おもしろSFショート

山田みぃ太郎

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電動アシストブレイン(YouTube配信中) 

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「本当にこの機械を使うと、うちの息子の成績が伸びるざーますのね?」
「もちろんです。それで、この機械は耳の穴の中に入れて使います。補聴器みたいですが、超小型ですから外から見ても他人からは、まず気付かれません」
「そうざーますか。それで、補聴器のように耳に入れると、どうなるざーますの?」
「実はこの機械はこんなに小さくても、本当に凄い機能を持っているのです」
「と、申しますと?」
「お子さんの脳が活動すると、脳波が発生しますが、この機械はそれを検出します。そして脳波を検出するとそれを増幅し、そして特殊な電磁波に変換して脳に照射します」
「照射って、脳に悪影響はないざーますか?」
「増幅すると言ってもごく微弱な電磁波ですし、それと神経細胞は放射線にも強いですから、ほとんど害はありません」
「そうざーますか。それで?」
「それで、この機械が発する電磁波の作用で脳細胞が活性化されます。例えば数学の勉強をしていると、脳からは数学の脳波が出ますが、それを検出して機械が数学の電磁波を出します」
「数学の…、電磁波ざーますか?」
「そうです。そして数学の電磁波を照射された脳の、とりわけ数学に関する脳細胞がこの電磁波にシンクロして活発に活動を始めます」
「そうしますと?」
「この機械を使わないときと比べ、おおよそ2倍の、数学に関する脳細胞が活動します」
「はぁ~」
「つまり脳を使い脳波が出て、機械がそれを検出して電磁波を出し、それに脳細胞がシンクロして、そして脳の機能が上がるのです」
「ややこしくて何だかよくわかりませんが、それで、どのくらい上がるざーますか?」
「我々が行った実験では、おおよそ2倍になりました」
「まあ、2倍ざーますか」
「平たく言えば、知能指数が2倍になったと思っていただければ…」
「知能指数が2倍? それは素晴らしゅうございます!」
「言い換えるとこれは、電動アシスト自転車の『脳バージョン』です。電動アシスト自転車は、足の筋肉をアシストして2倍の力を出しますが、この機械は脳をアシストして2倍の脳力、つまりこれは知能指数倍増計画です! 私は嘘は申しません。わっはっは!」

 それでこのお母さんは、大きな声では言えないくらいの値段でその補聴器みたいな、そして、なにやら怪しげな「電動アシストブレイン」とやらを買った。
 だけどそれを使っても、息子の成績はさっぱり上がらなかった。
 それからしばらくして、そのお母さんは文句を言うため、息子を連れて再びやってきた。
「成績ぜ~んぜん上がらないざーます!」
「困りましたな。ところで君、勉強してるかい?」
「ぜんせんしてないブー」
「ぜんぜんしていない…、ええと、それじゃ何か考えているかい?」
「ぜ~んぜん、な~んにも、考えてないブー」
「何も考えていない? はぁ~ それじゃはっきり言って無理ですわ」
「無理?」
「何も考えなければ脳波は出ませんからね。だから脳波を増幅するも何も、ええと、電動アシスト自転車だってこがないと前に進まない訳で…」
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