彼には溺愛する幼馴染が居ますが…どうして彼女までこの家に住む事になっているのです?

coco

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彼には溺愛する幼馴染が居ますが…どうして彼女までこの家に住む事になっているのです?

「今彼女と話して居るんだ、見て分からないのか!」

「…気が利かない女ね、本当に邪魔なんだから。」

「俺の婚約者がすまない、どうか気を悪くしないでくれ。」

 あなたは私の婚約者でしょ?
 どうして私を蔑ろにし、彼女の機嫌を取るの?

 というか…どうして彼女まで、この家に住む事になっているのです─?

 彼女は、彼の幼馴染で…そして美しい女で、男たちの心を掴んで離さなかった。
 
 そして彼も、そんな彼女をとても気に入っている。

 いや…一人の異性として、彼女を愛しているんじゃないかしら。

 だって彼は、お酒に酔うといつもこう口にする。

 婚約者にするなら彼女が良かった…なのに父が許してくれない、と─。

 婚約し一年、私はこの状況に耐えた。
 でも全く改善されなくて、それどころか─。

「君の気が済むまで、いくらだってこの家に居ていいから。」

「でもあの子が、私の事を邪魔って言うに決まってるわ。」

「俺がそんな事言わせるものか!むしろ…あいつの方が邪魔者だから。」

「そっか…だって私たちは、あの子があなたの婚約者に決まる前からの付き合いだものね。確かに、邪魔者はあの子の方ね。」

 信じられない…。
 親と喧嘩し行く当てがないから、少しの間だけお世話になる…そういう話だったのに。
 
 しかも私、完全に邪魔者扱いされてるわよね?
 
 もう、ここに居るのが嫌になってしまった…。

 彼女が居る限り、そして彼の心が変わらない限り、ここには居たくない─。

※※※

 気が付けば、婚約者であるあの女が消えていた。
 
 そして部屋には、置手紙が─。

「私は家出します、もうあなたたちの仕打ちに耐えられません…?フン、俺たちが何をしたって言うんだ。待てよ…こいつが勝手に出て行ったんだ。だったら、このまま婚約破棄しても構わないじゃないか!それで俺は彼女と─!」

 そしてその手紙を見た彼女は、満面の笑みを浮かべた。

「私…本当はずっと、あなたと二人で暮らしたかったの。あなたの事は幼馴染としてだけでなく、一人の異性としても好き。」

 そうか、俺たちは両想いだったのか…。

 俺は喜びの余り、彼女の身体を抱き寄せた。

 するとそこに、俺の父が怒った顔で飛び込んで来た。

「お前…よくもそんな娘と─!」

「父上、丁度良かった。実は俺の婚約者が家出しましてね。だからこれを機に、あいつと婚約破棄を─」

「馬鹿者!せっかくこの父がお前の為に彼女を…もういい、お前はその娘と共にこの家を出て行け!」
 
「な、何ですって!?ここは俺の家でしょう…?どうして追い出されなきゃ─」

「この家はな、お前の名義ではない。そもそも、この家はお前と彼女が将来幸せに暮らす、その為に建てた家。その金は、全てあちらの家が出してくれたんだぞ!」

「えぇ!?だって、あいつの家はしがない画家の父と、家に引き籠りの母が居る…そういう家ですから、とてもそんな金は…。」

「私の父は、王家の方々にもその実力を買われている画家です。そして母は、この国一の魔術師…何もせず家に籠って居るのではありません。」

「お前…戻って来たのか!」

「道中、あなたのお父様にお会いして…どうしてもと引き止められてしまったのよ。」

「彼女は我が家にとってとても大切な娘だ。王家との繋がりがあり、母親譲りの強い魔力が備わった娘など、そう居ない。だからお前の婚約者になって貰い、そして大事にするように言ったのに…。思い返せば、お前はその娘とベタベタしていて、ろくに話を聞いてなかったな。」

「そ、それは…。」

「私はあなたのお父様に、あなたとその女が居る限り家には戻らないと言ったの。そしたらお父様が、あなた達を追い出してくれるって言うから…だから戻って来たんです。」

「彼女には、お前の弟と婚約して貰う。あいつはお前と違い真面目で誠実な男だ。そして、この地に戻ってくる事を漸く了承してくれたからな。だから、愚か者のお前はもう要らん。」

「そ、そんなぁ…。」

「ま、待ってよ…私は関係ないでしょう?」

「あなたのお父様も、あなたみたいな男好きで金遣いの荒い娘は要らない…もう親子の縁を切ると仰ってましたよ。あなたは彼が好き。そして彼もあなたが好きなんだから、丁度いいじゃない?二人揃って、ここから消えて頂戴─。」

※※※

 そうして二人は、揃ってこの家を…そして、この地を出て行く事になった。

 二人は揃って両親たちから勘当されてしまった為、誰も救いの手を伸ばす者は居なかった。
 
 お坊ちゃま育ちの彼と、世間知らずの我儘女…頼る者も行く当てもないんじゃ、この先さぞ苦労するでしょう─。

 そして私はというと、あれからずっとあの家で暮らしている。

 ただし、住む相手があの二人から彼の弟君に変わったけれども。

 弟君は別の地で仕事に勤しんでいたという、働き者で真面目で…何より、私だけを愛してくれる素敵な方だった。

 こんな方と共に暮らせるなんて…そしてもうすぐ妻になる事が出来るだなんて、夢のようね。

 両親にこの家をプレゼントして貰ってから、私は初めて幸せを感じているわ─。

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