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第二章 生きるために
第十三話 ~待ち伏せ~
しおりを挟む..ザワ...ザワザワ....
「!?
今何か聞こえなかったか?」
森のけもの道を30分程歩いただろうか。
不自然な音に気が付き小声でサヤに問いかける。
「え?風で気が揺れた音じゃなくてですか?」
「違う気が... 後ろだ!!!」
サヤの後ろ側からこちらに目掛けて走って向かってくる一頭のウサギがいた。
「シャドウ・キャッチ!」
咄嗟に振り返ったサヤがスキルを使ってくれた。
「さ、さすがだな。動きを止めるってやっぱり強いな。」
「ユウくん!お願いします!」
サヤは『シャドウ・キャッチ』を使っている間はその場から動けなくなる。
そのため俺がこうするしかない。
「うらぁぁぁ!!!」
ウサギ型のモンスターを思いっきり蹴り上げる。
「ふう。」
蹴られたウサギ型のモンスターは奥に飛ばされ光って消えた。
モンスターが倒れた時のエフェクトだ。
「5匹目ともなると手慣れたものですね!」
スキルを解除したサヤが話しかけてくる。
ザワザワザワザワ...…
「サヤ。まだだ。まだ何かいる。」
どこだ。耳を澄ませ全神経を集中させる。
ザワ…
左か!
左を向き全体を観察する。
特に変わったものはないが…
「気のせいか...?」
「ユウくん、あそこ。」
サヤがけもの道を外れた木々の中を指さしながら言う。
「ん?あれは…」
大きな木の裏から明らかな人工物の一部かはみ出ている。
「宝箱か?」
「そうみたいですね。でもこの状況って...」
普段の俺ならテンションが上がって宝箱に駆け寄ってしまうだろうが、この状況はサヤも感じている通りおかしい。
おそらく待ち伏せされている。
「どうしますか?逃げますか?」
「いや、おそらくこの状況は戦うしかない。
わざわざ油断した時を狙うために待ち伏せするくらいだ。今までのウサギとは違う。万が一コイツの方が早かったら無防備で攻撃されてしまう。」
そうは言ったものの、ゆっくり考えている時間もない。
「俺が宝箱に近づくから『シャドウ・キャッチ』が使えるギリギリの距離で着いてきてくれ。」
「でもそれじゃあユウくんも動けなくなっちゃいますよ。」
「…俺が離れてから使ってくれ。」
「あ、はい。」
「それじゃあ行くぞ。」
少しずつ宝箱に近づいていく。
不意を突かれて交戦するのではなく万全の状態で交戦するんだ。
ザワザワ...
けもの道を外れ足元が悪い中、あと10歩ほどで宝箱というところで敵が動いたようだ。
左側の草木が揺れるのが見えた。
咄嗟に身をかがめて姿勢を低くする。
「グウゥゥ!!!」
何かが草木の中から飛び出し体勢を低くした俺の真上を飛び越えていく。
「サヤ!」
「『シャドウ・キャッチ』!」
着地した敵をタイミングよく『シャドウ・キャッチ』で捕まえることに成功した。
「これは…」
捕まえた敵はウサギ型のモンスターと大きさ自体は変わらないようだが、小さな人型のシルエット、発達した筋肉、額から生えている一本の角、その体躯と同じくらいの大きさのこん棒、緑の体色。
「ゴブリンってやつか…?」
「私、生で見るの初めてです。」
「そりゃあそうだろう。」
目の前に現れた、まさしくモンスターといえる敵にあっけに取られて気力のないツッコミになってしまう。
ゴブリン…というのが正しいのかはわからないが、『シャドウ・キャッチ』で捕まえられたゴブリンはその場から動けなくなったものの、上半身でこん棒を振り回している。
「ユウくん、早く倒してください!」
「ゴ、ゴメン。」
確かにこんなやつが近くで暴れていたら怖いだろうな。
俺はゴブリンの後ろに回り、いつものように右足を後ろに振りかぶる。
ドゴォ!!!!!
「グハッ...!」
俺の体は吹き飛ばされ背中から木に打ち付けられた。
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