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第53話 ついに会いました
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気がつけば、九王へ見たことない空間にいた。
キラキラとした光の粒子が、止まることなく流れ続ける空間。地面は存在せず、まるで無重力のように九王は浮かんでいた。
「ここは……? なんですか……?」
宙に放り出されたような状態なので、九王は手足をバタつかせる。
(少しは動けるかと思いましたが、そうではないようですね……)
耳の近くにある加速度センサーが反応してないのを鑑みるに、この空間には「動く」という概念が存在しないようだ。
今度は光の粒子を掴んでみる。しかし、目の前にあるというのに、それらは粗いCGのように手の中をすり抜けていく。
「掴めない……」
いよいよ、この空間がなんなのか分からなくなってきた。動こうにも掴もうにも、何一つ出来ない。ただ、光の粒子を観測することしかできなかった。
その時、目の前の光の粒子が揺らめき、青白い光が形を作り出す。ものの数秒で人型になった。
『はじめまして、九王みこね。ここはあなたの深層意識の中。あなたであっても知覚できない領域だ』
「私が知覚できない領域……? 人工知能を有している私が、ですか?」
九王が少し驚く。ポカンとした表情の後、思わず口角が上がる。
「そんなわけないですよ。私は自分に入ってくる情報を全て認識できるんですから。そんな領域は存在しません」
『はたして本当にそう言えるのか?』
「と言いますと?」
『あなたには心当たりがあるはずだ。存在しないはずの映像データがあったり、本来は見ることのない夢を見るなどだ』
そう言われてみれば、確かに人工知能としては異質な記憶が存在する。データとして存在しない映像記録。再生してもいないのに睡眠時に勝手に始まる映像。
心当たりはあった。
「それは……。そうかもしれませんが……」
九王は少し狼狽える。
「しかしですよ、あなたに一体私の何が分かると言うんですか? そもそもあなたは一体何者なんですか?」
九王は自分のことを棚に上げて、人型の正体に迫る。
『私は、あなたが探していたソルレイバーストの発生源、地球人類が集合した統合精神体だ』
「あなたが……」
キラキラした空間の中で、精神体がこちらを見ていた。いや、顔はのっぺりとしており、眼球などは見当たらないが、何故か視線を感じる。
「……もしそれが本当であれば、私たちはILPAを使って余剰次元に介入することができた、というわけですか?」
『その通りだ。だが、完璧というわけではない』
「完璧ではない?」
『君たちは、あの場所でバーストの波長を使えば介入できると考えていた。しかしそれだけでは不十分だ』
統合精神体は両手を後ろで組み、少し胸を張る。
「足りなかった……? 何が足りなかったんですか?」
九王は問いかける。
『それは単純。願い、思い、望み。そういった、人間が発する潜在意識が必要だった』
「願望が必要……?」
『そうだ。あなたは我々を助けたいと願った。我々も同じように、ある願いを叶えてほしかった。お互いに願うことで、私とあなたはこうして邂逅できた』
「それは……、なんともオカルトじみた、スピリチュアルな事象ですね……」
九王は、どう返していいか分からなかった。
「それで先ほどの発言を聞くに、あなたは私に叶えてほしい願いがある、ということで合っていますか?」
『その認識で問題ない』
「とりあえず、聞くだけ聞きましょう」
九王は、話だけ聞くことにした。
『我々の願いは一つ。この苦しい世界である余剰次元から脱出し、地球に帰還すること。そのためには我々を受け入れる身体が必要なのだ』
「……なんだか嫌な予感がしてきました」
『そうだ。九王みこね、あなたが我々精神体の器になってほしい』
九王は大きく溜息を吐く。
「それって私の人格がなくなるヤツですよね? そのあたりはどうなんですか?」
『正直分からない』
「じゃあ絶対に消えますね」
『そうではない。この余剰次元では、あらゆる可能性が発生する。奇跡的に我々とあなたが融合し、新しい統合精神体として九王みこねの身体に定着する可能性。我々があなたを乗っ取り、人格が消滅する可能性。九王みこねの身体が拒絶反応を起こし、我々の器として機能しない可能性。あらゆる選択肢と可能性が存在するのだ』
「大体その三つに絞られるんじゃないですか?」
九王は軽口を叩く。しかし裏では、実は生き残れる可能性があるのではないかと考えている。つまり、悩んでいるのだ。
だが、この提案は博打である。勝利と言える選択肢が実際に出てくるとは限らない。
「どうしましょう……」
『かなり悩んでいる、そんなあなたに一つアドバイスを』
「……まぁ、聞きます」
『人間は直感で動くこともある、ということです』
直感。それは九王も何度か経験し、選択してきた。そして同時に、それは人間らしい行動でもあるということだ。
「……そうですね。博打をするなら、直感は大事ですもんね」
九王は決断した。
「私の直感は、『器になれ』と言っています」
『ありがとう。では、手を出してほしい』
精神体に言われるがまま、九王は両手を差し出す。精神体も両手を出し、九王の手を握る。
