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異世界転生したら豪快に運が悪くなる 其の完結
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其の3からの続きです
突然俺の目の前に、どろんと胡散臭そうで変な奴が現れたのだ。
「久しぶりじゃのう。お前さんはまだ生きておったのだな」
「生きて? はぁ~、かろうじて生きてます」
三日三晩歩きとおしていた俺は、かろうじてそう答えた。すると、
「実はわしは、お前さんの話を聞き、あれから数年間かけて…」
「数年間? まだあれからせいぜい三日くらいでしょう?」
「魔界と人間界では時の流れが全く違うのじゃ」
「全く違う? 時の流れが? はぁ、そうなんですか。で?」
「じゃからわしはあれから数年間を費やし、そして聞いて驚くな! 違法転生取締り局を立ち上げたのじゃ」
「違法転生…、あまり驚かないけど…」
「まあよい。実はわしは、魔界役所に長年勤めて、600歳で退職したと、お前さんに言っておったが、実は勤めておったのは転生課という部署じゃった。そこの次長だったのじゃ」
「次長? 転生課の…」
「そうじゃ。転生課じゃ。それで、このあいだわしがお前さんのケースを知るに至り、またわしは偶然に勤めておった転生課に、「や~、久しぶり!」という感じで久しぶりに行く機会もあり、そしてそこの連中にも話を聞くと、どうやらお前さんが遭ったような悪質な魔王による、極悪転生事例が多発しておるということを知ったのじゃ」
「極悪転生事例…」
「そうじゃ。じゃからこれはどうしても取り締まらんといかんと思い、転生課OBとして、そして魔王の端くれとして、わしの良心が行動を起こしたのじゃ」
「どんな?」
「じゃから役所のお偉方にも働きかけて、違法転生取締り局を立ち上げるべく動いたのじゃ。すなわち、異世界転生時の手数料には、法定手数料というものを作り、一律5%と決めたのじゃ。そしてそれに違反した魔王は逮捕され懲役刑に処される。そしてこれは、魔国会の審議および議決を経て、魔界の294578年度より試行されたのじゃ。これは大変な苦労だったのじゃ」
「そりゃまたご苦労様です。それと、大層大きな数字の年度なんですね」
「まあ、魔界は人間界とは歴史の桁が違う」
「桁が…、ああ、そうですか」
「そして聞いて驚くな! 実はお前さんを違法に転生させた魔王は、二人とも特定でき、逮捕され、すでに服役しておる。二人とも懲役300年じゃ」
「あらら」
「そして、喜べ! お前さんの運は全額返還される。しかもそれには20%の利息が付けられる」
「え! 本当ですか? それはありがとうございます!」
「ただし、実はあの小惑星落下に際し、お前さんは豪快にラッキーじゃった訳じゃが、あれはわしがお前さんの運をプロデュースしておったのじゃ」
「プロデュース?」
「いくらなんでも話が上手すぎるじゃろう。あんな奇跡が自然に起こってたまるものか! あれがもし自然現象であれば10億年に一度というレベルじゃろうて。わっはっは」
「10億年でわっはっは…」
「さすれば!」
「さすれば?」
「はっきり言って、お前さんに運を立て替えて、しかもわしがお前さんの運をプロデュースし、その詳細はまあよいではないか」
「はぁー」
「ともあれあれは、とてもじゃないがお前さんが持っておった1%の運で出来るような代物ではないのじゃ」
「はぁー」
「で、立て替えた分の運は返してもらう。ただしプロデュースに関するわしの手間賃はまけておこう」
「するとまた俺の運を全部?」
「わしがそのようなあこぎなことをする訳がない。利息分程度でよい。それでも実際は、わしとしては大赤字じゃ。考えてもみろ。あの小惑星の奇跡がどれ程のものかを」
「そんなに凄いんすか?」
「あそこまで運の良い事例は、地球の歴史の中でも数回しかおこらんじゃろうて。わっはっは」
「またわっはっは?」
「それでもお前さんに返還される運は、オリジナルのちょうど100%になる。まあそれなら文句はなかろう」
「元のオリジナルの運ですか。まあいいけど」
「そして何なら、お前さんはオリジナルの人生に逆転生すると良い。わしが見る限り、あの人生が一番良かったと思うが」
「逆転生? そしてオリジナルの人生…、う~ん、もしかしてそうかも」
「それじゃそうするか」
それから俺が気が付いたら、俺はとある市役所の土木課の職員で、係長だった。
確かに堅実な人生だ。
それで、いろんな知識はこれまたデフォルトて付いていた。
だから土木課の込み入った専門的な仕事もさくさくと出来た。
そもそも俺のオリジナルの人生だし。
それからしばらくして、とある部下が、とある市営地下鉄駅の設計図を持ってきて、確認して欲しいと言って来た。
それで、その設計図を見て俺はぶったまげた。
耐震強度が豪快に間違っていたのだ。
それから俺は、その部下と現地へ行ってみた。
するとこれまたぶったまげたことに、その場所は、俺が異世界で小惑星から身を隠した、まさにその場所だったのだ!
