく芯を外して詰まらせても、力で持っていかれて結構飛ばされたり、はたまたポテンヒットになったりで、結構塁に出られたんだ。
やっぱり一筋縄ではいかなかった。
それからランナーが出るとバントされ、で、サルになって拾ってからえいや!って第三のフォームでファーストへ投げて、何とかなったりならなかったり。一度は一塁線寄りのバント処理で、ランナーのお尻に見事命中させてしまったし。
「えいっ!」と縦に投げたボールが偶然シュートに化け、そしてランナーがちょうどいいあんばいの場所を、大きなお尻を振りながら走っていたからだ。(あとで謝りに行ったけど)
それから思わずクイックが疎かになって、豪快にモーション盗まれて盗塁されたり、そうかと思えば先輩のキャッチャーがキャノンで豪快に刺してくれたり。(頼もしい限り!)
だけどいずれにしてもいろいろかき回され、クイックや牽制もまだまだ経験不足で、試合中一瞬自分が行方不明になったり、そしてクイックで投げたときの球速も微妙に落ちていて、それを痛打されたり、とにかくいろいろいろいろいろいろ…
だから結局3回を投げて1点ずつ、合計3点を取られた。
で、しっかり課題は見付かった。
でも結構納得するところもあった。
緩いカーブとのコンビネーションが効果的で、打者の反応を見ると、ゆったりと投げ始める僕のまっすぐは、そこそこ差し込んでいたし。
スライダー、シュートで打たせて取るピッチングもある程度出来たし。
それに連打されて大量失点とか、フォアボールで自滅とかではなかったし。
だけど投内連携はまあ「もう少しがんばろうね」だな。ランナーに当てちゃったし。
クイックや牽制もまだまだ! これ、豪快に課題。特訓だ!
それと、クイックのときの球速に関しては、関脇に教えてもらった四股をもっとがんばるしかない。
とにかく二軍のピッチングコーチが予言していたとおり、いろいろ課題は見つかったので、全体練習と個人練習と特訓で、必死こいてレベルアップするしかない。
ともかく収穫のある初登板だったね。
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