75 / 114
アンサンブルコンテスト
みんな嫌い
しおりを挟む
「あれ、どこか見に行くの?」
二人で手を繋いで教室を出ようとすると、鍋倉に声をかけられた。
「うん。小学校のときの友だちの見に行く。クラリネットね。鍋ちゃんも行く?」
「行く。順番、まだまだ先だし」
嬉しそうに答えて、鍋倉は振り返る。その先には、綿矢がいた。
「わーちゃん、森ちゃん達、クラリネット見に行くって。わーちゃんも行かない?」
鍋倉の問いかけに、綿矢は嫌そうな顔をする。
「行かない」
あー、この間の悪口を引きずってる。綿矢のあからさまな態度に、あたしは呆れる。たかが悪口くらいで。べったりするぐらい好きなら、悪口言われてもしがみつけっての。
「そう……」
鍋倉は残念そうに、けれど多少の無関心を含んだ表情で視線を戻した。
「わーちゃん、最近ああなんだ」
廊下を、さっきの第二音楽室へ向かって歩いている途中、鍋倉は口走った。
「前はずっと一緒だったのに。わーちゃん、何考えてるか分かんなくて怖い」
たっちゃんは真剣な顔で、鍋倉の話を聞いている。事情を知っているあたしは、「へえ」とか「ふぅん」とかぐらいしか言えない。
「嫌いだなぁ……」
ぽつりと、鍋倉は言った。その一言に、たっちゃんはピクリと反応する。何か言おうとして口を開いて、すぐに口を閉じる。しばらくそれを繰り返した。
「鍋ちゃんは」
ようやく声を出し、鍋倉を見上げた。
「鍋ちゃんは、みんな嫌いなの?」
ひどく遠慮がちに、たっちゃんは尋ねる。けっこう踏み込んだこと訊いちゃうね。あたしはそう思ったけれど、鍋倉はたっちゃんの質問を過度の干渉にも不躾なことにも思わなかったらしく、さらりと答える。
「みんな嫌いだよ」
二人で手を繋いで教室を出ようとすると、鍋倉に声をかけられた。
「うん。小学校のときの友だちの見に行く。クラリネットね。鍋ちゃんも行く?」
「行く。順番、まだまだ先だし」
嬉しそうに答えて、鍋倉は振り返る。その先には、綿矢がいた。
「わーちゃん、森ちゃん達、クラリネット見に行くって。わーちゃんも行かない?」
鍋倉の問いかけに、綿矢は嫌そうな顔をする。
「行かない」
あー、この間の悪口を引きずってる。綿矢のあからさまな態度に、あたしは呆れる。たかが悪口くらいで。べったりするぐらい好きなら、悪口言われてもしがみつけっての。
「そう……」
鍋倉は残念そうに、けれど多少の無関心を含んだ表情で視線を戻した。
「わーちゃん、最近ああなんだ」
廊下を、さっきの第二音楽室へ向かって歩いている途中、鍋倉は口走った。
「前はずっと一緒だったのに。わーちゃん、何考えてるか分かんなくて怖い」
たっちゃんは真剣な顔で、鍋倉の話を聞いている。事情を知っているあたしは、「へえ」とか「ふぅん」とかぐらいしか言えない。
「嫌いだなぁ……」
ぽつりと、鍋倉は言った。その一言に、たっちゃんはピクリと反応する。何か言おうとして口を開いて、すぐに口を閉じる。しばらくそれを繰り返した。
「鍋ちゃんは」
ようやく声を出し、鍋倉を見上げた。
「鍋ちゃんは、みんな嫌いなの?」
ひどく遠慮がちに、たっちゃんは尋ねる。けっこう踏み込んだこと訊いちゃうね。あたしはそう思ったけれど、鍋倉はたっちゃんの質問を過度の干渉にも不躾なことにも思わなかったらしく、さらりと答える。
「みんな嫌いだよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる