転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春

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第67話 フランス

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 一九三七年七月三日、パリ。
 ジル・ロンダはエリゼ宮殿の中で、軍事省の職員から色々と報告を聞いていた。
「ドイツ軍の進軍が速く、すでにランスに接近しつつあると……」
 ランスという街は、パリから東北東に約百三十キロメートルの所にある。ここ数日のドイツ陸軍の侵攻速度を考えると、パリ陥落までもって一週間だろう。
「ドイツ軍の機甲師団はヤバいと聞いていたが、ここまでヤバいとは思わなかったな」
 ロンダはスマホで、史実のフランス侵攻について調べる。
「そもそも、日本のシシドからの通告でベネルクス方面に軍を送っていたはずじゃなかったか?」
「そうなんですが、上層部が戦力の二割程度を引き抜いたそうです」
「そんな馬鹿な。いや、馬鹿と言ったほうが正確なのかもしれないが……」
 ロンダは頭をかく。
「その他、前線が突破されたことで、後方に新しい戦線を構築していることもあり、防衛に十分な戦力が回っていないことも原因の一つです」
「効率が悪すぎる。そうなるのは目に見えて分かるはずなのに、何故それを承認してしまったのか……」
 ロンダは深く考えるのを止めた。
「こうなると、軍事省の高官と直接話をしたほうが早いな。連れて行ってくれないか?」
「そう言われましても、お会いするのは不可能かと思いますが……」
「不可能でも、話をしないと気が収まらない」
「部外者が入れるような場所ではないんですよ」
「なら大統領にでも進言する。ここは大統領の公邸だからな」
「それは困ります……」
 軍事省の職員は本当に困る。
「軍事省に入れないのなら、伝言でも頼んだ方がいいか?」
「それくらいでしたら……」
「まずはイギリスの応援を使うんだ。確か大陸に派遣されてきた部隊がいるはずだ」
「もうすでに動いてますよ」
「何個師団が動いている?」
「四個です」
「四個か……。まだ少ないな……」
 ロンダは顎に手をやる。
「最終的にイギリスは三個軍団ほどを出している。そのレベルをぶつけるほかないんだ……」
「しかし、そんな数を今すぐ揃えるなんて不可能ですよ」
「それでもやるしかない。あぁ、あと、アメリカのレンドリースも使えるなら使うんだ。そうじゃなきゃ、この戦争は勝てない」
 そんなことを話していると、そこに別の軍事省の職員がやってくる。
「ロンダ様、ここにいましたか」
「何かあったのか?」
「はい。先ほどから、マジノ線に対して大規模な爆撃が敢行されています。マジノ線自体に損傷はないものの、前線の兵士の士気が下がっている恐れがあります」
「あぁ……、なんかついに始まったような感じがするなぁ……」
 ロンダは頭を抱える。
「ドイツがいよいよ本気を出してきた感じあるなぁ……。どうしようこれ……」
 ロンダは少し悩んだ後、スマホを取り出す。
「グループチャットに投稿するか……」
 数日ぶりにグループチャットにメッセージが投稿される。
『フランスがピンチだ。ケプファー、ヒトラーに何とかいって戦争を止めてくれないか? コーデンはイギリスの大陸派遣軍をもっと送ってほしい。パドックはレンドリース法を適用して武器の供与を頼む。本当に急いでくれ』
 それに対して、ロバート・コーデンが一言返信する。
『軍備は戦争の音が聞こえてきたときから始めるものでは?』
『それはそうかもしれないが、今はそんな冗談を言っている場合じゃないんだ』
『まぁ、ナチス・ドイツが侵攻してくると困るのは我が国イギリスも同じだからな。首相に進言しておこう』
 コーデンが約束する。
『……本当に戦争するのが正義なのかな?』
 そのようなメッセージを送ったのは、カーラ・パドックである。
『アメリカは列強のうちの一つだ。そのアメリカが何もしないのはちょっと困るし、正義に反していると思うぞ』
 ロンダが少し強い言葉遣いでメッセージを送る。
『でも、戦争よりも話し合いをしたほうが流れる血は少ないのよ?』
『今この状況で話し合いをして、血の一滴でも少なくできるのか?』
『それは……』
 ロンダの詰め寄りに、パドックは言葉を失う。
『理想論ばかり話してないで、少しは現実を見たらどうだ?』
 ロンダの言葉に、パドックは完全に反応しなくなった。
 そんな時に、ケプファーがメッセージを送ってくる。
『今チャットを見たわ。ヒトラーは考えを変える気はないようね。私も何度もヒトラーに言っているのだけど駄目。それに、ヒトラーは私に会いたくないような感じがするわ』
『そっか……。ヒトラーの考えを変えるのは難しいようだね』
『ごめんなさい、力になれなくて』
『大丈夫、こちらはこちらの戦いをする必要が出てきただけだから』
 そういってグループチャットの更新が止まる。
 転生者たちは、少し心にモヤモヤを残すのだった。
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