10 / 54
第10話 移動手段を確保しました
しおりを挟む
九王とウッマは、小堀がトラックを修理している横で一晩明かす。朝を迎える時には、小堀はとても清々しい顔をしていた。
「ふぅ。これで整備完了だ」
ガレージの前に、エンジンがかかったトラックが鎮座している。いつでも出発できるような状態だ。
「さて、道中でガソリンを補給しながら進むとしよう。これで移動が楽になる!」
小堀はかなり嬉しそうだ。
「そんなに嬉しいことなんですか?」
九王は小堀に聞く。
「当たり前だろ? そもそも俺の体は脳に糖などの栄養素を送る関係上、生物由来のエネルギーを燃料にしている。しかしトラックが主食とする化石燃料と比較すると、そのエネルギー密度は何倍もの差がある。俺がひいこら言いながら一日歩いた距離を、コイツはたったの100ccで走り切ったりする。それだけ俺の体は非効率で、コイツのエンジンは優秀ってことなんだ。だからコイツに移動のエネルギーを肩代わりさせる。その方が効率的だろ?」
「そのくらいのこと、分かりますよ」
「なら、喜んでいることくらいよく分かるだろ」
「いやぁ、そうはならないでしょう」
「これが人工知能の普通なのか……?」
そんなことを小堀はブツクサ言いながら、トラックに乗り込む。
「ちょっと待ってよ。僕はどこに乗ればいいんだい?」
ウッマが小堀に聞く。
「そりゃ荷台だろうよ。それ以外に場所があるとでも?」
「僕だけ吹き曝しじゃないか」
「文句言うならトラックには乗せられないよ」
「……むぅ」
ウッマも文句を言いながら、荷台へとヒョイと乗る。ウッマの体重でトラックの後輪が強く沈み込んだ。
「うわっ。お前体重いくつあんだよ」
「積載重量はオーバーしてないよ」
「そうかもしれねぇけど、お前結構重いぞ」
「もともと馬は重いでしょ」
そんな変な応酬をしている横で、九王はトラックの助手席に乗り込んだ。
「とにかく、出発するぞ」
小堀の運転で、一行は外環道を東に進んでいく。
しかし、道路は長年使われていなかった上、「100秒の沈黙」戦争時の瓦礫やら残骸やらが多く道路にあり、快適にドライブをさせてくれなかった。
「タイヤは新品の物に交換したが、このままじゃどこかしらでパンクするかもしれねぇぞ……」
小堀は慎重にハンドルを切りながら、ゆっくりとアクセルを踏んでいく。
結局、夜までに15kmほどしか進めず、草加インターチェンジ付近で一夜を明かすことになった。
「あのジャンクション辺りで一度環境測定を行うべきでしたね」
「目的地に着いたら、そのまま引き返すんだろ? その時でもいいじゃねぇか」
「いえ、こういう環境測定はある地点を何度も調べることで効果を発揮するのです」
「そういうもんかねぇ……?」
「そういうものなんだよ、小堀」
「今俺のこと呼び捨てにした? ねぇ?」
「ウッマとは馬が合わないんですね。馬だけに」
「九王君さ、それ面白くないよ?」
そんなことを言いつつ、小堀は運転席で食事を摂る。とは言っても、動植物の細胞を培養して一つに固めた、気色の悪いスティック状の栄養補給食だが。
「それ、どんな味がするんですか?」
「え? ゲボみたいな味がするけど?」
「ゲボみたいな味……」
「そもそも九王君は味って感じるのか?」
「不要な機能としてオミットされています」
「あー、まぁ環境測定用に製造されたロボットだからなぁ。味を感じる機能は当然カットされているよな」
そんなことを言いながら、小堀は4本の栄養補給食品を口に無理やり詰め込み、それを水と食用油とアルコールとその他少々を混ぜた特製の飲料水で流し込む。
「あー、マズかった。水くらい普通の渡してくれればいいのに」
小堀は運転席から降り、荷台に積んであった自分の荷物から小さな袋を取り出す。
どうやら寝袋のようだ。
「じゃ、俺は寝るから、お二人は自由に過ごしてくれ。明日は6時30分キッカリに起床する」
そういって小堀は寝袋に入ると、瞬時に眠りについた。
「……どうする?」
「せっかくですし、心霊現象の観測にでも入りましょうか」
九王は助手席から降り、高速道路の上に立つ。辺りは真っ暗で、雲のない空には薄い三日月が周囲を照らしていた。
ウッマも荷台から飛び降り、周囲の様子を伺う。
「この辺りは道路脇に外壁が立っているから、環境測定にはあまり向いてないようにも感じるね」
「では一度高速道路から降りますか?」
「そうだね。彼は置いていって大丈夫だろうし、もしものことがあれば起きると思うよ。根拠はないけど」
「その時は……、運がなかったことにしましょう」
小堀の扱いが雑な二人であった。
そうして二人は一度高速道路を降りて、環境測定に最適な場所を探す。
「ふぅ。これで整備完了だ」
ガレージの前に、エンジンがかかったトラックが鎮座している。いつでも出発できるような状態だ。
「さて、道中でガソリンを補給しながら進むとしよう。これで移動が楽になる!」
小堀はかなり嬉しそうだ。
「そんなに嬉しいことなんですか?」
九王は小堀に聞く。
