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第41話 突拍子もないことを言いました
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たった3分にも満たない音声だったが、九王たちが絶句するには十分すぎる内容だった。
それはまるで、どこかの大統領が軍人や国民に向けて勇気ある演説を行うようなものに聞こえたのだ。
「……これは、なんなんだ?」
音声が終わり、しばらくしてからシュートリヒが口を最初に開いた。誰に問いかけたかも分からない、ひとしきり混乱した後の一言である。
音声の状況を飲み込んだ小堀が答える。
「まぁ、音声の状況を察するに……。地球にいた人類のほとんどが、絶滅戦争の最後の日に余剰次元へと吸い込まれた? 落ちた? まぁ転移したというのが正しいか……。んで、その余剰次元内で意識が一つに融合したってことだろうな」
「それはにわかには信じがたいけど……。ありうることなのか?」
小堀の解説に、シンが疑問を呈した。
その答えに九王が冷静に答える。
「余剰次元と言うのは、我々に認知できない物理法則が働いている可能性があります。それこそ、現在に至るまで余剰次元の存在を確認しようとしているくらいには正体不明の場所ですからね。そんな意味不明な場所で起こる現象が精神融合なら、温情といえるほどのものでしょう。それに、全人類の精神融合なんてSFではよくある話ですよ」
その説明に一同は納得した、というよりかは納得せざるを得なかった。
「じゃあ、この話にあった3pmというのは……、もしかしてソルレイバーストの波長と一致するって言うのか?」
「確かに……。ソルレイバーストの波長は2.554pmだ。彼らの言う余剰次元の隙間が3pmだとするなら、ソルレイバーストが余剰次元の壁の向こうから来ている可能性はある……」
「それに、こちらに介入できる力は小さな物音やポルターガイストのような力と言っていた。それなら心霊現象の特徴と一致している……」
小堀がそのように推察する。
「じゃあ、みこねが言っていた心霊現象とソルレイバーストの発生日時が一致しているというのは正しいってこと?」
ウッマが指摘する。
「あぁ、確かにそうだ……」
「心霊現象と一致している? いつそんなことをした?」
「俺と九王とウッマで、心霊現象を観測するための旅のような物をしていたんだ。その時にデータを九王が測定していた」
「もしデータを持っているなら、今ここで突き合わせをしたい」
「それなら研究室にあるよ。データに互換性があるか分からないけど」
「だったら心霊現象が最も頻発した時刻を教えてくれ。それとバーストの時間がある程度一致すれば、彼女の仮説は正しいことになる」
「じゃあ口頭で言ってくよ。直近のからね━━」
そういって、ウッマとシュートリヒは話しながらデータの突き合わせを行っていく。
数ヶ月前まで遡ったところでシュートリヒが音を上げた。
「もういい……。体感で9割一致していた。これはもう偶然で言い逃れすることは出来ないだろう」
「そう。これで心霊現象はソルレイバーストによるものだって分かったね」
そういってウッマは九王に向き直る。
「みこね、これからどうする? 彼ら、助けを求めてたけど」
「そうですね……。一個人の感想を述べさせていただくなら、このまま放置しても問題ないかなと思っています。余剰次元から地球に与える影響は、不確実性の高い心霊現象ですからね」
「おいおい、それはさすがに可哀相じゃねぇか?」
九王の言葉に、小堀が反論する。
「それもその通りです。ですので、ここは重い腰を上げて、彼らのことを助けにいきましょう」
「しかし、助けるって言ってもどうやってやるんだ?」
シンが九王に質問する。
「方法がないわけではありません。ですが、この方法を行うためにはかなりの労力を必要とします」
「まぁ……、まずはその方法を聞いてみようじゃないか」
シュートリヒがタブレットをしまって、九王のことをジッと見る。
「その方法ですが、まずは岩手県にまで移動します」
「イワテ?」
「はい。ここには『100秒の沈黙』戦争以前に国際協力の名の元に建設された線形粒子衝突加速器の岩手線形粒子加速器、通称ILPAが存在しています。これまで存在した様々な加速器の実験を、これ一つで実施できるようにした万能型です」
「しかし、それは実験のための加速器じゃないのか?」
「ILPAでは、余剰次元検出の実験を行っていたことが、『100秒の沈黙』戦争前にプレスリリースで発表されています。これを使えば、余剰次元への扉を開くことが可能でしょう」
そこまで説明した九王。しかし一同は難色を示しているようだ。
「……仮に俺たちが行動を起こしたとして、なんとかなるような物なのか? 九王君の言い分では、線形加速器を動かすようなことを言っているが……」
小堀の指摘も最もだろう。それに九王は毅然と返す。
「当然、私たちのできる範疇を超えています。なので、ここは第4銀河艦隊の皆さんの力をお借りします」
その言葉に、小堀、シン、シュートリヒが驚く。
「待て待て待て待て、一体何を考えたらそうなる? 貴様は、俺がなんで貴様に拳銃を向けたのか理解していないのか?」
「私たちの存在が危険なのは承知しています。しかし、これはそれ以上の問題なのです」
「それ以上?」
