36 / 54
第36話 偶然が起きました
しおりを挟む
九王とウッマは、データの解析を終えた後、メンテナンスを行っていた。今回はかなりの期間外出していたことから、バッテリーや駆動系のチェックを綿密に行おうと決めていたのだ。
メンテ君によって九王がレベル2のレッドパッケージ━━レベル3ほどではないが、それに匹敵するくらい重要なメンテナンス━━が行われ、ウッマに移ろうとしていた時だった。
研究室の出入口がノックされる。
「俺だ、小堀だ」
「開いてますよ」
九王は服を着ながら返事をする。服を着終わった瞬間に小堀が研究室に入ってきた。
「おん、メンテナンスでもしていたのか?」
「そうですね。小堀さんのほうはどうしたんですか?」
「あぁ。ちょっと上からの命令が来てな……」
小堀はその辺に置いてあったパイプ椅子に座る。
「母艦の観測室からの警告だ。前に話したソルレイバーストの一件があっただろ?」
「ありましたね」
元気なあのインド人の姿が思い浮かぶ。
「どうも、ここ数週間の間にソルレイバーストが立て続けに発生しているようでな。指揮官名義で避難準備指示が出てきた。正直このまま引き上げたほうがいいレベルだ」
「そんなにですか」
「あぁ。頻度も多く、強度もかなり強いようだ。医務局の推定によれば、銀河クラスの特大ガンマ線バーストを100光年の距離で浴びるようなものらしい。そんな環境にいれば、俺たちサイボーグは簡単に命を落とす。いくら替えの利く俺たちでも、生産コストや時間が要求される。そんなリスクを犯すことは出来ないと判断したのだろう」
小堀がパソコンを操作しながら、九王とウッマに説明する。
「そしたら、僕たちだってソルレイバーストの影響を受けることになるじゃないか。それはどうするつもりだい?」
「……き、……人工知能に対しての対策は書かれてないから、正直分からん」
「それは困るよ。僕たちだってある意味生きているんだから」
ウッマの横で、九王が何か考えている。そして口を開いた。
「小堀さん。ソルレイバーストに関するデータって、今ここで見られますか?」
「それは……、ちょっと困る」
「困るってなんだい? 僕たちの命がかかっているんだよ?」
「それは分かっている。心苦しいのは分かるんだが、機密情報の取り扱いは厳密に行わなくちゃいけないし……」
小堀は滅茶苦茶嫌がっているようだ。
そんな小堀に、九王は接近する。
「これは場合によっては私たちと小堀さんが助かるかもしれない事案なんです。私の直感がそう言っています」
「九王君に直感なんてあるのか……?」
「なんでもいいので、見せてください」
九王は小堀に詰め寄る。人工知能とは思えないような重圧を感じるだろう。
小堀は降参した。
「……分かった。だがこれは機密事項だからな? 他言無用で頼む」
「もちろんです」
そういって小堀はパソコンの画面を見せる。そこにはソルレイバーストの発生日時やバーストの周波数、強度などが記載されていた。
「これを見て何か分かることはあまりないと思うが……」
小堀は機密が流出するのを恐れ、ちょっとソワソワしている。
そんな中、九王が画面をじっと見て解析のようなものを行っていた。そして一つの結論を導き出す。
「ソルレイバーストの発生日時と、私たちの観測を行っていた時間帯が一致します」
「は?」
「みこね、本当?」
「えぇ。詳細までは分かりませんが、大きなくくりで見れば、私たちが主に心霊観測を行っていた時間帯にソルレイバーストが強く多く発生しているようです」
その結果を聞いた小堀は、思わず椅子から転げ落ちる。
「そ、そんな偶然があるものか! これは……、そうだ! 疑似相関とかいうやつだろ!?」
「同じ日時を比べているのに、疑似と言い張るのは意味をなしていないと思いますよ」
「ならなんで……」
小堀は少し混乱しているようだ。
「時間帯が一致しているとなると、今度は場所が気になりますが……。小堀さん、ソルレイバーストが発生している場所についてのデータはありませんか?」
「んあぁ……。そもそも発生している場所が近すぎて、『地球からガンマ線が観測される』以外は分かってない……」
「そうですか……。それは残念です。もし場所も分かれば、私たちが移動するのに合わせて発生場所も移動していると思ったのですが……」
そういって九王は、世界地図が貼られている壁の前まで移動する。
「しかし、ソルレイバーストと心霊現象の発生に何かしらの関係があるとするなら……。それは重大な意味を持っていると考えられます」
