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1566 蜜月
嫌いだ
しおりを挟む「私は君のことが好きだよ! 君にも私を好きになってほしい!」
アルバの様子に気が付かず、ラスは無邪気に続ける。
「君のことをもっと知りたいし、私のことももっと知ってほしい。ねえ、話をしよう? アルバは夢がある?」
自分にとって一番大切なことと、アルバの大切なことをともに分かち合いたくて、ラスは尋ねる。アルバは心臓を一気に掴まれたような嫌な気分になった。
「ないよ、そんなもん」
ツィオとまた会いたい、それが夢と呼べるなら。そう考えると絶望的な気分になって、アルバは泣き出しそうになる。ツィオへの悲しみとラスへの怒りで体が小さく震えた。
「私の夢はね、いつか運命の人と結ばれることなんだ」
自分の思いを伝えたことですっかり興奮しているラスは、相変わらずアルバの顔色に気を配れない。彼の腕を離すと、自分の頬の横で両の手のひらを合わせてうっとりと目を閉じる。
「地方の村娘だった母さんは最高神の父さんと大恋愛をしたんだって。そして困難があっても、運命で結ばれた。今もずっと深く愛し合ってる。私もそんな相手と出会いたい!」
その話にアルバの絶望は深まっていく。幸せそうに両親の話をするラスの前に立っていると、自分がひどく惨めで醜く、価値のない存在だと打ちのめされる。アルバの唇が震えた。拳をギュッと握り、今にもこぼれ落ちそうな涙を我慢する。
「お前なんて嫌いだよ」
彼はそんな言葉をラスに投げた。分かち合うことはできない。
アルバのつらそうな声でハッと我に返り、ラスはそこではじめて彼の表情に気がつく。あ……と小さく声を漏らし、どうしていいかわからないといった顔をする。その顔にアルバはどうしようもなくいら立ち、彼に背を向けた。「ついてくるな」と吐き捨て、その場を離れる。
ひたすらに前を向いて、アルバはすたすた歩き続ける。後ろに足音がついてこないことをはっきりとわかってしまうから、振り返るのは怖かった。ラスへの怒りがふつふつ湧いてきて、それと同時にどうしようもないほどの悲しみがからだ中に沁み渡っている。
曲がり角で不意に出てきた男に、アルバは足を止める。見慣れたターバン姿。フランマだ。フランマもアルバもお互いをまっすぐ見てしまい、困った顔になる。それはそうだ、二人はツィオとの一件以来ずっと仲違いしたままなのだから。
アルバはひどく動揺し、何か言おうとしても何も言葉が出てこない。フランマは気まずそうに「あー」と声を漏らし、きびすを返した。彼に背を向けられた時にそらされた視線が、アルバの胸を耐えがたく締め付ける。ツィオのいた頃のように、気さくに自分に向かってきて欲しいのに。自分は愛されない。嫌われている。そんな言葉ばかりが頭の中をぐるぐると巡る。それを振り払いたくて、アルバはまた歩き始める。ラスにはついてくるなと言った。あの言葉がなかったら、追いかけてくれたはずだ。そう自分に言い聞かせ、自分がいなくなって落ち込み、泣いているラスを期待して彼の元へと足を進める。それは自分に重ねた幼い想像だ。ツィオが怒って立ち去ったのなら、アルバはめそめそと泣いて彼を待つことだろう。
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