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1.転生
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『白蓮君、起きて下さい。』
誰かに体を揺さぶられている感覚に、目が覚める。
『ん…、?…なっ!ど、何処ですか、ここは?!貴方は誰?』
目の前に広がるのは、真っ白の何もない空間と、部屋と同じくらい白い肌を持ち、純白のドレスを着た女性。
『ここは、あなたがいた世界と、異世界を繋ぐ狭間の空間です。そして私は、貴方を異世界へと導く者。名はありません。』
『はあ...?貴方はいったい、何をおっしゃっていらっしゃるのですか?これは夢か何かですか?』
『いいえ。夢ではありません。現実です。…貴方は、貴方が居た世界で
死にました。だからこうして、私は今あなたに第二の人生と、使命を与えようとしているのです。』
『ぼ、僕が死んだ…?いったい、なぜ、どうして…!』
『一言でいうなら…過労死ですね。……っと、雑談はここまでの様です。白蓮君、これからあなたが向かう世界は、元居た世界よりも楽しく、美しく、そして困難な世界でもあります。ですが、貴方には強い味方が必ずどこかにいるはずです。そのことを決して忘れずに、異世界の民を、貴方の仲間となる者達の命をお救い下さい。』
光が僕等を包む。
『それでは、また、何処かで―――』
待って、と言う前に彼女は姿を消してしまった。
「……ッ?」
ハッと、目を覚ます。見慣れない天井に驚いて、ガバリと起き上がった。
〈アル、目が、覚めたのか?〉
「?…わっ!」
何処からか声が聞こえると思えば、自分の目の前に、赤い髪と、深紅の瞳をした小さな精霊が羽ばたきながらこちらを見ていた。
「レツカでしたか…。」
〈悪い、驚かせてしまったな。〉
大丈夫です、と軽く微笑むと、炎の精霊、レツカは心配そうにしながらも微笑み返してくれた。
〈三日も眠っていたが、調子はどうだ?〉
「少し体が重いですが、さほど苦しくはありませんよ。」
〈そうか…。アルが目覚めたことを皆にも知らせてくる。少し待っていてくれ。〉
レツカはそう言って、パタパタと飛び去って行った。
ゆっくりと、自分の記憶を手繰り寄せる。
僕のこちらの世界での名前はアルフレイドで、前世の名は立華 白蓮。
どうやら、三日前にあの村を襲った帝国魔導士団から逃げてきた僕は、小屋に着いてすぐに気絶してしまったらしい。
そして、その気絶をしている間に僕は前世の記憶を思い出した…。
はぁ、と小さくため息を吐き、ふと、部屋にある鏡に目線を向ける。
鏡の中にいる自分の顔は前世とさほど変わらない。が、黒だった髪は白銀色で背中の中央まで伸びているし、同じく真っ黒だった自分の目は澄んだ空と同じ水色だった。
まだ、にわかには信じがたくて、とりあえず頬をつねってみる。
痛みがある。
夢じゃない。
現実だ。
やはり、先刻出会った彼女の言う通り、僕は……死んでしまったのだ。
誰かに体を揺さぶられている感覚に、目が覚める。
『ん…、?…なっ!ど、何処ですか、ここは?!貴方は誰?』
目の前に広がるのは、真っ白の何もない空間と、部屋と同じくらい白い肌を持ち、純白のドレスを着た女性。
『ここは、あなたがいた世界と、異世界を繋ぐ狭間の空間です。そして私は、貴方を異世界へと導く者。名はありません。』
『はあ...?貴方はいったい、何をおっしゃっていらっしゃるのですか?これは夢か何かですか?』
『いいえ。夢ではありません。現実です。…貴方は、貴方が居た世界で
死にました。だからこうして、私は今あなたに第二の人生と、使命を与えようとしているのです。』
『ぼ、僕が死んだ…?いったい、なぜ、どうして…!』
『一言でいうなら…過労死ですね。……っと、雑談はここまでの様です。白蓮君、これからあなたが向かう世界は、元居た世界よりも楽しく、美しく、そして困難な世界でもあります。ですが、貴方には強い味方が必ずどこかにいるはずです。そのことを決して忘れずに、異世界の民を、貴方の仲間となる者達の命をお救い下さい。』
光が僕等を包む。
『それでは、また、何処かで―――』
待って、と言う前に彼女は姿を消してしまった。
「……ッ?」
ハッと、目を覚ます。見慣れない天井に驚いて、ガバリと起き上がった。
〈アル、目が、覚めたのか?〉
「?…わっ!」
何処からか声が聞こえると思えば、自分の目の前に、赤い髪と、深紅の瞳をした小さな精霊が羽ばたきながらこちらを見ていた。
「レツカでしたか…。」
〈悪い、驚かせてしまったな。〉
大丈夫です、と軽く微笑むと、炎の精霊、レツカは心配そうにしながらも微笑み返してくれた。
〈三日も眠っていたが、調子はどうだ?〉
「少し体が重いですが、さほど苦しくはありませんよ。」
〈そうか…。アルが目覚めたことを皆にも知らせてくる。少し待っていてくれ。〉
レツカはそう言って、パタパタと飛び去って行った。
ゆっくりと、自分の記憶を手繰り寄せる。
僕のこちらの世界での名前はアルフレイドで、前世の名は立華 白蓮。
どうやら、三日前にあの村を襲った帝国魔導士団から逃げてきた僕は、小屋に着いてすぐに気絶してしまったらしい。
そして、その気絶をしている間に僕は前世の記憶を思い出した…。
はぁ、と小さくため息を吐き、ふと、部屋にある鏡に目線を向ける。
鏡の中にいる自分の顔は前世とさほど変わらない。が、黒だった髪は白銀色で背中の中央まで伸びているし、同じく真っ黒だった自分の目は澄んだ空と同じ水色だった。
まだ、にわかには信じがたくて、とりあえず頬をつねってみる。
痛みがある。
夢じゃない。
現実だ。
やはり、先刻出会った彼女の言う通り、僕は……死んでしまったのだ。
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