おもしろSFショート

山田みぃ太郎

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激安トンカツ定食

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 トンカツ定食で、俺はこの前酷い目に遭った。
 俺は豚の世話なんかまっぴらだ!
 だけどトンカツ食べたいな♪と思って、ある晩、街を歩いていたらトンカツ屋があった。
 看板には「激安トンカツ定食」と書いてあり、可愛い子豚の絵なんかも書いてあり、何だか楽しそうな雰囲気だった。
 しかも看板には「養豚場から直接お客様へ」なんていう文言もあり、それが妙に俺の心に刺さり、それで俺は性懲りもなく、トンカツ屋へ入ることにした。

「いらっしゃいませ♪」
 清々しい女性の明るい声を聴きながら俺が店に入るとガラスケースの中には、豪快なトンカツ定食のサンプルがずらりと並んでいた。
 ジューシーでさくさくのでっかいトンカツ。
 ヒレカツにロースカツ。
 それとやっぱり、さくさくのキャベツ、赤出汁の味噌汁そして大盛りの飯! 見ているうちによだれが出てきた。
 それで俺はいちばん豪快そうな、「スーパーヒレカツ定食」に決めた。
 これが何と300円! 激安だ。

 それから俺が奥へ入ろうとすると、さっきの女性が、「こちらで券をお求めください」と言って、販売機を指差すので、俺は300円で、そのスーパートンカツ定食の券を買った。
 ちなみにその券は何故か普通の食券よりやや大きく、名刺くらいはあった。
 だけどこの店はそういう流儀なのだろうと深く考えず、それからその券を渡そうとしたら、その女性が、「券の表にサインをして下さい」と、不思議なことを言い始めた。
 だけどまあこの店はそういう流儀なのか、はたまたもしかすると会員制なのか、ともかく俺はあまり考えず、女性に渡されたボールペンで自分の名前を書いてから手渡すと、彼女はにこやかに「どうぞ奥へお入りください」と言った。

 それで俺が奥へ入ると、何故かそこは養豚場で、そこには青いツナギ服を着た屈強な男が数人立っていた。それを見て俺が唖然としていると、一番強そうな男が突然俺にこう言った。
「おらおら、ボサっとしてねえで、さっさと働け!」
「働く?」
「トンカツは豚の世話をしてからだ!」
「え、豚の世話?」
 その言葉に驚いた俺の様子を見て、男はドヤ顔で話を続けた。
「さっき契約書にサインしただろう!」
「契約書?」
「さっきお前が受付の娘に渡したやつだ!」
「あれは食券でしょう?」
「おめえ、目ぇ、見えとるのか? 眼科紹介したろか?」
 そういうと男は女性からその券を受け取り、それを虫眼鏡と一緒に俺に手渡した。
 するとそこには、虫眼鏡で見ないととても見えないような物凄く物凄く小さな文字で、こう書いてあったのだ。

「いいか、もう帰れねえからな!」
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