異世界転生無双短編集

山田みぃ太郎

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異世界転生したら豪快に運が悪くなる 其の1

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 俺は生まれつき運が悪くて、だから学校の成績もずっと豪快に悪くて、で、運悪く受験には失敗し、それで名前だけ書けば楽勝で合格する大学へ行って、そこは雨のように単位が降ってくるところだったので、運もへったくれもなく卒業できて、それからとりあえず就職したが、その会社が運悪く速攻で倒産し、で、それからレストランで働いたらいきなり運悪く食中毒騒ぎとやらで、そこも速攻で廃業になり、それで俺は家へ帰ってニートをやっていた。

 家では毎日毎日、ネトゲとか食っちゃ寝とかしてたが、ある日暇なとき俺は(いつでも暇だったが)ネット小説とやらを見付けた。

 それを読みふけっていると、「異世界へ行って転生したらそこで本気が出て無双出来る」という感じの小説が上位にズラリとあり、それで俺も異世界転生したいな~♪ なんて気楽に思っていた。

 それから俺は異世界転生にとても興味がわき、その類のネット小説を読みあさり、とうとう「異世界転生異世界転生異世界転生」と、毎日念仏のように唱えていたら、ある日突然、俺の目の前に、白髪で髭ぼうぼうの胡散臭そうな爺がやってきて、突然俺にこんな事を言った。

「お前さん、異世界転生してみたいのであろう?」
「は、はい!」
 俺は思わずそう答えた。
「まあお前さんが考えるように、異世界転生、すなわち生まれ変わって違う世界へ行けば、ラッキーな人生を送れるやも知れぬ」
「やもしれぬ?」
「場合によってはその異世界で無双出来て、リッチな生活を満喫出来るやも知れぬということじゃ」
「じゃ俺、異世界転生したら、ラッキーな人生が送れるってこと、ですかね」
「はっきり言ってそうじゃ。まあ確実にそうなるとは限らんが、そうなる可能性を含んではおるのじゃ」
「そうですか♪ じゃ、ぜひ!」

 気が付いたら俺は、その異世界とやらでコンビニの店員だった。
 で、転生すると人生は途中から始まるのかな? なんて俺は安直に考えた。
 そもそもその爺がラッキーな人生が送れると言っていたし、それで俺は期待に胸を膨らませ、そのコンビニのレジの仕事をやった。

 異世界転生すると人生は途中から送れるらしいが、かといって、そのコンビニでのレジの仕事は、何故かすいすいと出来た。

 何というか、中途採用の人生みたいなもんで、店の仕事はデフォルトで俺の中にインプットされているらしく、レジを打つだけじゃなく、不思議なことに、振込みとか、とにかく俺のやったことのないような、いろんなややこしい仕事もさくさくと出来た。

 だから俺は「ラッキー♪」と思いながら仕事をしていたら、その初日、コンビニの店長が店の外のごみ置き場を掃除してる最中、いきなりバックした車にはねられ大怪我をし、遅れてやってきた救急車に乗せられて病院へ旅立った。

 そしてその数時間後、俺が電子レンジで客のお弁当を温めていたら、そのお弁当が何故か突然大爆発し、で、店は大火事になり全焼し、それからオーナーがやってきて、「もう店は消滅したから」と言って、俺は豪快にクビにされた。
 それで俺は、「運悪りいな」と思って、それからアパートへ帰った。

 で、何故か俺のアパートは、その人生にデフォルトで付いているらしかったが、帰ってみると空き巣に入られていて、警察呼んだが、途中でパトカーがパンクしたとかで大幅に到着が送れ、やっと夜中にパトカーがやってきて、で、やってきた警官がとても要領悪そうに現場検証なんかやってたら、その警官が俺のアパートの敷居につまづいて転び、豪快に顔を打って大けがをした。

 それで救急車を呼んだら、途中でエンジンが故障したらしく、これまた到着が大幅に遅れ、で、その警官が病院へ運ばれ、代わりの警官がさらに要領悪く現場検証をやって、なんだかんで全部終わったら、明け方近くになっていた。

 それでアパートで寝て、で、昼過ぎに起きて、ぶらぶら歩いてたら宝くじ売ってて、で、「運試し」と宝くじを買って、数日ぶらぶらしてたら当選発表になり、ネットで見たら1万円当たってたので、俺はうはうはと売り場へ歩いて行った。

 だけど途中、ビルの谷間でビルの大風が吹き、当たり券がひらひらと飛んでいった。
 それで「この!」っと思いながら追いかけたら、途中でフタの開いたマンホールにドボンと落ちた。

 それでも根性でそこから這い上がり、さらに当たり券を追いかけたら、ちょうどヤクザ風のおっちゃんが拾っているところで、それで、「その当選券俺のです!」というと「やかましい! 俺んだ!」と言ってから、ぼこぼこにのされた。

 だけどそのおっちゃんも俺から立ち去る途中、俺の落ちたマンホールへドボンと落ち、あとはどうなったか分からない。

 それからというもの、勤める職場勤める職場、みな、いろんなくだらないアクシデントなんかで閉鎖したり倒産したり、しかも会社の人たちも何故か、事故に遭ったり突然病気になったりして酷い目に遭っていた。
 とにかくどういう訳か、ありとあらゆる不幸が続いたのだ。

 それだけじゃなく、それからその年は近年にない異常気象だとかで、ゲリラ豪雨や、はたまた超大型台風なんかがじゃんじゃん押し寄せて、各地で壊滅的な被害が出たり、異常といえば地震だって負けてはおらず、各地で直下型大地震も頻発した。

 あるときなんか、880ヘクトパスカルの猛烈な台風の暴風雨の最中、震度7の直下型大地震が発生したり…

 そんなこんなで俺は、限りなく廃墟と化したその街で、呆然と佇んでいた。
 転生するときデフォルトで付けてもらったアパートもすでに瓦礫と化し、そのときの俺には住む場所もなかった。

(それにしてもここは何という異世界なんだ…)

 俺はそう思い、そして俺は、あの白髪で髭ぼうぼうの胡散臭そうな爺を思い出していた。

〈まあお前さんが考えるように、異世界転生、すなわち生まれ変わって違う世界へ行けば、ラッキーな人生を送れるやも知れぬ〉

(くそったれ! 全然違うじゃねえか! このうそつき!)

 俺はそう思い、そして天気だけは珍しくまっとうだったその日、瓦礫を見つめながら呆然としていたら、あの白髪で髭ぼうぼうの爺よりは多少まっとうそうな、やっぱりどう見ても爺という感じの爺さんが「どろん!」という感じで俺の目の前に現れ、こう言った。

「この異世界はおそらく、全異世界中でも最大級に運が悪い異世界じゃ」

 其の2へつづく
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