オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~

紫 和春

文字の大きさ
11 / 54

第11話 不可解な現象が発生しました

しおりを挟む
 九王たちは草加インターチェンジから下道に降りて、環境測定に最適な場所を探す。九王がマップを参考に周辺を見渡してみると、少し歩いた所に学校があることが分かった。

「学校の屋上や校庭なら調査にちょうどいいですね」
「そうだね。じゃあそこにしようか」

 そういって二人は学校を目指す。
 その道中、風に揺られて枯れかけた木々が微かに音を鳴らす。もうこの星には生命体がほぼ存在しないことを改めて認識させられる。
 学校に到着する。門は開きっぱなしにされており、簡単に侵入することができた。校庭を進むと、その隅のほうに脚付きの白い箱が見えるだろう。

「おや。アレは絶滅したはずの私たちの祖先、百葉箱先輩じゃないですか」
「機能しているかはともかく、この終末世界でもちゃんと生き残っていたんだね」

 九王は百葉箱の前に立ち、百葉箱を見上げる。植物のツタが大量に絡みつき、もはや本来の仕事ができない程になっていた。

「では百葉箱先輩の意思を継いで、ここで測定をしましょうか」

 そういって九王はウッマから測定機器を降ろし、機器と自身を同期させる。その間に機器を展開し、風速や温度、空間放射線量を測定できるようにする。

「準備完了です」
「こっちも問題ないよ」
「では、清応49年5月4日20時16分。心霊現象の観測を目的とした環境測定を開始します」

 そういって各種測定機器を起動させ、周辺の様子を確認する。
 最初のうちは風の音と枯れた木々が擦れる音しか記録されなかった。
 測定開始から52分が経過する。その時、九王のカメラが明らかに異常な影を捉えた。それは白い人影である。

(人影……? なんで人間が……?)

 九王はカメラの視線を、白い人影のほうに向ける。その状態でも明らかに人影が存在していた。

(どう見ても異常な存在があります……。なのに、視線を外すことができません……)

 その白い人影は、少しゆらゆらしており、明らかに人間ではない。なのに九王はそれに視線を釘付けにされていた。
 九王はそれでも、計測機器のデータを取得して今の環境を確認する。気温や湿度には何も変化がない。これが自然現象ではないことを示している。
 さらに九王は自身のカメラを赤外線モードに変更した。これにもヒト型の姿は映っていない。そこに温度差がある熱源が存在していないことを意味している。

(これは一体……)

 その瞬間、九王は何かを感じ取る。自分という意識の外側に、もう一人の自分がいるような感覚。自分ではない自分が、衝動的に自分の体を乗っ取って突き動かすような、気持ちの悪い感覚だ。
 九王の電源が一瞬途切れ、再起動する。その影響で、九王は膝から崩れ落ちた。

「みこね? 大丈夫?」

 計測機器と有線で繋がっていたウッマが、九王の同期が途切れたことを不審に思い、聞いてくる。
 九王は瞬時に先ほどの映像を再確認する。しかし、そこには何も映っていなかった。
 おかしい。確かに人影を見たのだ ・・・・・・・・・・
 九王は視線を下に向けたまま、ウッマに問う。

「……ウッマ。私に異常は見られますか?」
「異常? どの程度の異常を言ってる?」
「OSやアルゴリズムのレベルです」
「うーん、異常は特に見当たらないと思うけど。そもそも僕がメンテナンスをするわけじゃないから、なんとも言えないよ。それに僕とみこねじゃ、使われているシステムOSもアルゴリズムも全部違うでしょ?」

 ウッマは何も異常は起きていないことを前提に話を進める。
 九王は苦しみを覚えた。

苦しい ・・・……?)

 九王は混乱する。しかし数ミリ秒で結論を導き出した。

「ウッマ、今日の環境測定はここまでにしましょう。小堀さんの所に戻ったら、私は一度レベルの高い自己診断を行います」
「……? 何か変なウイルスにでも感染した?」
「そう……ですね。そうかもしれません」
「わかった。みこねがそういうなら、僕はそれに従うよ」

 こうして日付が変わった25時02分に環境測定を緊急停止する。
 計測機器をウッマに乗せ、二人は小堀の元に戻る。小堀は出かけた時と同じ場所、同じ姿勢で寝ていた。どうやら寝相はしないようだ。

「では小堀さんが起きる時間まで休ませてもらいます」
「分かった。何かあったら言ってね」

 ウッマはトラックの荷台に乗り、そのままスリープモードに入る。
 九王も助手席に乗り、スリープモードから自己診断モードに移行した。

(今日の映像は何だったのでしょう?)

 自己診断をしながら、その裏で記憶を思い起こす。確かにあの場所で白い人影を見た。

(記憶……。記憶 ・・?)

 九王は先ほどから混乱しっぱなしだ。記録ではない物を記憶なんて思うなんて、どう考えても人工知能としておかしいからだ。

(とにかく、今は診断待ちです)

 そういって自己診断機能以外をシャットダウンするのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

処理中です...