九王の直感が何かを主張しているような、そんな予感を感じる九王であった。
メンテ君によって九王がレベル2のレッドパッケージ━━レベル3ほどではないが、それに匹敵するくらい重要なメンテナンス━━が行われ、ウッマに移ろうとしていた時だった。
研究室の出入口がノックされる。
「俺だ、小堀だ」
「開いてますよ」
九王は服を着ながら返事をする。服を着終わった瞬間に小堀が研究室に入ってきた。
「おん、メンテナンスでもしていたのか?」
「そうですね。小堀さんのほうはどうしたんですか?」
「あぁ。ちょっと上からの命令が来てな……」
小堀はその辺に置いてあったパイプ椅子に座る。
「母艦の観測室からの警告だ。前に話したソルレイバーストの一件があっただろ?」
「ありましたね」
元気なあのインド人の姿が思い浮かぶ。
「どうも、ここ数週間の間にソルレイバーストが立て続けに発生しているようでな。指揮官名義で避難準備指示が出てきた。正直このまま引き上げたほうがいいレベルだ」
「そんなにですか」
「あぁ。頻度も多く、強度もかなり強いようだ。医務局の推定によれば、銀河クラスの特大ガンマ線バーストを100光年の距離で浴びるようなものらしい。そんな環境にいれば、俺たちサイボーグは簡単に命を落とす。いくら替えの利く俺たちでも、生産コストや時間が要求される。そんなリスクを犯すことは出来ないと判断したのだろう」
小堀がパソコンを操作しながら、九王とウッマに説明する。
「そしたら、僕たちだってソルレイバーストの影響を受けることになるじゃないか。それはどうするつもりだい?」
「……き、……人工知能に対しての対策は書かれてないから、正直分からん」
「それは困るよ。僕たちだってある意味生きているんだから」
ウッマの横で、九王が何か考えている。そして口を開いた。
「小堀さん。ソルレイバーストに関するデータって、今ここで見られますか?」
「それは……、ちょっと困る」
「困るってなんだい? 僕たちの命がかかっているんだよ?」
「それは分かっている。心苦しいのは分かるんだが、機密情報の取り扱いは厳密に行わなくちゃいけないし……」
小堀は滅茶苦茶嫌がっているようだ。
そんな小堀に、九王は接近する。
「これは場合によっては私たちと小堀さんが助かるかもしれない事案なんです。私の直感がそう言っています」
「九王君に直感なんてあるのか……?」
「なんでもいいので、見せてください」
九王は小堀に詰め寄る。人工知能とは思えないような重圧を感じるだろう。
小堀は降参した。
「……分かった。だがこれは機密事項だからな? 他言無用で頼む」
「もちろんです」
そういって小堀はパソコンの画面を見せる。そこにはソルレイバーストの発生日時やバーストの周波数、強度などが記載されていた。
「これを見て何か分かることはあまりないと思うが……」
小堀は機密が流出するのを恐れ、ちょっとソワソワしている。
そんな中、九王が画面をじっと見て解析のようなものを行っていた。そして一つの結論を導き出す。
「ソルレイバーストの発生日時と、私たちの観測を行っていた時間帯が一致します」
「は?」
「みこね、本当?」
「えぇ。詳細までは分かりませんが、大きなくくりで見れば、私たちが主に心霊観測を行っていた時間帯にソルレイバーストが強く多く発生しているようです」
その結果を聞いた小堀は、思わず椅子から転げ落ちる。
「そ、そんな偶然があるものか! これは……、そうだ! 疑似相関とかいうやつだろ!?」
「同じ日時を比べているのに、疑似と言い張るのは意味をなしていないと思いますよ」
「ならなんで……」
小堀は少し混乱しているようだ。
「時間帯が一致しているとなると、今度は場所が気になりますが……。小堀さん、ソルレイバーストが発生している場所についてのデータはありませんか?」
「んあぁ……。そもそも発生している場所が近すぎて、『地球からガンマ線が観測される』以外は分かってない……」
「そうですか……。それは残念です。もし場所も分かれば、私たちが移動するのに合わせて発生場所も移動していると思ったのですが……」
そういって九王は、世界地図が貼られている壁の前まで移動する。
「しかし、ソルレイバーストと心霊現象の発生に何かしらの関係があるとするなら……。それは重大な意味を持っていると考えられます」
九王の直感が何かを主張しているような、そんな予感を感じる九王であった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる