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第11話 ドラゴン
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なまじ自分の実力が上がっているからこそ、彼我の差を実感する。
いつかは身を焼くほどに湧いていた怒りもまるで初めからなかったかのように消えてしまい、代わりに焼かれたあの日の恐怖が湧いてくる。
足がすくみ、自分が立てているのかすら分からない。
ひとつの諦観のようなものが生まれ、蛇に睨まれた蛙ということわざはまさしくこんな状態を指すんだな、なんてことを呑気に考え始める。
...あの頃の自分にとってドラゴンとはそれほどに、大きな存在だった。
ドラゴンの真珠のような眼球に浮かぶ、縦に長い瞳孔がこちらを向く。
俺は全く動くことができないまま、その目をじっと見ることしかできない。
口が開く。
二股に別れた舌がチロリと舌なめずりを始める。
全く動かない俺を不思議に思ったのか、少しずつドラゴンの顔が近づいてくる。
ドラゴンの舌が俺の顔に近づく。
このまま自分が食べられることを想像し、途端に恐怖で凍ってしまっていた自分の体が動き始める。
ここで死ぬわけには行かない、その一心で近づくドラゴンの舌に対して、自らの最高火力である魔法をぶつけようとするが、恐怖によりうまく想像することができず、魔法が発動しない。
魔法の発動を諦め、逃げようと少しずつ後退し始める。
動き始めた俺を見て、遂に餌と認識したのかドラゴンは舌を素早く動かし俺を右から巻き取ろうとするが、その舌が俺に触れる瞬間、急にその舌は自動防御によって動きを止める。
ドラゴンは舌は止められたことが不思議なのか、今度は右の手を大きく上げて俺を叩き潰そうと振り下ろす。
目の前まで手が迫った時、またしてもその手は自動防御により止まり、手によって周りは全く見えないがドラゴンが痛がっているのか鳴いている声が聞こえる。
自動防御により自分が攻撃を受けることがないことに気づいた俺は、すぐに自分が最も得意とする魔法を使う。
「サンダーランス」
その言葉と共に、雷が槍の様に鋭く整えられたものが出現する。
その雷の槍を握りしめ、未だに自動防御に阻まれているドラゴンへ向けて突き刺す。
ドラゴンの手から守っているはずのシールドは、そうとは思えないほどすんなりと雷の槍を通し、通った雷の槍はドラゴンの掌へと刺さる。
ドラゴンから血が噴き出る。
肉が焼ける匂いと音がする。
全く勝てる気がしなかったドラゴンとも、自分が戦えるほど強くなっていることに気づき、恐怖ですくんでいた心が再び怒りに染まる。
雷の槍が刺さったことでドラゴンはすぐに手を離す。
手によって塞がれていた視界が回復し、ドラゴンの方を見ると俺の方を警戒しているかのように少し後ろに下がっている。
そのドラゴンの胴に向けて、俺は再び生成した雷の槍を投げるが、翼の一振りでかき消される。
自分の最高火力の魔法が埃のように吹き飛ばされたことでドラゴンの出方を待つしかなくなる。
ドラゴン側も自分の攻撃が防がれていることが不思議なのか雷の槍を防いだ後もこちらに向けて攻撃する様子はない。
少しの間睨み合っていたが、不意にドラゴンが大きく息を吸う――――ブレスだ。
気づいた俺はすぐに階段の方へ駆け出すが、階段につくよりも早くブレスが発射される。
全身が熱いが、前回のように体が焼けている様には感じない。
ついに自動防御がブレスまで耐えられる様になっていることに感動するが、炎が邪魔で足元しか見えない。
30秒ほど経った頃、ようやく炎が消え周りが見える様になり、黒くなった元2階層を横目にドラゴンの方を見据える。
ブレスが効いていないことに動揺しているのか少し間抜けな顔をしているドラゴンだが、すぐにイラつきに変わったのか噛みつこうとする。
目の前までドラゴンの大きな牙が迫るが、自動防御のシールドによって突然止まる。
目の前で止まった牙がシールドにヒビを入れ始めていることに焦りを感じながら、俺は魔法を発動させる。
「スパークボム、サンダーランス」
ドラゴンの口の中で発生した雷が瞬時に爆発する。
ドラゴンは突然の痛みに驚き暴れようとするが、動き出す前に雷の槍を無防備な目へと突き刺す。
大きくドラゴンが暴れ出す。
俺は雷の槍ごと体を引き摺られ槍を手放してしまいそうになるが、両手で強く槍を握りしめる。
感電によってか、ダメージの大きさかは分からないが動きが少し落ち着き始めた頃、さらに奥へと雷の槍を押していく。
一際大きくドラゴンが暴れ出すが、雷の槍がついに脳を傷つけたのかビクンと大きく震え、ドラゴンは動きを止める。
こうして俺は、初めてドラゴンを殺すことに成功した――――――
――――――――――――――
レッサードラゴン(幼体) 危険度3
勇者になって間もないなら、少し苦戦するかもしれない。
近くに親がいる可能性もあるため手を出すことは推奨しない。
肉はかなり美味しい。
(伝説の勇者の手記より抜粋)
――――――――――――――
魔法について、長めの詠唱を言うか、せめて魔法名だけは言っているほうが、威力や生成スピードが上がります。
これは魔法名を言うことによって自分の脳内からコピペしてきてるイメージだと思ってください。
例 水の魔法→水のボール、蛇口の水など
イメージがばらけてしまう
ウォーターボール→水のボールのみ
長めの詠唱については、例えば炎なら想像する上でしっかりと温度や色、酸素まで想像できた方が火力を上げられるためです。
例 炎の魔法を使いたい→炎を想像(弱い)