「当たり前だろ? そもそも俺の体は脳に糖などの栄養素を送る関係上、生物由来のエネルギーを燃料にしている。しかしトラックが主食とする化石燃料と比較すると、そのエネルギー密度は何倍もの差がある。俺がひいこら言いながら一日歩いた距離を、コイツはたったの100ccで走り切ったりする。それだけ俺の体は非効率で、コイツのエンジンは優秀ってことなんだ。だからコイツに移動のエネルギーを肩代わりさせる。その方が効率的だろ?」
「そのくらいのこと、分かりますよ」
「なら、喜んでいることくらいよく分かるだろ」
「いやぁ、そうはならないでしょう」
「これが人工知能の普通なのか……?」
そんなことを小堀はブツクサ言いながら、トラックに乗り込む。
「ちょっと待ってよ。僕はどこに乗ればいいんだい?」
ウッマが小堀に聞く。
「そりゃ荷台だろうよ。それ以外に場所があるとでも?」
「僕だけ吹き曝しじゃないか」
「文句言うならトラックには乗せられないよ」
「……むぅ」
ウッマも文句を言いながら、荷台へとヒョイと乗る。ウッマの体重でトラックの後輪が強く沈み込んだ。
「うわっ。お前体重いくつあんだよ」
「積載重量はオーバーしてないよ」
「そうかもしれねぇけど、お前結構重いぞ」
「もともと馬は重いでしょ」
そんな変な応酬をしている横で、九王はトラックの助手席に乗り込んだ。
「とにかく、出発するぞ」
小堀の運転で、一行は外環道を東に進んでいく。
しかし、道路は長年使われていなかった上、「100秒の沈黙」戦争時の瓦礫やら残骸やらが多く道路にあり、快適にドライブをさせてくれなかった。
「タイヤは新品の物に交換したが、このままじゃどこかしらでパンクするかもしれねぇぞ……」
小堀は慎重にハンドルを切りながら、ゆっくりとアクセルを踏んでいく。
結局、夜までに15kmほどしか進めず、草加インターチェンジ付近で一夜を明かすことになった。
「あのジャンクション辺りで一度環境測定を行うべきでしたね」
「目的地に着いたら、そのまま引き返すんだろ? その時でもいいじゃねぇか」
「いえ、こういう環境測定はある地点を何度も調べることで効果を発揮するのです」
「そういうもんかねぇ……?」
「そういうものなんだよ、小堀」
「今俺のこと呼び捨てにした? ねぇ?」
「ウッマとは馬が合わないんですね。馬だけに」
「九王君さ、それ面白くないよ?」
そんなことを言いつつ、小堀は運転席で食事を摂る。とは言っても、動植物の細胞を培養して一つに固めた、気色の悪いスティック状の栄養補給食だが。
「それ、どんな味がするんですか?」
「え? ゲボみたいな味がするけど?」
「ゲボみたいな味……」
「そもそも九王君は味って感じるのか?」
「不要な機能としてオミットされています」
「あー、まぁ環境測定用に製造されたロボットだからなぁ。味を感じる機能は当然カットされているよな」
そんなことを言いながら、小堀は4本の栄養補給食品を口に無理やり詰め込み、それを水と食用油とアルコールとその他少々を混ぜた特製の飲料水で流し込む。
「あー、マズかった。水くらい普通の渡してくれればいいのに」
小堀は運転席から降り、荷台に積んであった自分の荷物から小さな袋を取り出す。
どうやら寝袋のようだ。
「じゃ、俺は寝るから、お二人は自由に過ごしてくれ。明日は6時30分キッカリに起床する」
そういって小堀は寝袋に入ると、瞬時に眠りについた。
「……どうする?」
「せっかくですし、心霊現象の観測にでも入りましょうか」
九王は助手席から降り、高速道路の上に立つ。辺りは真っ暗で、雲のない空には薄い三日月が周囲を照らしていた。
ウッマも荷台から飛び降り、周囲の様子を伺う。
「この辺りは道路脇に外壁が立っているから、環境測定にはあまり向いてないようにも感じるね」
「では一度高速道路から降りますか?」
「そうだね。彼は置いていって大丈夫だろうし、もしものことがあれば起きると思うよ。根拠はないけど」
「その時は……、運がなかったことにしましょう」
小堀の扱いが雑な二人であった。
そうして二人は一度高速道路を降りて、環境測定に最適な場所を探す。
0
あなたにおすすめの小説
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
名もなき民の戦国時代
のらしろ
ファンタジー
徹夜で作った卒論を持って大学に向かう途中で、定番の異世界転生。
異世界特急便のトラックにはねられて戦国時代に飛ばされた。
しかも、よくある有名人の代わりや、戦国武将とは全く縁もゆかりもない庶民、しかも子供の姿で桑名傍の浜に打ち上げられる。
幸いなことに通りかかった修行僧の玄奘様に助けられて異世界生活が始まる。
でも、庶民、それも孤児の身分からの出発で、大学生までの生活で培った現代知識だけを持ってどこまで戦国の世でやっていけるか。
とにかく、主人公の孫空は生き残ることだけ考えて、周りを巻き込み無双していくお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる