転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春

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第115話 マダガスカル

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 一九三九年二月二十五日。
 インド洋の沿岸を進む帝国海軍第一艦隊。アラビア海を横断している時だった。
 通信士が、少々奇妙な通信を傍受する。
「なんだこれ……」
 電文の言語は英語、暗号化もせずに平文で打っているようだ。同じ内容を繰り返している。
「弾薬……、燃料……、食料……、援護……、求む……?」
 数十分聞き続け、通信士は内容を理解した。
「オルレアン政権下のマダガスカル島との戦闘で、弾薬燃料食料が底をついて本国に救援を求めている。イギリス艦隊からの発信だ」
 通信室の下士官たちは、少し賑やかにしていた。
 騒いでいたところを士官が叱る。
「貴様ら! 何をしている!」
「実は、イギリス艦隊が困窮しているようで……」
 そういって下士官たちは通信文を士官に見せる。
 それを読んだ士官は、少し嫌な表情をしながらその場を去っていった。
 向かった先は艦長室である。
「艦長、通信室の下士官たちがこのような電文を聞いたとのことです」
「どれ……。本当にイギリス艦隊が?」
「それは下士官に聞かねば分かりませんが……」
 そこに、何の因果か知らないが、山本長官がやってきた。
「どうした? 困った顔をして」
「実は……」
 そしてイギリス艦隊の話をする。
「なるほど……。イギリス艦隊がいるとすれば、十中八九マダガスカル島の一件だろう」
「確か、オルレアン・フランスに足並みを揃えるために、マダガスカル総督がオルレアン政権に追従したという話でしょう?」
「マダガスカル総督は少々弱腰な節があると聞く。ここで我が艦隊が手助けをすれば、総督はすぐにでも鞍替えをし、マダガスカル島を明け渡すことになるだろう」
「しかし、そう簡単に行きますかね?」
「やってみなくては分からないだろう。物事は行動しなければ変わらないのだからな」
 こうして、山本長官の一声により、イギリス艦隊の手助けを行うことになった。
 しかし、これは第一艦隊の、旗艦である大和の中での決定だ。少なくとも、このイギリス艦隊に連絡を取らなければならない。
 山本長官の指示のもと、通信室に士官が戻る。
「お前ら! 今すぐイギリス艦隊に連絡を取れ!」
「は、はい!」
 イギリス艦隊とはすぐに連絡が取れた。
 相手はイギリス海軍太平洋艦隊だという。太平洋にいるほぼ全ての艦艇が集結しているとのこと。本国からマダガスカル島に攻撃をするように指示を受けていたものの、残っている弾薬が少なく、まともな攻撃ができないらしい。
 これから植民地を解放することもあって、現地からの支援は受けられない。そのため、このような惨劇になっているそうだ。
「なんともまぁ、無残と言いますか……」
「これが、かつて七つの海を支配した大英帝国の行く末だとすると、なんとも言えないやるせなさを感じます」
「仕方のないことだ。何事でも終わりはやってくる。無論、我が帝国も、だがな」
 その後のやり取りによって、第一艦隊はマダガスカル島攻略に一枚噛むことになった。
 作戦としては単純明快だ。マダガスカル島北部にあるアンツィラナナを砲撃するだけである。
 正確な砲撃を可能にするため、観測機も飛ばすことにした。
 しかし問題は一つ。
「貴重な弾薬を消費することになります。個人的には反対です」
「それはそうかもしれんな。しかし、困っている人がいるならば、手を差し伸べるべきだろう。それが人情というものだ」
 もとより喜望峰経由でのヨーロッパ遠征である。その道中にある島に立ち寄るくらいはなんともないだろう。
 約五日後。イギリス艦隊とともに第一艦隊は、マダガスカル島アンツィラナナまで二十五キロメートルの所まで接近していた。
「では、艦砲射撃を開始しよう」
「主砲装填急げ!」
 自動装填によって砲に砲弾と装薬が装填され、尾栓を閉じる。
「砲撃準備完了!」
「諸元入力完了!」
「射撃開始」
「うちーかたーはじめっ!」
 主砲から巨大な黒煙が上がる。一斉射であるため、余計に派手に見えるだろう。
 そして砲弾はアンツィラナナの街に降り注いだ。
 五〇センチ砲弾の威力は絶大で、砲弾一発で爆撃機一機に相当するほどだ。
 それを観測機が測定し、修正指示を出す。
「修正諸元入力完了!」
「撃て!」
 こうして、約一時間に及ぶ砲撃が行われた。
 砲弾数としては合計五百発越え。だいぶ撃った方だろう。
「このくらいすれば、総督も失禁することだろう」
「少々やりすぎなくらいですけど……」
「時には過剰なくらいがちょうどいいこともある。今回はそうだっただけだ」
 こうして第一艦隊は、当初の目的通りに喜望峰を目指すのだった。
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