「私の直感が言っています。このままソルレイバーストを放置していると、真空崩壊を引き起こす可能性がある、と」
九王がとんでもないことを言い出す。
それはまるで、どこかの大統領が軍人や国民に向けて勇気ある演説を行うようなものに聞こえたのだ。
「……これは、なんなんだ?」
音声が終わり、しばらくしてからシュートリヒが口を最初に開いた。誰に問いかけたかも分からない、ひとしきり混乱した後の一言である。
音声の状況を飲み込んだ小堀が答える。
「まぁ、音声の状況を察するに……。地球にいた人類のほとんどが、絶滅戦争の最後の日に余剰次元へと吸い込まれた? 落ちた? まぁ転移したというのが正しいか……。んで、その余剰次元内で意識が一つに融合したってことだろうな」
「それはにわかには信じがたいけど……。ありうることなのか?」
小堀の解説に、シンが疑問を呈した。
その答えに九王が冷静に答える。
「余剰次元と言うのは、我々に認知できない物理法則が働いている可能性があります。それこそ、現在に至るまで余剰次元の存在を確認しようとしているくらいには正体不明の場所ですからね。そんな意味不明な場所で起こる現象が精神融合なら、温情といえるほどのものでしょう。それに、全人類の精神融合なんてSFではよくある話ですよ」
その説明に一同は納得した、というよりかは納得せざるを得なかった。
「じゃあ、この話にあった3pmというのは……、もしかしてソルレイバーストの波長と一致するって言うのか?」
「確かに……。ソルレイバーストの波長は2.554pmだ。彼らの言う余剰次元の隙間が3pmだとするなら、ソルレイバーストが余剰次元の壁の向こうから来ている可能性はある……」
「それに、こちらに介入できる力は小さな物音やポルターガイストのような力と言っていた。それなら心霊現象の特徴と一致している……」
小堀がそのように推察する。
「じゃあ、みこねが言っていた心霊現象とソルレイバーストの発生日時が一致しているというのは正しいってこと?」
ウッマが指摘する。
「あぁ、確かにそうだ……」
「心霊現象と一致している? いつそんなことをした?」
「俺と九王とウッマで、心霊現象を観測するための旅のような物をしていたんだ。その時にデータを九王が測定していた」
「もしデータを持っているなら、今ここで突き合わせをしたい」
「それなら研究室にあるよ。データに互換性があるか分からないけど」
「だったら心霊現象が最も頻発した時刻を教えてくれ。それとバーストの時間がある程度一致すれば、彼女の仮説は正しいことになる」
「じゃあ口頭で言ってくよ。直近のからね━━」
そういって、ウッマとシュートリヒは話しながらデータの突き合わせを行っていく。
数ヶ月前まで遡ったところでシュートリヒが音を上げた。
「もういい……。体感で9割一致していた。これはもう偶然で言い逃れすることは出来ないだろう」
「そう。これで心霊現象はソルレイバーストによるものだって分かったね」
そういってウッマは九王に向き直る。
「みこね、これからどうする? 彼ら、助けを求めてたけど」
「そうですね……。一個人の感想を述べさせていただくなら、このまま放置しても問題ないかなと思っています。余剰次元から地球に与える影響は、不確実性の高い心霊現象ですからね」
「おいおい、それはさすがに可哀相じゃねぇか?」
九王の言葉に、小堀が反論する。
「それもその通りです。ですので、ここは重い腰を上げて、彼らのことを助けにいきましょう」
「しかし、助けるって言ってもどうやってやるんだ?」
シンが九王に質問する。
「方法がないわけではありません。ですが、この方法を行うためにはかなりの労力を必要とします」
「まぁ……、まずはその方法を聞いてみようじゃないか」
シュートリヒがタブレットをしまって、九王のことをジッと見る。
「その方法ですが、まずは岩手県にまで移動します」
「イワテ?」
「はい。ここには『100秒の沈黙』戦争以前に国際協力の名の元に建設された線形粒子衝突加速器の岩手線形粒子加速器、通称ILPAが存在しています。これまで存在した様々な加速器の実験を、これ一つで実施できるようにした万能型です」
「しかし、それは実験のための加速器じゃないのか?」
「ILPAでは、余剰次元検出の実験を行っていたことが、『100秒の沈黙』戦争前にプレスリリースで発表されています。これを使えば、余剰次元への扉を開くことが可能でしょう」
そこまで説明した九王。しかし一同は難色を示しているようだ。
「……仮に俺たちが行動を起こしたとして、なんとかなるような物なのか? 九王君の言い分では、線形加速器を動かすようなことを言っているが……」
小堀の指摘も最もだろう。それに九王は毅然と返す。
「当然、私たちのできる範疇を超えています。なので、ここは第4銀河艦隊の皆さんの力をお借りします」
その言葉に、小堀、シン、シュートリヒが驚く。
「待て待て待て待て、一体何を考えたらそうなる? 貴様は、俺がなんで貴様に拳銃を向けたのか理解していないのか?」
「私たちの存在が危険なのは承知しています。しかし、これはそれ以上の問題なのです」
「それ以上?」
「私の直感が言っています。このままソルレイバーストを放置していると、真空崩壊を引き起こす可能性がある、と」
九王がとんでもないことを言い出す。
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