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行ってらっしゃい

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「いってらっしゃい」
     「愛してる」
  「次は、うまくできるはず」
              「また会おう」
          「エメラル」
  「またね!」


何もない、全てが存在しない空間から産声が響いていく。
その音で、僕は目覚めたのだろうか?
空間をまるで流されるかのように進んでいく。
後ろから無数の塵が僕を追いかけてきた。

僕はここに一人で生まれたのだろうか?
塵を見つめながらそう思った。


そう思って僕は大きな声で叫んでみた。
しかし声は遠くまで響くどころか喉も震えなかった。
自分には体がなかったのだ。

僕は一体何者なんだ?

そう疑問に思いながら、誰かを呼び求めるために塵を集めようとして
存在しない体を使い哲学で塵を集め、やがてそれが体となっていく。

そして、途方もない時を過ごした後、やっとのことで体が出来上がった。
僕はここにいる。
自分自身の存在を見つめながら再び声を出し、叫んだ。
「おーい!」
途方もない空間の彼方に自分の声が響いていく。
返事を待つ。
ひたすら待ち続ける。
けれども、返っては来なかった。
ようやく探す為の力を得たというのに、この世界には僕以外の誰もいなかったのだ。

しかし悲しむことはなかった。
存在しない物を作り出すことのできた私にとって、他の存在を作り出すのは容易だと思ったからだ。

私は再び塵を集め始める。
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