その瞬間、周囲にあった光の粒子が二人の間へと急激に収束し出す。その勢いは止まらず、やがて全ての光の粒子が一点に集まり、その空間から光が消えた。
キラキラとした光の粒子が、止まることなく流れ続ける空間。地面は存在せず、まるで無重力のように九王は浮かんでいた。
「ここは……? なんですか……?」
宙に放り出されたような状態なので、九王は手足をバタつかせる。
(少しは動けるかと思いましたが、そうではないようですね……)
耳の近くにある加速度センサーが反応してないのを鑑みるに、この空間には「動く」という概念が存在しないようだ。
今度は光の粒子を掴んでみる。しかし、目の前にあるというのに、それらは粗いCGのように手の中をすり抜けていく。
「掴めない……」
いよいよ、この空間がなんなのか分からなくなってきた。動こうにも掴もうにも、何一つ出来ない。ただ、光の粒子を観測することしかできなかった。
その時、目の前の光の粒子が揺らめき、青白い光が形を作り出す。ものの数秒で人型になった。
『はじめまして、九王みこね。ここはあなたの深層意識の中。あなたであっても知覚できない領域だ』
「私が知覚できない領域……? 人工知能を有している私が、ですか?」
九王が少し驚く。ポカンとした表情の後、思わず口角が上がる。
「そんなわけないですよ。私は自分に入ってくる情報を全て認識できるんですから。そんな領域は存在しません」
『はたして本当にそう言えるのか?』
「と言いますと?」
『あなたには心当たりがあるはずだ。存在しないはずの映像データがあったり、本来は見ることのない夢を見るなどだ』
そう言われてみれば、確かに人工知能としては異質な記憶が存在する。データとして存在しない映像記録。再生してもいないのに睡眠時に勝手に始まる映像。
心当たりはあった。
「それは……。そうかもしれませんが……」
九王は少し狼狽える。
「しかしですよ、あなたに一体私の何が分かると言うんですか? そもそもあなたは一体何者なんですか?」
九王は自分のことを棚に上げて、人型の正体に迫る。
『私は、あなたが探していたソルレイバーストの発生源、地球人類が集合した統合精神体だ』
「あなたが……」
キラキラした空間の中で、精神体がこちらを見ていた。いや、顔はのっぺりとしており、眼球などは見当たらないが、何故か視線を感じる。
「……もしそれが本当であれば、私たちはILPAを使って余剰次元に介入することができた、というわけですか?」
『その通りだ。だが、完璧というわけではない』
「完璧ではない?」
『君たちは、あの場所でバーストの波長を使えば介入できると考えていた。しかしそれだけでは不十分だ』
統合精神体は両手を後ろで組み、少し胸を張る。
「足りなかった……? 何が足りなかったんですか?」
九王は問いかける。
『それは単純。願い、思い、望み。そういった、人間が発する潜在意識が必要だった』
「願望が必要……?」
『そうだ。あなたは我々を助けたいと願った。我々も同じように、ある願いを叶えてほしかった。お互いに願うことで、私とあなたはこうして邂逅できた』
「それは……、なんともオカルトじみた、スピリチュアルな事象ですね……」
九王は、どう返していいか分からなかった。
「それで先ほどの発言を聞くに、あなたは私に叶えてほしい願いがある、ということで合っていますか?」
『その認識で問題ない』
「とりあえず、聞くだけ聞きましょう」
九王は、話だけ聞くことにした。
『我々の願いは一つ。この苦しい世界である余剰次元から脱出し、地球に帰還すること。そのためには我々を受け入れる身体が必要なのだ』
「……なんだか嫌な予感がしてきました」
『そうだ。九王みこね、あなたが我々精神体の器になってほしい』
九王は大きく溜息を吐く。
「それって私の人格がなくなるヤツですよね? そのあたりはどうなんですか?」
『正直分からない』
「じゃあ絶対に消えますね」
『そうではない。この余剰次元では、あらゆる可能性が発生する。奇跡的に我々とあなたが融合し、新しい統合精神体として九王みこねの身体に定着する可能性。我々があなたを乗っ取り、人格が消滅する可能性。九王みこねの身体が拒絶反応を起こし、我々の器として機能しない可能性。あらゆる選択肢と可能性が存在するのだ』
「大体その三つに絞られるんじゃないですか?」
九王は軽口を叩く。しかし裏では、実は生き残れる可能性があるのではないかと考えている。つまり、悩んでいるのだ。
だが、この提案は博打である。勝利と言える選択肢が実際に出てくるとは限らない。
「どうしましょう……」
『かなり悩んでいる、そんなあなたに一つアドバイスを』
「……まぁ、聞きます」
『人間は直感で動くこともある、ということです』
直感。それは九王も何度か経験し、選択してきた。そして同時に、それは人間らしい行動でもあるということだ。
「……そうですね。博打をするなら、直感は大事ですもんね」
九王は決断した。
「私の直感は、『器になれ』と言っています」
『ありがとう。では、手を出してほしい』
精神体に言われるがまま、九王は両手を差し出す。精神体も両手を出し、九王の手を握る。
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