上 下
3 / 114

たっちゃん

しおりを挟む

たっちゃんは黒板に書かれた今日の日付を見て、うーんと首を傾げた。
「まだ二ヶ月くらいあるけど。たしか、冬休み入ってすぐだったよね。冬休み、三日目だっけ。去年はクリスマスだったね」
 たっちゃんはそう言って、女の子みたいに長く伸ばした黒髪をかきあげた。
 あたしはたっちゃんの女の子らしい仕草に、苦笑した。似合っていないわけじゃない。むしろ、男の子だと言わなければ、たっちゃんは普通にそこらへんにいる女の子に見える。それだから、自分の恋がどれだけ不毛かをわかってしまう。
 たっちゃんは男の子だけど女の子だ。
 彼が初めて男の子を好きになったのは小学五年生の時。それまでは、たっちゃんはただの男の子だった。あたしの知っているままの男の子だった。だけどある日あたしに自分は女の子だと言い出して、それから、たっちゃんはあっという間に女の子になった。中学生になってから、たっちゃんは女の子の格好をするようになった。髪を伸ばして、制服はスカートを履いた。体育は男女別だから出なくなった。いつも保健室でサボってる。たっちゃんは入学式のときから女の子の格好をしていたけど、彼が男の子だってことは学校のほとんど全員が知っている。こういうことは広まるのが早いものだから。でも、もうみんなたっちゃんには慣れた。からかってくる生徒や嫌なことを言う先生、噂話はまだ消えないけど、案外穏やかに暮らせるもんだ。
 たっちゃんは女の子だから、男の子を好きになる。だからたっちゃんが、女の子のあたしを好きになってくれることはない。たっちゃんがあたしに気になる男の子の話をするあたり、完全に脈なしだ。だけどあたしは、異性として何年も前からたっちゃんが好きだ。今更、諦められない。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

男の娘レイヤー時雨-メス堕ち調教-

BL / 連載中 24h.ポイント:809pt お気に入り:868

【R18】女の子にさせないで。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:68

女子に虐められる僕

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:1,505pt お気に入り:15

【R18】今夜、私は義父に抱かれる

umi
恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,229pt お気に入り:572

処理中です...