浮気の果てに私を捨てた愚かな婚約者は、これまでに授かった幸運を全て失う事になりました。

coco

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浮気の果てに私を捨てた元婚約者は、これまで授かった幸運を全て失う事になりました。

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 繰り返される浮気をとがめる私に、婚約者は冷たくこう返した。

「お前にはもう飽きたんだ、婚約破棄してくれ。それにあたり、お前にはこの家を出て行って貰う。元々、お前は俺の亡き父に拾われた女…この家とは何の縁もないんだ。」

 そう…私は傷付き動けなくなっていた所を、偶然通りかかった彼のお父様に助けて頂いた。
 そして親切にも家に置いて頂く事ができ、今日まで生きて来られたのだ。

「お前との婚約をすすめた父は、もうこの世に居ない。だから、もう大人しく言う事を聞く必要はない。」

「…分かりました。今までお世話になりました。」

 私は涙を流し、彼に別れを告げた─。

※※※

 幸運の女神だか何だか知らんが…俺はあんな地味女と婚約などしたくなかった。

 せっかく金持ちになったんだ、俺はもっと美人で身分のしっかりした女を婚約者に…そしていずれは妻に迎えたい。

 俺の家は、元々貧乏だった。
 そのせいで母は家出し、家には父と体の弱い俺が暮らしていた。

 そんな時、父があの女を拾って来たのだ。

 この子は自分たちにとって幸運の女神…大変有難い存在だから、大事にしないといけない、と父は言った。

 そしてしばらくすると、俺の家に偶然にも大金が舞い込んだ。

 それを元手に父は事業を始め、大成功。
 ボロボロだった家は、それは見事な豪邸となった。
 更には、病弱だった俺も健康な体に…父はあの女に泣いて感謝した。
 
 その頃だな、父が俺にあの女と婚約するよう言い出したのは。

 だが…正直言って、俺はあの女が邪魔だった。
 
 あの女が居なければ、俺の家の金は俺たちが…いや、俺が使えるのに。
 あの女の食べ物や服に使う金が惜しい、勿体ない!
 どうせ使うなら…もっと俺好みの美人の女に使いたい。

 一旦そう思うようになると、とことんあいつの存在が鬱陶うっとうしくなった。

 だから俺は父亡き後、当てつけの様に浮気を繰り返した─。
 
「ねぇ、何を考えてるの?もっと私に構ってよ!」

 昔を思い出しぼんやりする俺に、傍にいた愛人がねた様子ですり寄って来た。

 俺は彼女の機嫌を直そうと、手を伸ばした。
 が、愛人は叫び声を上げると、すぐに俺から離れた。

「あなた、その手─!」

 見れば、たくましかった俺の手はやせ細り、肌もシワシワに…。

 驚いた俺は、近くにある鏡に駆け寄った。

 するとそこには、骸骨がいこつのように細くなった体と、青白く生気のない顔が映っていた。

 これは…病弱だったころの俺そのものじゃないか─!

 俺のあまりの変わりように、愛人は家を飛び出して行ってしまった。

 それからだ…事業が急激に傾き始めたのは。
 更にどういう訳か、俺の家に害虫がき、とてもそこに住めなくなってしまった。

 そして俺が家の事で手間取っている間に、事業は完全に立ち行かなくなり…多額の負債だけを残す事に─。
 更に俺は不治の病におかされ…今を生きているだけで精一杯、という状態になってしまった。

 だが、それでも容赦ようしゃなく借金の返済を迫られ…俺はとうとう夜逃げする羽目に─。
 
 何人もいた愛人たちは、皆俺を見捨てた。
 あんなに金を使い愛てやったと言うのに、あいつらは俺に何もしてくれなかった…。

 その後、俺はある町に行き着いた。
 そこは何かのお祭りの最中らしく、大賑おおにぎわいだった。

 道行く人に聞けば、悪者に狙われ行方をくらましていた聖女が、無事帰還したお祝いだと言う。

 クソ…俺はこんなにも不幸だと言うのに、祭りとはいい気なものだ。
 一体その聖女とやらは、どんな女だ?

 俺はもうすぐここを通る聖女を見る為、近くにあった階段に座り込んだ。

 そして豪華な馬車が通り、そこに乗って居たのは…あの女!?

 馬車は俺の前でピタリと止まり、窓からあの女が顔を出した。

※※※

「やはり…何もかも失ってしまったのね。でも、それも当たり前ですね、神に愛されし聖女の私を捨てたんだもの。幸運の女神と呼ばれた私が消えたのだから、あなたの家は…そしてあなたの身体は元通りという訳です。」

「お、お願いだ…お前が聖女なら、もう一度俺の元へ─」

「それは無理よ、私はもうすぐ王子の元へ嫁ぐの。これは、その為のパレードでもあるのよ。」

「お前の正体を知っていたら、俺はお前を捨てなかったのに…!」

「私は…あなたの様な男と、一生を生きる事にならなくて良かったと今は思ってます。では、私はもう行きますね。残り少ない命を、どうかお大事に─。」

 私の言葉に、彼は絶望の表情を浮かべその場に崩れ落ちた。

 その後王子の妃となった私は、お城で暮らして居る。
 王子に愛され、大事にされる毎日はとても幸せで…あのおろかな男の事など、今はもうほとんど忘れてしまったわ─。
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