炎の魔法を使いたい→色、形、そして必要な
酸素や温度などまで想像(強い)
いつかは身を焼くほどに湧いていた怒りもまるで初めからなかったかのように消えてしまい、代わりに焼かれたあの日の恐怖が湧いてくる。
足がすくみ、自分が立てているのかすら分からない。
ひとつの諦観のようなものが生まれ、蛇に睨まれた蛙ということわざはまさしくこんな状態を指すんだな、なんてことを呑気に考え始める。
...あの頃の自分にとってドラゴンとはそれほどに、大きな存在だった。
ドラゴンの真珠のような眼球に浮かぶ、縦に長い瞳孔がこちらを向く。
俺は全く動くことができないまま、その目をじっと見ることしかできない。
口が開く。
二股に別れた舌がチロリと舌なめずりを始める。
全く動かない俺を不思議に思ったのか、少しずつドラゴンの顔が近づいてくる。
ドラゴンの舌が俺の顔に近づく。
このまま自分が食べられることを想像し、途端に恐怖で凍ってしまっていた自分の体が動き始める。
ここで死ぬわけには行かない、その一心で近づくドラゴンの舌に対して、自らの最高火力である魔法をぶつけようとするが、恐怖によりうまく想像することができず、魔法が発動しない。
魔法の発動を諦め、逃げようと少しずつ後退し始める。
動き始めた俺を見て、遂に餌と認識したのかドラゴンは舌を素早く動かし俺を右から巻き取ろうとするが、その舌が俺に触れる瞬間、急にその舌は自動防御によって動きを止める。
ドラゴンは舌は止められたことが不思議なのか、今度は右の手を大きく上げて俺を叩き潰そうと振り下ろす。
目の前まで手が迫った時、またしてもその手は自動防御により止まり、手によって周りは全く見えないがドラゴンが痛がっているのか鳴いている声が聞こえる。
自動防御により自分が攻撃を受けることがないことに気づいた俺は、すぐに自分が最も得意とする魔法を使う。
「サンダーランス」
その言葉と共に、雷が槍の様に鋭く整えられたものが出現する。
その雷の槍を握りしめ、未だに自動防御に阻まれているドラゴンへ向けて突き刺す。
ドラゴンの手から守っているはずのシールドは、そうとは思えないほどすんなりと雷の槍を通し、通った雷の槍はドラゴンの掌へと刺さる。
ドラゴンから血が噴き出る。
肉が焼ける匂いと音がする。
全く勝てる気がしなかったドラゴンとも、自分が戦えるほど強くなっていることに気づき、恐怖ですくんでいた心が再び怒りに染まる。
雷の槍が刺さったことでドラゴンはすぐに手を離す。
手によって塞がれていた視界が回復し、ドラゴンの方を見ると俺の方を警戒しているかのように少し後ろに下がっている。
そのドラゴンの胴に向けて、俺は再び生成した雷の槍を投げるが、翼の一振りでかき消される。
自分の最高火力の魔法が埃のように吹き飛ばされたことでドラゴンの出方を待つしかなくなる。
ドラゴン側も自分の攻撃が防がれていることが不思議なのか雷の槍を防いだ後もこちらに向けて攻撃する様子はない。
少しの間睨み合っていたが、不意にドラゴンが大きく息を吸う――――ブレスだ。
気づいた俺はすぐに階段の方へ駆け出すが、階段につくよりも早くブレスが発射される。
全身が熱いが、前回のように体が焼けている様には感じない。
ついに自動防御がブレスまで耐えられる様になっていることに感動するが、炎が邪魔で足元しか見えない。
30秒ほど経った頃、ようやく炎が消え周りが見える様になり、黒くなった元2階層を横目にドラゴンの方を見据える。
ブレスが効いていないことに動揺しているのか少し間抜けな顔をしているドラゴンだが、すぐにイラつきに変わったのか噛みつこうとする。
目の前までドラゴンの大きな牙が迫るが、自動防御のシールドによって突然止まる。
目の前で止まった牙がシールドにヒビを入れ始めていることに焦りを感じながら、俺は魔法を発動させる。
「スパークボム、サンダーランス」
ドラゴンの口の中で発生した雷が瞬時に爆発する。
ドラゴンは突然の痛みに驚き暴れようとするが、動き出す前に雷の槍を無防備な目へと突き刺す。
大きくドラゴンが暴れ出す。
俺は雷の槍ごと体を引き摺られ槍を手放してしまいそうになるが、両手で強く槍を握りしめる。
感電によってか、ダメージの大きさかは分からないが動きが少し落ち着き始めた頃、さらに奥へと雷の槍を押していく。
一際大きくドラゴンが暴れ出すが、雷の槍がついに脳を傷つけたのかビクンと大きく震え、ドラゴンは動きを止める。
こうして俺は、初めてドラゴンを殺すことに成功した――――――
――――――――――――――
レッサードラゴン(幼体) 危険度3
勇者になって間もないなら、少し苦戦するかもしれない。
近くに親がいる可能性もあるため手を出すことは推奨しない。
肉はかなり美味しい。
(伝説の勇者の手記より抜粋)
――――――――――――――
魔法について、長めの詠唱を言うか、せめて魔法名だけは言っているほうが、威力や生成スピードが上がります。
これは魔法名を言うことによって自分の脳内からコピペしてきてるイメージだと思ってください。
例 水の魔法→水のボール、蛇口の水など
イメージがばらけてしまう
ウォーターボール→水のボールのみ
長めの詠唱については、例えば炎なら想像する上でしっかりと温度や色、酸素まで想像できた方が火力を上げられるためです。
例 炎の魔法を使いたい→炎を想像(弱い)
炎の魔法を使いたい→色、形、そして必要な
酸素や温度などまで想像(強い)
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