転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春

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第148話 設立

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 時は流れ、一九三九年十月二十七日。スイス、ジュネーブ。
 ここには国際連盟の本部があり、今そこに、ありとあらゆる国家の代表団が詰めかけている。
 各国の代表団が見守る中、国際連盟理事会では、ある採決が採られようとしていた。
『では、本議案に賛成の方。挙手願います』
 議長国のイギリス大使が、英語で呼びかける。それに対し、理事会参加国の大使全員が挙手した。
『賛成多数をもって、本議案を採択します』
 そういって、イギリス大使がガベルでサウンドブロックを叩く。理事会は拍手に包まれた。
 今回採択された議案とは、国際連盟の解散と新たな国際組織の設立させるというものだ。簡単に言ってしまえば、国際連盟を国際連合に改編するということである。
 単純な改編では、また戦争の惨禍を引き起こすかもしれない。そのため、それらを防止するための枠組み作りが中心になる。
 それに、国際連合の設立は転生者たちの強い要望によって実現したものだ。転生者たちの思いは一つ。『戦いたくない』なのだから。
 国際連合設立に際し、転生者たちによる簡単な演説をすることになった。
 まず最初に、スペインの転生者のイザベル・ガルシアからだ。
『私の故郷であるスペインは、今は別の国になってしまっているわ。今から元の形に戻すのはとても大変だと思う。でも、必ず成し遂げられると思うわ。故郷を思う気持ちがあれば、元に戻せるはずだから!』
 次に、イタリアの転生者ミレーナ・メランドリが登壇する。
『アタシは、止まったり現状維持というのが最善だと思ってました。けど、それだけでは駄目だというのを、先の戦争を見て感じたことです。少しずつ変わっていく物事に、アタシも少しずつ変わっていかないと、未来には進めないのだと、そう思ったのです』
 その次に、ソ連の転生者アレクセイ・イグナトフ改め、新生ロシア帝国皇帝アレクセイ一世が登場する。
『祖国を変えるために、僕は皇帝になった。その結果、少なくとも祖国の未来は変わったと思う。僕にはソ連と新生ロシア帝国という、二つの祖国がある。そしてこの二つの国は、いずれ近い将来に歩み寄ることが出来るはずだ。変わりたいと願い続けるならば』
 四番目に、イギリスの転生者ロバート・コーデンが壇上に上がった。
『情報は持っているだけで価値がある。そして、それを利用すれば、もっと価値が現れる。けどそれだけでは、真の価値を見いだせたとは言えない。世界のために、人を騙すのではなく、信じることも大切なのだと、僕はこの戦争を通じて理解した』
 続いて、アメリカの転生者のカーラ・パドックが登場した。
『第二次世界大戦を、私は話し合いで解決することは出来ませんでした。それでも、話し合いを通じて世界は団結することが出来たと思います。これも、人と人が相手の話を聞いてくれた結果だと思っています』
 さらに、フランスの転生者ジル・ロンダが出てくる。
『正直僕は、戦争を回避することばかりを考えていました。しかし僕は、そこにいる人々のことを考えていなかった。これは僕の過ちでもあります。人々のことを考えれば、戦争はもっと簡単に回避できたかもしれない。それだけが心残りです』
 七番目に、第二次世界大戦の戦犯であり、一番の被害国でもあるドイツの転生者、ローザ・ケプファーが現れた。
『私は逃げることだけが全てでした。元いた世界と同じ過ちを繰り返してはいけない。その結果、自分に課せられた使命すら放り出して逃げていました。でも、人々のために立ち上がる勇気を見せられ、自分もそのようになりたいと強く願うようになりました。そして、今日という日を迎えられたと思っています』
 最後に、日本の転生者である宍戸和一が壇上に登る。
『自分の信念として、「戦いたくない」という思いがあります。しかし時として、戦いは自分の外からやってくることもあります。もしかしたら、その戦いは宿命なのかもしれません。自他の利益が一致しないことによる不調和。それが戦争の原因の一つでしょう。そうなれば、戦わないといけない時もある。それでも、不戦の意志を貫くことは出来ます。戦いを避けるための戦いとして。我々は平穏に暮らすことが出来るはずです。我ら人類に、平穏と安寧があらんことを』
 こうして、国際連盟の解体と国際連合の設立によって、人類社会は新たなステージへと進むことになった。
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