しかも設計図では、地下鉄駅の入り口の屋根の強度が、何と20倍も多かった。
つまり豪快な「過剰品質」だったのだ。
だけど俺は部下に言った。
「あ~、これでよい。この設計で施工するように」
俺は考えた。
この世界で万が一、小惑星が落下するような事態にでもなれば、ここへ逃げ込めばいいのだ。
異世界転生したら豪快に運が悪くなる 完
次の異世界へ
突然俺の目の前に、どろんと胡散臭そうで変な奴が現れたのだ。
「久しぶりじゃのう。お前さんはまだ生きておったのだな」
「生きて? はぁ~、かろうじて生きてます」
三日三晩歩きとおしていた俺は、かろうじてそう答えた。すると、
「実はわしは、お前さんの話を聞き、あれから数年間かけて…」
「数年間? まだあれからせいぜい三日くらいでしょう?」
「魔界と人間界では時の流れが全く違うのじゃ」
「全く違う? 時の流れが? はぁ、そうなんですか。で?」
「じゃからわしはあれから数年間を費やし、そして聞いて驚くな! 違法転生取締り局を立ち上げたのじゃ」
「違法転生…、あまり驚かないけど…」
「まあよい。実はわしは、魔界役所に長年勤めて、600歳で退職したと、お前さんに言っておったが、実は勤めておったのは転生課という部署じゃった。そこの次長だったのじゃ」
「次長? 転生課の…」
「そうじゃ。転生課じゃ。それで、このあいだわしがお前さんのケースを知るに至り、またわしは偶然に勤めておった転生課に、「や~、久しぶり!」という感じで久しぶりに行く機会もあり、そしてそこの連中にも話を聞くと、どうやらお前さんが遭ったような悪質な魔王による、極悪転生事例が多発しておるということを知ったのじゃ」
「極悪転生事例…」
「そうじゃ。じゃからこれはどうしても取り締まらんといかんと思い、転生課OBとして、そして魔王の端くれとして、わしの良心が行動を起こしたのじゃ」
「どんな?」
「じゃから役所のお偉方にも働きかけて、違法転生取締り局を立ち上げるべく動いたのじゃ。すなわち、異世界転生時の手数料には、法定手数料というものを作り、一律5%と決めたのじゃ。そしてそれに違反した魔王は逮捕され懲役刑に処される。そしてこれは、魔国会の審議および議決を経て、魔界の294578年度より試行されたのじゃ。これは大変な苦労だったのじゃ」
「そりゃまたご苦労様です。それと、大層大きな数字の年度なんですね」
「まあ、魔界は人間界とは歴史の桁が違う」
「桁が…、ああ、そうですか」
「そして聞いて驚くな! 実はお前さんを違法に転生させた魔王は、二人とも特定でき、逮捕され、すでに服役しておる。二人とも懲役300年じゃ」
「あらら」
「そして、喜べ! お前さんの運は全額返還される。しかもそれには20%の利息が付けられる」
「え! 本当ですか? それはありがとうございます!」
「ただし、実はあの小惑星落下に際し、お前さんは豪快にラッキーじゃった訳じゃが、あれはわしがお前さんの運をプロデュースしておったのじゃ」
「プロデュース?」
「いくらなんでも話が上手すぎるじゃろう。あんな奇跡が自然に起こってたまるものか! あれがもし自然現象であれば10億年に一度というレベルじゃろうて。わっはっは」
「10億年でわっはっは…」
「さすれば!」
「さすれば?」
「はっきり言って、お前さんに運を立て替えて、しかもわしがお前さんの運をプロデュースし、その詳細はまあよいではないか」
「はぁー」
「ともあれあれは、とてもじゃないがお前さんが持っておった1%の運で出来るような代物ではないのじゃ」
「はぁー」
「で、立て替えた分の運は返してもらう。ただしプロデュースに関するわしの手間賃はまけておこう」
「するとまた俺の運を全部?」
「わしがそのようなあこぎなことをする訳がない。利息分程度でよい。それでも実際は、わしとしては大赤字じゃ。考えてもみろ。あの小惑星の奇跡がどれ程のものかを」
「そんなに凄いんすか?」
「あそこまで運の良い事例は、地球の歴史の中でも数回しかおこらんじゃろうて。わっはっは」
「またわっはっは?」
「それでもお前さんに返還される運は、オリジナルのちょうど100%になる。まあそれなら文句はなかろう」
「元のオリジナルの運ですか。まあいいけど」
「そして何なら、お前さんはオリジナルの人生に逆転生すると良い。わしが見る限り、あの人生が一番良かったと思うが」
「逆転生? そしてオリジナルの人生…、う~ん、もしかしてそうかも」
「それじゃそうするか」
それから俺が気が付いたら、俺はとある市役所の土木課の職員で、係長だった。
確かに堅実な人生だ。
それで、いろんな知識はこれまたデフォルトて付いていた。
だから土木課の込み入った専門的な仕事もさくさくと出来た。
そもそも俺のオリジナルの人生だし。
それからしばらくして、とある部下が、とある市営地下鉄駅の設計図を持ってきて、確認して欲しいと言って来た。
それで、その設計図を見て俺はぶったまげた。
耐震強度が豪快に間違っていたのだ。
それから俺は、その部下と現地へ行ってみた。
するとこれまたぶったまげたことに、その場所は、俺が異世界で小惑星から身を隠した、まさにその場所だったのだ!
しかも設計図では、地下鉄駅の入り口の屋根の強度が、何と20倍も多かった。
つまり豪快な「過剰品質」だったのだ。
だけど俺は部下に言った。
「あ~、これでよい。この設計で施工するように」
俺は考えた。
この世界で万が一、小惑星が落下するような事態にでもなれば、ここへ逃げ込めばいいのだ。
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