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第52話 ぶっつけ本番でした
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エモータル級標準戦艦2隻が、岩手県沖上空から緊急発進していた。
「敵艦隊を光学で確認! 艦影からコードネーム『アーバンカー』クラスと推定!」
「機関全力で回せ!」
「近接戦闘機の発艦急げ! 全機出すんだ!」
「無制限だ! 弾薬無制限使用を許可!」
「ジェンジュンは地球の反対側にいる! 心配はしなくて問題ない!」
「手動攻撃兵器に座るのは誰でもいい! 手が空いてる奴から座らせろ!」
「転換作業は放棄! すぐに通常接続に変えろ!」
「泣き言言う奴はぶん殴ってでも動かせ!」
「何としてでもここを死守せよ! 出し惜しみはなしだ!」
艦長以下全員の思いが一つになる。中には打算的な人間もいるだろう。それでも、全員が一つの目的のために動かなければならないと考えてるのは間違いない。
『こちらキューランソー。先に切り込む。キューランソーの屍は無駄にしてくれるな』
2隻のうち、先頭を進んでいたキューランソーの艦長から通信が入る。
「当然だ。帰ったら150年物のウイスキーで乾杯しよう」
キューランソーの後ろを航行しているハラルドルンの艦長が応答する。
そんな中、ハラルドルンの艦長の話を聞いていた士官が同僚に聞く。
「なぁ、150年物のウイスキーなんて手に入るどころか見たことすらないんだが?」
「馬鹿お前、そういうのは承知の上での会話だよ。分からないか? それだけの覚悟で突撃するって言ってるんだ。そのくらい分かれよ」
そういってそれぞれの仕事に戻っていく。
それを横目に、ハラルドルンの艦長はドッカリと席にもたれる。
「この艦の艦長になって15年。こうして死に場所を得られたのは嬉しい限り。体当たりしてでも食い止めてやる……!」
その一方、九王たちのいるILPAの現場ではひっちゃかめっちゃかな状態になっていた。
「技術長からの指示を伝達する! 2回目のテストは中止! 直ちに本番を開始する! 繰り返す! 2回目のテストは中止して直ちに本番を開始する!」
中央制御室に鳴り響く通信音。対応する技術員。すでに地獄の様相を呈している。
「戦艦ベルブレイブへ通達! 波長2.554pmの電波の照射を開始せよ! これは本番である!」
「検査中の作業員は直ちに退避!」
「空中送電線の1本2本が焼け落ちても気にする必要はない! 電力確保が最優先だ!」
「上空の戦艦に連絡! 防衛攻撃は最小限にして動力の94%を下に回してくれ!」
「ウランの残量は十分か確認してくれ。ここで『ウラン原子が不足してました』なぞやったら大変なことになるからな」
そんな中、九王は物理学者と共に最後の調整に入っていた。
「これ以上速度を得るとすると、もはや加速装置が焼き切れるぞ……」
「ですが、目的を達成するには必要なことです。1m/sでも速くウラン原子を加速させなければ、失敗に終わります」
「それは僕だって十分に分かっている。しかし、線形加速器はエネルギーを得るのには向いてない。円形ならまだ良かったが……。はぁ、贅沢は言ってられないな」
その時、技術長補佐が技術長に声をかける。
「人員の退避、電力の確保、ウラン残量、及び機器の検査、全て問題ありません」
「分かった。九王さん」
技術長が九王のほうを向いて声をかける。
「はい」
「本番を開始する準備が整いました。いつでも始められます」
「分かりました。開始してください」
それを聞いた技術長は、制御盤の物理ボタンの前に立つ。そして館内放送用と外部通信用を一緒にしたマイクを手にして、一言。
「これより余剰次元への介入を行う」
そして起動ボタンのガラスカバーを開ける。
「起動!」
言葉と同時に起動ボタンを押す。加速器に使われているコイルから、なんとも言えない重低音が響きだす。
その加速空洞に向けて、剥離したウラン原子が吸い込まれる。そして光速の99.99999967%、速度にして299792457m/sのウラン原子が、毎秒200万回という凄まじい回数衝突する。
この状態になるまで最速でやっても1時間はかかる。
その間にも、第2銀河艦隊の情報は次々と入ってきていた。
『アーバンカー1隻を撃破!』
『キューランソー、攻撃手段を喪失! これより体当たりを敢行します!』
『ハラルドルンの艦載機、全機喪失!』
そんな中、膨大なエネルギーが集中しているILPAの検出装置がある現象を検出する。
『宇宙ジェットに似た現象を検出しています! マイクロブラックホールが生成されたと考えられます!』
「生成されたのか……!? しかし何も起きないぞ? それにこちらのモニターでは継続してジェットが検出されている……!」
物理学者が狼狽えている。生成されてからの寿命は4マイクロ秒と試算されていたのにも関わらず、それを大幅に超えてもなおマイクロブラックホールは存在しているからだ。
そして上空にいる標準戦艦からバーストを模した波長が照射されているのに、一向に何も起きない。
物理学者は直感した。
「異常事態が発生しているかもしれない……」
「そんな……」
九王も狼狽えていた。
その時、現場からの通報を受けた小堀が、九王に報告する。
「九王、検出装置に少々不具合が生じたらしい。正直ここに行けるのは九王しかいない。頼む」
小堀に言われ、九王はただ頷いた。そして検出装置のある場所へ走る。
(一体何が足りなかったのでしょう?)
