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1564 旅路
あなたの嫌いなところ
しおりを挟む人気のない場所を見つけると、ツィオはモープの手を離す。モープは彼に何か文句を言おうとして、しかし口ごもってしまった。
「アルバが好きって、なんだよ!」
不意に、ツィオが怒鳴る。モープを睨むその目は、責めるような目つきをしている。
「俺、恋人だったろ!」
一瞬、モープは彼が何を言っているかわからなくなる。が、すぐに彼の傲慢な考えに気がつき、胸が悪くなった。
「そ、それが何」
大人しく気が弱い彼女の声は震えている。ぷくぷくした手をぎゅっと握り、勇気を振り絞る。ツィオを睨み返すと、彼は少し動揺した。
「だって、なんでアルバのこと好きになるんだよ」
「私のこと好きじゃなかったのに何言ってるの?」
モープは厳しい口調でツィオに言い返す。
「私が昔、あなたを好きだって言ってたから今もそうだと思ってるの? 少しも好きになれないけど周りに見栄張りたくて付き合ったって、そう言った人のことずっと好きだと思う?」
彼女がゆっくりと、しかし確かな怒りを持って言い、ツィオは気圧されて何も言えなくなる。モープは一度言葉を切り、深く呼吸をした。それから、真っ直ぐにツィオを見て口を開く。
「私はあなたなんてもう好きじゃない。気まずいだけ」
その言葉に、ツィオはひどくショックを受ける。愕然とする彼に追い討ちをかけるようにモープが続ける。
「あなたはプライドばっかり高くて、下だと思った人を思い通りにしたがる。自分のことしか考えてない。そういうところが大嫌い。付き合ってた時からね」
ツィオはあまりのショックに、何一つ言い返せない。どうしようもない人、とモープは口の中でつぶやいた。全くもって時間の無駄だ、仕事に戻ろうと、ツィオに背中を向ける。
「アルバさんのことはただの憧れだよ。勘違いで変なこと吹き込まないでね」
そう言い残し、去っていった。ツィオはその場に立ち尽くす。しばらく呆けていたが、正気に戻ってくると慌てて周りを確認する。見たかぎり、誰の気配もない。ツィオはほっと息を吐いた。既にひどい恥をかかされたが、今の話をアルバに聞かれようものなら羞恥のあまり死んでしまう。
恥ずかしさと、怒りで頭がいっぱいだ。アルバたちの元にはすぐには帰れない。この気持ちを悟られることすら、屈辱だ。
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