異世界転生無双短編集

異世界転生の夢を叶えます

　異世界転生はファンタジーだったりゲームの世界だったり、とにかく「リアル」には実現不可能な筈である。
　しか～し！
　しかしおれは科学的に実現可能な「異世界転生」なるものを思いつき、それを長年研究をし、ついに実現し、本日ここに異世界転生の夢を叶える「異世界転生ショップ」なるものの開業にこぎつけたのだ。
　で、その肝となるのがこの「夢枕」という装置だ。
　実はおれは長年脳科学をばちくそ思い切り研究し、いろんな装置を使って脳の働きを徹底的に研究してきた。そうして「夢」についてのメカニズムも完全に解明した。
　実は夢という現象は、さまざまな記憶が脳内に湧き出てきて、それが現実の体験であるかのごとく感じられ、それは主にレム睡眠という睡眠中に発生する。
　それで、これまでいろんな人生経験を積んだ人に被検者になってもらい、いろんな記憶を装置に記録した。

　で、おれが開発した夢枕は、それから発する特殊な電磁波をその人の海馬その他に照射することより、脳内にさまざまな「記憶」を湧き出させる。
　そうすると様々な夢を自在にコントロールできるのだ。つまり、自由自在に思うがままの夢を見て頂けるのだ。
　しかも夢というのは、時間を超越したものなのである。
　どういうことかというと、たったの一秒ほどの時間で小一時間ほどの長さに感じる夢を見ることだってできるのである。
　どういうことか。
　人が死を覚悟した時、「パノラマ視」という現象が起こることがある。例えば高い所から転落して、落ちるまでに数秒しかないにもかかわらず、その間にその人のそれまでそ人生が、それはもう生まれてからこれまでの人生が「総集編」として見られるのである。
　そういう訳で、短時間で長い夢を見ることが出来る。すなわち、外部から客観的に見れば数分という時間で、その人の一生といえる時間継続する夢を見ることさえ可能なのだ。
　なぜそんなことが可能か？
　だからおれが夢枕をそういう風に作ったから。
　どうやって？　
　いやいや、それは企業秘密だってば！

　ともあれ、お客さんにはショップの一角にある簡易ベッドで夢枕を使い、数分間眠ってもらう。
　するとお客さんは夢を見る。
　その夢は、お客さんにとっては一生の長さ続く。
　どんな夢を見るのかって？
　それはこちらにもいろいろとデータがあり、つまりご希望の「人生」そのものを体験していただけるのだ。
　有名なスポーツ選手の一生もよし。IT企業を興し、サクセスストーリーを経験するもよし。
　とにかく何でもござれの夢、いうなればそれは一つの「人生」を経験できるのだ。
　これすなわち、異世界転生そのものではないか！

　どうです？　
　現在開店キャンペーン中で、一夢1万円のご奉仕中という、夢のような話です。
　どうぞお越しください♪