自問自答しながら地下通路を走る。
(お願いです。私たちの願いを……)
そして検出装置のある部屋へと入る。
「私たちの思いよ、届いて……!」
その瞬間、検出装置から蜃気楼のような空間の揺らぎが発生する。
「敵艦隊を光学で確認! 艦影からコードネーム『アーバンカー』クラスと推定!」
「機関全力で回せ!」
「近接戦闘機の発艦急げ! 全機出すんだ!」
「無制限だ! 弾薬無制限使用を許可!」
「ジェンジュンは地球の反対側にいる! 心配はしなくて問題ない!」
「手動攻撃兵器に座るのは誰でもいい! 手が空いてる奴から座らせろ!」
「転換作業は放棄! すぐに通常接続に変えろ!」
「泣き言言う奴はぶん殴ってでも動かせ!」
「何としてでもここを死守せよ! 出し惜しみはなしだ!」
艦長以下全員の思いが一つになる。中には打算的な人間もいるだろう。それでも、全員が一つの目的のために動かなければならないと考えてるのは間違いない。
『こちらキューランソー。先に切り込む。キューランソーの屍は無駄にしてくれるな』
2隻のうち、先頭を進んでいたキューランソーの艦長から通信が入る。
「当然だ。帰ったら150年物のウイスキーで乾杯しよう」
キューランソーの後ろを航行しているハラルドルンの艦長が応答する。
そんな中、ハラルドルンの艦長の話を聞いていた士官が同僚に聞く。
「なぁ、150年物のウイスキーなんて手に入るどころか見たことすらないんだが?」
「馬鹿お前、そういうのは承知の上での会話だよ。分からないか? それだけの覚悟で突撃するって言ってるんだ。そのくらい分かれよ」
そういってそれぞれの仕事に戻っていく。
それを横目に、ハラルドルンの艦長はドッカリと席にもたれる。
「この艦の艦長になって15年。こうして死に場所を得られたのは嬉しい限り。体当たりしてでも食い止めてやる……!」
その一方、九王たちのいるILPAの現場ではひっちゃかめっちゃかな状態になっていた。
「技術長からの指示を伝達する! 2回目のテストは中止! 直ちに本番を開始する! 繰り返す! 2回目のテストは中止して直ちに本番を開始する!」
中央制御室に鳴り響く通信音。対応する技術員。すでに地獄の様相を呈している。
「戦艦ベルブレイブへ通達! 波長2.554pmの電波の照射を開始せよ! これは本番である!」
「検査中の作業員は直ちに退避!」
「空中送電線の1本2本が焼け落ちても気にする必要はない! 電力確保が最優先だ!」
「上空の戦艦に連絡! 防衛攻撃は最小限にして動力の94%を下に回してくれ!」
「ウランの残量は十分か確認してくれ。ここで『ウラン原子が不足してました』なぞやったら大変なことになるからな」
そんな中、九王は物理学者と共に最後の調整に入っていた。
「これ以上速度を得るとすると、もはや加速装置が焼き切れるぞ……」
「ですが、目的を達成するには必要なことです。1m/sでも速くウラン原子を加速させなければ、失敗に終わります」
「それは僕だって十分に分かっている。しかし、線形加速器はエネルギーを得るのには向いてない。円形ならまだ良かったが……。はぁ、贅沢は言ってられないな」
その時、技術長補佐が技術長に声をかける。
「人員の退避、電力の確保、ウラン残量、及び機器の検査、全て問題ありません」
「分かった。九王さん」
技術長が九王のほうを向いて声をかける。
「はい」
「本番を開始する準備が整いました。いつでも始められます」
「分かりました。開始してください」
それを聞いた技術長は、制御盤の物理ボタンの前に立つ。そして館内放送用と外部通信用を一緒にしたマイクを手にして、一言。
「これより余剰次元への介入を行う」
そして起動ボタンのガラスカバーを開ける。
「起動!」
言葉と同時に起動ボタンを押す。加速器に使われているコイルから、なんとも言えない重低音が響きだす。
その加速空洞に向けて、剥離したウラン原子が吸い込まれる。そして光速の99.99999967%、速度にして299792457m/sのウラン原子が、毎秒200万回という凄まじい回数衝突する。
この状態になるまで最速でやっても1時間はかかる。
その間にも、第2銀河艦隊の情報は次々と入ってきていた。
『アーバンカー1隻を撃破!』
『キューランソー、攻撃手段を喪失! これより体当たりを敢行します!』
『ハラルドルンの艦載機、全機喪失!』
そんな中、膨大なエネルギーが集中しているILPAの検出装置がある現象を検出する。
『宇宙ジェットに似た現象を検出しています! マイクロブラックホールが生成されたと考えられます!』
「生成されたのか……!? しかし何も起きないぞ? それにこちらのモニターでは継続してジェットが検出されている……!」
物理学者が狼狽えている。生成されてからの寿命は4マイクロ秒と試算されていたのにも関わらず、それを大幅に超えてもなおマイクロブラックホールは存在しているからだ。
そして上空にいる標準戦艦からバーストを模した波長が照射されているのに、一向に何も起きない。
物理学者は直感した。
「異常事態が発生しているかもしれない……」
「そんな……」
九王も狼狽えていた。
その時、現場からの通報を受けた小堀が、九王に報告する。
「九王、検出装置に少々不具合が生じたらしい。正直ここに行けるのは九王しかいない。頼む」
小堀に言われ、九王はただ頷いた。そして検出装置のある場所へ走る。
(一体何が足りなかったのでしょう?)
自問自答しながら地下通路を走る。
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「私たちの思いよ、届いて……!」
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