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たっちゃん
しおりを挟むたっちゃんは黒板に書かれた今日の日付を見て、うーんと首を傾げた。
「まだ二ヶ月くらいあるけど。たしか、冬休み入ってすぐだったよね。冬休み、三日目だっけ。去年はクリスマスだったね」
たっちゃんはそう言って、女の子みたいに長く伸ばした黒髪をかきあげた。
あたしはたっちゃんの女の子らしい仕草に、苦笑した。似合っていないわけじゃない。むしろ、男の子だと言わなければ、たっちゃんは普通にそこらへんにいる女の子に見える。それだから、自分の恋がどれだけ不毛かをわかってしまう。
たっちゃんは男の子だけど女の子だ。
彼が初めて男の子を好きになったのは小学五年生の時。それまでは、たっちゃんはただの男の子だった。あたしの知っているままの男の子だった。だけどある日あたしに自分は女の子だと言い出して、それから、たっちゃんはあっという間に女の子になった。中学生になってから、たっちゃんは女の子の格好をするようになった。髪を伸ばして、制服はスカートを履いた。体育は男女別だから出なくなった。いつも保健室でサボってる。たっちゃんは入学式のときから女の子の格好をしていたけど、彼が男の子だってことは学校のほとんど全員が知っている。こういうことは広まるのが早いものだから。でも、もうみんなたっちゃんには慣れた。からかってくる生徒や嫌なことを言う先生、噂話はまだ消えないけど、案外穏やかに暮らせるもんだ。
たっちゃんは女の子だから、男の子を好きになる。だからたっちゃんが、女の子のあたしを好きになってくれることはない。たっちゃんがあたしに気になる男の子の話をするあたり、完全に脈なしだ。だけどあたしは、異性として何年も前からたっちゃんが好きだ。今更、諦められない。
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