異世界でエルフに転生したら狙われている件

12.弔事

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(※アルフレイドsideに戻ります)




宿に戻ってから、僕はミリアさん達にも何も言わず、自分の部屋に籠った。


月も隠され星も見えない今日の夜空と同じように、酷く気が重い。

ベッドに寝転がって、長い長い溜息を吐いた。






コンコンと、部屋の扉が叩かれる音がして僕は読んでいた本から目を離し、顔を上げた。

「アル。ミリア私だけど、ちょっと入ってもいいかしら？」

「…あ、はい。どうぞ。」

本を閉じて、扉を開ける。

「よぉ、アル。元気か？」

ミリアさんだけかと思ったら、ファルコンさんもいて少し驚く。

「少し、お話しましょ。」

そう言って、ミリアさんはしなやかな尻尾を揺らした。













「――――――そう、だったのね。」

僕は、二人に今回起きたことの顛末を話した。

もちろん、シークさんが一瞬璃黄に成り代わったことなどは除いてだが。

「…でも、そのシークっていう吸血鬼。実際は誰も殺してねぇぞ。」

「え？」

ファルコンさんの言葉に、僕は驚きが隠せず大きく目を見開いた。

「確かにあの小屋の中に攫われた子供たちは多くいたが、誰も死んでないし、体に異常もない。あのリヒトとかいう少年の妹だって無事だったらしいぜ。」

「で、でもリヒトは、ハルカちゃんが死んでるところを見たと…！」

「あー、あれな、魔力量が少なかったり子供だと、血を吸われたりするだけで魔力が枯渇して、まるで枯れたようになっちまう、一時的に起きることなんだよ。だから数時間から数日たてば勝手に魔力が回復して、体も元に戻る。
もっとも、大人の場合は血吸われた時点で死ぬけどな。

つまり、最初から大人を襲わず、子供しか選ばなかったってことは、シークって野郎はもともと、誰も殺す気はなかったんだろうな。」


面白い吸血鬼がいたもんだ、とファルコンさんは笑った。






僕は、机の上に置いた石を徐に手に取った。

シークさんが灰となって消えた後に残された黄色の石。
それはまるで太陽のように煌めいて、ほのかに熱を持っていた。

璃黄とシークさんは二人とも同じ黄色い瞳をしてた。

だからこの石を持っているとまるで、シークさんや璃黄二人が、『ここにいるよ』と言っているような気がして。



ぽろぽろと、頬を涙が伝い出した。

ミリアさんとファルコンさんが、驚いたように顔を見合わせて、次に僕を見た。




「アル…、。」

嗚咽を堪えて泣く僕の頭をミリアさんの手が優しく撫でて、抱き締めてくれる。



苦しむシークさんに、ただその様子を見ていることしか出来なかった自分がたまらなく憎くて。





とどまることを知らない悲しみが、大粒の涙となって僕の頬を濡らした。